『禁じられた遊び』の「5つ」の魅力!橋本環奈と重岡大毅の共通点とは?
3:「らしくない」様も含めてハマっている橋本環奈と重岡大毅
本作の目玉は、やはり橋本環奈と重岡大毅のW主演。誤解を恐れずに言えば、この2人が良い意味で「らしくない」「そうは見えない」様も含めて、とても役柄にマッチしていたと思うのだ。何しろ、橋本環奈が演じる映像ディレクターは、劇中では新進気鋭だからこその話題を集めていながらも、その仕事や人生の方向性にも迷っている役柄。橋本環奈は映像ディレクターというにはあまりに若くて可憐に見えるし、重くて大きいカメラを携えている様にどこかギャップを覚えるからこそ、むしろこの「落ち着いていない」役柄にはハマっていたのだ。
重岡大毅も声と見た目が年齢よりも若く見える方なので、良い意味でお父さんという役に慣れていないようにも、少し頼りなく思える場面もある。このことが、息子に迂闊なウソを教えてしまったり、蘇った妻に対してひたすらにうろたえてしまうといった、ちょっと情けなくもある役柄にピッタリ。
そして、朗らかな印象のある重岡大毅が、本気で憔悴しているように見える、いや常軌を逸していくようにも思える様には、恐怖と同時に切なさも覚えたのだ。
さらに、橋本環奈と重岡大毅それぞれの恐怖におののく演技は真に迫っていて見事。それまで迷いや情けなさを見せていたことがギャップになり、いざという時の言動が実にカッコよく思える場面もある。2人の新たな一面と魅力に気づけることは間違いない。
4:影の主役、それはファーストサマーウイカだ!
そして、影の主役と言えるのがファーストサマーウイカ。バラエティ番組で見かけるサバサバしたキャラクターとはまったく真逆の、そこはかとなく嫉妬心を見せる様からは“執拗”と“陰湿”という印象さえ持つ上に、どこにでもいる“普通”の豊かな人間味を感じさせる、とんでもない表現をしていたのだから。さらに、見た目からおどろおどろしい、新たなアイコニックなホラーキャラクターと言える“美雪”を演じるにあたって、スタッフは毎回4~5人掛かりで4時間かけて特殊メイクを施したという。ファーストサマーウイカは撮影現場を楽しんでいた一方、衣服が擦れてメイクが取れてしまわないように最小限の羽織りだけを着ていたり、メイクのやり直しにならないようにトイレをできるだけ我慢したりと、フィジカル面での苦労を語っていた。
その甲斐あって、特に終盤では文字通りに“体当たり”と言える、ファーストサマーウイカの渾身の演技および、2度とは再現できないであろう見せ場を作り出すことに成功している。前述した橋本環奈と重岡大毅が素晴らしいことを前提して、その2人を上回るほどのインパクトにも期待してほしい。
他にも豪華キャストがそれぞれの持ち味を生かしていて、個人的にツボだったのが女性の部下に最悪なアプローチをしてくる上司役の新納慎也。『セフレの品格(プライド) 初恋』の時と同様の役柄というのも面白いし、やはりイヤな役が似合う方だと再認識した。
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5:仕掛けに気づける?それとも驚く?サービス満点のクライマックス!
本作のさらなる魅力は、実はネタバレ厳禁。クライマックスにはとある“仕掛け”があり、その伏線の回収の見事さも含めて感動すら覚えたのだ。このオチに至るまでのヒントはしっかり散りばめられているので、カンの良い人であれば気づけるかもしれないが、筆者は良い意味で気持ちよく「騙された!」と思うことができた。しかも、そのクライマックスの見せ場こそが、やはり派手でサービス精神満点。(人によっては)良い意味で笑ってしまうほどの、もはや痛快ですらある仕掛けを楽しんでほしい。
おまけ:この秋のホラー映画の激突を見逃すな!
最後に、現在上映中のホラー映画が、この『禁じられた遊び』以外も大渋滞しているので、それぞれの魅力も簡潔に示していこう。『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』(9月8日より上映中)
ブラム・ストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』の一編を映画化。船上のモンスターバトル映画としてマジメに作り上げていて面白い。
ホラーに振り切った『タイタニック』とも言えるし、船版『鬼滅の刃 無限列車編』的でもある。コロナ禍の最初期のクルーズ船の出来事を思わせるところもある。
『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』(9月8日より上映中)
白石晃士監督によるカルト的な人気を誇るフェイクドキュメンタリー『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズの8年ぶりの新作ながら、そちらを観ていなくても問題なく楽しめる。
どこかの大ヒットインディーズ映画で観たことがある気がする廃墟+αを舞台に「ええ?こんなことも!?」「あ、あんなことも!?」と驚く楽しい仕掛けが78分にぎゅうぎゅうに詰め込まれている。基本的に攻撃方法は物理。
『スイート・マイホーム』(9月1日より上映中)
同名小説を映画化した、観た後は確実に一軒家を購入したくなくなるホラー。静かに展開するからこそ「何かがおかしい」様がじわじわ来るし、あの窪田正孝の表情が脳にこびりついた。しっかり伏線を張り巡らせた物語の面白さ、映画館で映える演出を打ち出した斎藤工監督に拍手。
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それぞれベクトルが異なるホラー映画が楽しめる、今の映画館はもう「祭り」状態なのだ。秋にさしかかり涼しくなりつつある今こそ、ぜひスクリーンで恐怖をたっぷりと堪能してほしい。
(文:ヒナタカ)
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