「下剋上球児」5話:南雲(鈴木亮平)を“ヤミ教師”に嵌らせた成功体験とは
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鈴木亮平主演の日曜劇場「下剋上球児」が2023年10月15日放送スタート。菊地高弘の「下剋上球児」(カンゼン刊)を原案に、新井順子プロデューサーと塚原あゆ子演出のタッグが帰ってくる。弱小高校野球部を舞台に繰り広げられる下剋上ストーリーに期待だ。
本記事では、第5話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「下剋上球児」5話レビュー
「本物の教師だったら、どんなによかったか」わざわざ大学に入り直したにも関わらず、単位が足りずに卒業できないことがわかり、身分を偽って“ヤミ教師”となった南雲(鈴木亮平)。美香(井川遥)が勢いに任せて言っていたように、卒業ができないとわかった時点で、家族に相談すべきことだった。
生活していくために、家族を養っていくために、無免許であることを承知の上で教師を名乗った……。早々に罪の意識に耐えられなくなった南雲は、赴任した直後に教師を辞めることを考える。しかし、ある“成功体験”が彼の足を引き留めた。
越山高校の“ざん”は、残念の“ざん”。赴任早々、生徒指導係となった南雲は、とある女性生徒と出会う。いわゆるパパ活と称して、年配の男性とご飯を食べたり、カラオケに行ったりしている彼女。南雲はたびたび現場に突撃し、危ない行為をやめるよう働きかけていた。しかし、女子生徒の言動が改まることはない。
しかし、とある日、彼女は突然変わった。パパ活をやめ、スーパーのアルバイトを始めた。アルバイト先でもらったというお菓子を南雲に渡しながら「今までありがとう、なぐちゃん」と言う。
大袈裟かもしれないが、奇跡だと思った……と当時のことを述懐する南雲。生徒には、可能性がある。誠心誠意、生徒一人ひとりと接すれば、変わってくれることがある。南雲にとって、そんな成功体験が、どんどん“教師”を辞めにくくさせていった。
南雲がやったことは犯罪であり、彼のどんな過去や背景が描かれようと、擁護できる類のものではない。南雲自身、家庭環境に恵まれずに育ち、丁寧に世話をしてくれた教師の思い出が拭えなかった。だからこそ、自分もそんな大人になりたいと思っての行動だったのだろう。
それでも、許されない。南雲の謹慎処分は続き、起訴となるか、それとも不起訴となるかを待つ身だ。
球児たちの時間は過ぎていく。
南雲が無免許の教師だったことは知れ渡り、まさに疑心暗鬼が広がっている状態だ。新しい監督(町田啓太)が赴任してきたが、生徒のことを思いやっているとは思えない。結果、誰ひとり新入部員をスカウトしてこられず、早々にいなくなってしまった。
長い通学時間がネックとなり、電車のなかで寝入って車庫に閉じ込められてしまった根室(兵頭功海)の事件がきっかけとなり、越山高校の球児たちは南雲の自宅へ出入りするようになる。さながら合宿所のようで、時間が“あの頃”に戻ったようにも感じられるが……。球児たちと南雲の間に生まれた溝は深い。
南雲の処分が決まるか否かの瀬戸際で、どうやら山住(黒木華)にも不穏な過去があることが匂わせられた第5話。教師の、そして球児たちの“下剋上”は、まだ始まったばかりなのかもしれない。
(文:北村有)
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