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映画コラム

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2023年08月18日

『ブギーマン』が“超王道”のホラー映画に仕上がった「3つ」の理由

『ブギーマン』が“超王道”のホラー映画に仕上がった「3つ」の理由



3:子どもは“いる”と聞かされて、大人は“いない”とわかっているはずの存在が……

ブギーマンと聞いて、ホラー映画シリーズ『ハロウィン』の不死身の殺人鬼マイケル・マイヤーズを連想するホラー映画ファンも多いだろうが、今回はそちらとは関係がない。ブギーマンは元々は欧米の民間伝承に登場する怪物であり、「言うことを聞かないとブギーマンがやって来るぞ」などと子どもに聞かせる、大人にとって都合の良い存在であるのだ。

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また、子どもにとって「クローゼットの中に何か(ブギーマン)がいるかもしれない」というのは普遍的な恐怖であるだろう。それでも、ブギーマンが本当にいないと知っている大人にとっては「そんなはずはないさ」と笑って済ませられる。

だが、この映画の中では、ブギーマンは、クローゼットの中に、本当にいるのだ。そのことも「誰か(子ども)が必死に恐怖体験を語っているのに誰も(大人が)信じてくれない」とというやはりホラー映画では超王道の展開につながっているし、「大人にとって都合の良い存在のはずのブギーマンが本当に襲ってくる」というブラックユーモア的な側面にもつながっている。

まとめ:変化球気味なホラー映画を手がけてきた監督が超王道をやり切った

監督であるロブ・サヴェッジは、コロナ禍で“Zoom交霊会”を行う『ズーム/見えない参加者』が2020年に話題になり、さらに迷惑系動画配信者を主人公にした『DASHCAM ダッシュカム』が日本で2023年7月に公開されたばかり。つまりはアイデアが先行した変化球気味のホラー映画を手がけてきたのだが、打って変わって『ブギーマン』では超王道のホラー映画で大成功したというのも感慨深いものがある。

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ちなみに、ロブ・サヴェッジが監督が本作を製作するにあたって参照したのは、1961年の『回転』や1963年の『たたり』などのクラシックから、1987年の『死霊のはらわたII』、さらには1998年の日本のホラー『リング』などだったという。名作たちの魅力をしっかり分析してこそ、超王道のホラーを世に送り出せたとも言えるだろう。

おまけ:日米ホラー映画の“王道対決”!?

余談だが、2023年8月11日より劇場公開されている日本のホラー映画『ミンナのウタ』が、『バービー』を抑えてFilmarksで初日満足度1位に輝くなど高い評価を得ており、あるシーンのとんでもない恐怖がSNSで大いに話題となっている。そのシーンまたは『ミンナのウタ』という映画そのものが、『呪怨』シリーズで知られる清水崇監督の「原点回帰」とも評されているのだ。



こちらもまたやはり(「ひとりまたひとりと襲われる」「恐怖の対象の謎を探る」という)王道のホラーかつ、わかりやすいエンターテインメント性がある。『ミンナのウタ』はGENERATIONS from EXILE TRIBEのメンバーが本人役で出演することにも確かな意味があるし、彼らのことをまったく知らなくても問題なく楽しめるので、こちらも万人向け(人によっては怖すぎる)ホラーとして大いにおすすめしたい。

2023年は子どもが活躍するジュブナイルホラーが豊作!

さらに、この『ブギーマン』に限らず、2023年は子どもが主人公となった“ジュブナイルホラー”が立て続けに公開されている。『テリファー 終わらない惨劇』『M3GAN/ミーガン』『イビルアイ』『イノセンツ』『死霊のはらわた ライジング』と、それぞれが見事な出来栄えなので、ぜひチェックをしてみてほしい。

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さらに、日本で2023年9月6日公開予定の『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』には『カモン カモン』の天才子役ウディ・ノーマンが出演している。こちらはモンスターホラーとしても大いに期待できるだろう。



こうしたジュブナイルホラーは、大人よりもはるかに力が弱い子どもが主人公だからこそのハラハラが倍増しているとも言えるし、時には誰も頼れないよるべなさもまた物語に強く作用していることが多い。大人が子どもの気持ちを考える、良い機会にもなり得るだろう。

(文:ヒナタカ)

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