インタビュー

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2023年09月09日

<冴羽獠がずっと「いる」>『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』神谷明インタビュー

<冴羽獠がずっと「いる」>『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』神谷明インタビュー

「俺を呼んだのは君だろ?」

2019年2月に公開された『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』。約20年ぶりの新作アニメーションながら観客動員100万人を超える大ヒットを記録し、『シティーハンター』という作品が世代を超えて愛されていることを証明してみせた。

それから4年の月日が流れ、9月8日(金)に最新作『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』が公開を迎えた。原作を知る人なら「エンジェルダスト」のサブタイトルにぴくりと体が反応するかもしれない。物語は主人公である凄腕の始末屋(スナイパー)・冴羽獠を語る上で欠かすことのできない彼の壮絶な過去に踏み込み、これまでのアニメシリーズで描かれることのなかった「海原神」がいよいよ姿を現す。

前作同様、今回もテレビアニメシリーズのオリジナルキャストが集結。冴羽獠役の神谷明、槇村香役の伊倉一恵、海坊主役の玄田哲章らお馴染みの面々に加えて、槇村秀幸役の田中秀幸が復帰したこともトピックのひとつ。また冴羽獠に依頼を持ちこむ動画制作者のアンジー役で沢城みゆき、そしてキーマンとなる海原役で堀内賢雄が新たに名を連ねている。

最終章に位置づけられた本作は、テレビアニメシリーズ、そして劇場版シリーズを通してこれまでにない重大な局面を迎えることになった。そんなターニングポイントとなる作品にどのような思いで向き合ったのか、冴羽獠役を務める神谷明からたっぷりお聞きすることができたのでご紹介しよう。
 

冴羽獠は「振り子」のようなキャラクター


──ついに原作の最重要人物・海原神が登場しました。本作の内容を初めて知ったとき、避けては通れないエピソードが描かれることについてどのような印象を受けましたか?


神谷明(以下・神谷):いよいよ核心に分け入ってくるんだ、という思いはありました。ただ実際にシナリオを読んでみて、背景では確かにその核心部分が流れているけど実際に海原が姿を現すのは後半部分になるんですよね。ストーリーの重要なポイントでありながら、最後は……というかたちで、とても上手なストーリーづくりになっていると思います。

アンジーのバックグラウンドにも実は重要な部分がありつつ、そんなに振りかざしているわけではないじゃないですよね。だから今回『シティーハンター』を初めて観る方にも、海原の出現によって物語の謎が解き明かされていくかたちになっているんです。いわゆる“核心”に入っていくというよりは、それを1本のドラマとして上手に作り上げたお話で、むとうやすゆきさんの脚本がとても良いなと思いました。

──前作も面白かったのですが、本作は振り幅がすごいですよね。前半はテレビシリーズの面白さが帰ってきたような、良い意味でとにかく昭和感に驚いて。それが後半のシリアスな戦いをよりドラマチックにしている印象でした。

神谷:そうですね。だから僕自身ももともと冴羽獠は振り子のようなキャラクターだと思っていて、それを楽しんでいたんです。今回は本当に振り幅が大きくて「大丈夫かな?」っていう思いもあったんですけど、気づかないうちにシリアスな方向へ上手に引きずりこまれていくというか、自然な感じですごいと思いましたね。

前半部分に関しては「よっしゃー! いつもの獠ちゃん!」という感じで演じさせていただきましたが、途中からは自分もその作品の中に取りこまれていくような感じでした。でも言ってみれば、それが『シティーハンター』の世界ですよね。シリアスなほうに向かって、グングングングン加速していった感じです。でも間にちょこちょこっとギャグではないですけどクスっとさせる部分があったりして、それも必要だなと。だから今回は全ての演出が上手いなあと思いながらやらせてもらいました。


──台本を最初に読まれたときにすぐにでも言いたい、アフレコしたいと思えるようなセリフやシーンはありましたか?

神谷:そういうふうには最初見てなかったんですよ。まず全体的なストーリーを見て、それから「獠が喋ってるかな」と確認しながら細かいところを見ていくんです。よく読んでいくと「このメインゲスト大変だぞ、誰がやるんだろう?」とか。あとアクションが非常に克明に文字で描写されていて、「これを絵で表現するのは大変だよなあ」みたいな、そんな方向から見ていました。

実は、僕は前作の「俺を呼んだのは君だろ?」っていうセリフが大好きなんです。今回も言いたかったんだけど、脚本を見たらなかったんですよ。それでちょっとわがままではあるんですけど、プロデューサーに「俺を呼んだのは君だろ?って言いたい」とお願いしたら台本に組みこんでくれて。大変申し訳ないことをしたなとは思うんですが、すごく嬉しかったですね。

──本作の予告編を見たときに「きた!」と思いました。あのセリフかっこいいですもんね。

神谷:それと台本をいただいたときに、表情やセリフの長さ、アクションといったものを入れた参考映像をいただくんです。その中に今回は部分的に音楽まで入っていて、「え?」って驚きまたしたね。普通は絵だけなんですけど、オープニングから曲が流れていてもう引きこまれるような感じで。途中途中に何曲か入って最後に「Get Wild」が流れて、なんだかジーンとしちゃいました。

絵についても普通の劇場用作品だと制作が同時進行なので、本来そんなにたくさん入ってはいないんです。でも今回は3分の2以上きれいな絵が入っていて、正直「うわ、マズい」と思ったんですよ。というのも、絵が入っているとセリフを口の動きに絶対合わせないといけなくなってしまう。ましてや劇場用ですから口が大きいじゃないですか。そういう意味ではすごく気を遣わなきゃいけないんです。でも収録のときに最初にディレクターの方から「口パクのあわせは絵を後で調整します」って言われて。やったー! という感じでした(笑)。

僕たちって「線画」といって動いてはいるけど色のついていない絵を見ながら収録することが多いんです。ただ、口の動きはセリフの音声に合わせて映像にしてくれるっていうのがあるんですよ。同時進行ですからね。それが今回は絵が完成しているものでも演技に合わせて絵を直してくれると言ってもらえたので、大変贅沢だなと思いながら吹き込みさせてもらいました。初めてですね、そんな贅沢をさせていただけたのは。


──とても興味深いです。ところで前作の感想になりますが、キャラクターみんながテレビシリーズとまったく変わらず帰ってきてくれて、感動すると同時にとても驚かされました。約20年ぶりに冴羽獠役に挑まれたわけですが、神谷さんの中にずっと冴羽獠が「いる」のでしょうか。

神谷:もうずっと! うんと若い頃のキャラクターはやっぱり無理はあると思うんです。でも実は自分で演じたキャラクターって、『うる星やつら』とか『めぞん一刻』とか、それ以降の役っていうのはすぐそのキャラになれるくらい自分の中では消化されている役なんです。

やっぱり年齢的なものがあって声の違いが若干出たりテンポがだんだん落ちたりしてきますから、そういう違いは意識していたんです。ただみなさんもそうだと思うんですけど、作品と向き合ったときに、バっと一堂に会してその声を聞くと懐かしくてね。前回の『新宿プライベート・アイズ』のときは演じる側の僕らも同じでじーんとしました。

だからメンバーが顔を合わせたときは、“元気さを喜び合う”という雰囲気がありましたね。それぞれの活躍はそれぞれで見たり聞いたりしていてわかってはいるけど、改めてスタジオで顔を合わせたときはやっぱり嬉しくて。声を聞いてもみんなそれぞれの役のままなんですよ。

実は前作のとき、「やるよ」って言われてから収録まで1年くらい時間があったんです。その間にそれぞれのやり方で、コンディションを整えてきたという話は聞きましたね。僕も前回若干の発音練習と滑舌の練習をやったんですけど、今回も同じくらい時間をかけて家で大きな声で歌ったり、言いにくい言葉を集めてしゃべってみたりっていうのはやっていました。

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(C)北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会

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