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2023年11月26日

「下剋上球児」7話:思春期の悩みは、小さいけれど大きい。甲子園優勝を掲げた高い山

「下剋上球児」7話:思春期の悩みは、小さいけれど大きい。甲子園優勝を掲げた高い山



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鈴木亮平主演の日曜劇場「下剋上球児」が2023年10月15日放送スタート。菊地高弘の「下剋上球児」(カンゼン刊)を原案に、新井順子プロデューサーと塚原あゆ子演出のタッグが帰ってくる。弱小高校野球部を舞台に繰り広げられる下剋上ストーリーに期待だ。

本記事では、第7話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「下剋上球児」7話レビュー

思春期の悩みは、世間や第三者からみれば小さくとも、本人にとっては世界が終わるくらいの大きさを持つ。試合でエラーをし、負けてしまったことで、楡伸次郎(生田俊平)は気を病んだ。野球部の練習からも足が遠のき、退学を視野に入れるほど思い詰める

しかし、楡の抱える問題は、別のところにあった。成績が落ちていて、このままでは進級が危ういと釘を刺されたこと。さらには視力の低下によって、まともにボールが見えない。野球をする者にとって致命的だが、根室(兵頭功海)のようにメガネかコンタクトにすれば解決する。

しかし楡は「(メガネをかけるのは)メガネくんと言われるからイヤだ」「(コンタクトをつけるのは)こわい」と譲らない。越山高校野球部の監督に復帰した南雲(鈴木亮平)に付き添ってもらい、コンタクトを入れる練習をする楡。自分の人生を根底から揺るがす悩みは、コンタクトひとつで解決した


「下剋上」に向け、越山高校が本腰を入れ始める。

無免許で高校教師を名乗っていた南雲に対して、まだ態度を決めきれない面があるのも否めない。元から彼を信頼している球児たちは、「資格をたくさんとった」と話す南雲に対し「偽装やないですよね?」とネタに昇華しているが、視聴者全員がついていけているかは別問題だ。

しかし、生徒や地域住民への影響を苦慮する丹羽校長(小泉孝太郎)に向けて、横田(生瀬勝久)が言った言葉も本当だ。

「あんたらはいっぺんも失敗したことないっていうんですか?」

「みっともない背中です。それ蹴っ飛ばして、何が教育者や」

一生降ろせない荷物を背負いながら、南雲は球児たちを甲子園へ連れていく。周囲の信頼を回復させるためにも、さらに強くなって甲子園優勝を目指す。南雲の監督復帰をもって、ようやく下剋上の準備が整ったのかもしれない。


目標だった「夏に一勝」さえ奇跡的に思える球児たちにとって、甲子園優勝は、高すぎる目標だ。

でも確実に、彼らは成長している。強くなっている。グラウンドに一礼を欠かさないような、直接は接していない新一年生の名前を一人残らず覚えてくるような、彼らがどれだけ成長したかを具体的な言葉で伝えてくれるような、南雲の誠実な姿勢が球児に自信を与える。

現状の課題点をしっかり意識させ、かつ、自分がどれだけ高い山を登り、どんな頂点を目指しているかを示してくれる教師。南雲は、確かに“ニセ”の教師だった。笑い話にはできない罪だ。

それでも、こんな自分に何ができるかを知ることは、勇気になる。甲子園を目指すには、それだけで十分なのだと思える。

彼らは全員で勝ちに行く。自分たちにできることを、ときにはそれ以上のことをして、てっぺんを目指す。もう誰も、「越山の“ざん”は残念の“ざん”」なんて言わない。

(文:北村有)

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