「どうする家康」第43話:戦なき世は、まやかしの夢なのか
2023年1月8日放送スタートしたNHK大河ドラマ「どうする家康」。
古沢良太が脚本を手がける本作は、弱小国の主として生まれた徳川家康が乱世を生きる姿を描いた波乱万丈エンターテイメント。大河ドラマ初主演となる松本潤が、従来のイメージとは異なる「ナイーブで頼りないプリンス」の家康に扮する。
本記事では、第43話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「どうする家康」第43話レビュー
あんなに嫌だ嫌だと言っていたのに、家康の人生は戦ばかりだ。乱世に生まれたのだから。
天下分け目の大戦のときがやってきた。
……というが、辿っていくとなくてもよかった戦なのでは、と思ってしまう。寧々(和久井映見)が言うように、豊臣家中の喧嘩であることは間違いない。
さて、形勢は家康(松本潤)のほうが不利だ。本軍3万の兵を任された秀忠(森崎ウィン)は間に合わない。と、すれば今ある兵で戦うしかない。
あとはここまで展開してきた調略がどこまで成果が出てきているかどうかだ。
鍵を握るのは小早川秀秋(嘉島陸)。まあ、石田三成(中村七之助)のことを裏切って家康につくわけなのだが……。大河でも何度も描かれている関ヶ原。気になってくるのはどのようにして裏切るのか、というところだろう。
今回の小早川はギリギリまで、戦を見極めてからの裏切りだった。進軍し、戦場のど真ん中に出た家康。敵はひるみ、味方の士気があがる。こうなると小早川も動かざるを得ない。
家康を「さすが戦巧者」と言い、大谷吉継(忍成修吾)の陣を攻める。ここから三成優勢だった戦が変わる。
裏切り、とは言うけれど、それぞれに家臣がいて民がいるわけで。己の行動が、その者たちにも影響を与えることになる。そう考えると、最善をその場その場で選んでいかなければならない、ということはあるだろう。とは言え、後世にわたって裏切者だと言われてしまう可能性はあるのだけれど。
徳川率いる東軍勝利で終えた関ヶ原。
西軍の武将たちはそれぞれが仕置きを受けた。そして捕縛された石田三成と、家康の対面。
「戦なき世で会いたかった。さすれば無二の友となれたはず」と語り掛ける家康。どうしてこのようになったのか。三成を戦に駆り立てたものとは、と。
しかし、三成は頑なだ。
「私の内にも戦乱を求むる心が確かにあっただけのこと」
それは誰の心にもあること。家康にもある。関ヶ原の戦を引き起こしたのは自分であり、あなただ、と三成。
そして、「乱世を生き延びるあなたこそ戦乱を求むる者」。
戦国時代を生き抜いたのだから、戦が嫌だと言っても、という話なのかもしれない。
「戦なき世などなせぬ。まやかしの夢を語るな」
しかし、天下人はまやかしと思える夢を実現するから天下人なのかもしれない。
戦乱を求めるのは自分のエゴ。多くの人のことを考えるなら……?
信長は天下をとったあとが大変だと言っていた。それは戦いを続けることより、「戦なき世」を保ち続けることの難しさを語っていたのだろう。
それでも、家康が望む、夢のような世は近づいている。
(文:ふくだりょうこ)
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