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<祝・映画初主演!>「ホラー映画の帝王」ダリオ・アルジェント監督作おすすめ“5選”

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独自の作家性を貫くギャスパー・ノエ監督の最新作『VORTEX ヴォルテックス』が12月8日(金)に公開を迎えた。認知症の妻と心臓病の夫をスプリットスクリーン(分割画面)で同時に映し出す異色作であり、これまで暴力や性を徹底的に描いてきた監督にとって新境地を開拓した作品ともいえる。

一方で往年の映画ファンの中には、主演俳優の名前を見て驚かれた人も多いだろう。

ダリオ・アルジェント。数々の伝説的作品を生み出してきた、言わずと知れた「ホラー映画の帝王」だ。筆者も学生時代からファンだったが、まさか“あの”ダリオ・アルジェント監督が齢80を過ぎて映画初主演を飾るとは……。

というわけで今回は「祝・映画初主演!」。ホラー映画の帝王ダリオ・アルジェントの監督作から、おすすめの5タイトルをご紹介したい。

『サスペリア』

■一度観たら二度と忘れられない悪夢

©️1977 SEDA SPETTACOLI S.P.A ©2004 CDE / VIDEA

ホラー映画の知識がなくても、『サスペリア』というホラー映画史に燦然と輝くタイトルはどこかで見聞きしたことがあるだろう。

ダリオ・アルジェントの名を世界に広めた1977年製作の本作はいまなお話題に上がることが多く、2019年1月にはルカ・グァダニーノ監督によるリメイク作品が日本で公開された。

舞台はドイツにある名門バレエ学校。アメリカからやってきた主人公・スージー(ジェシカ・ハーパー)はレッスンに汗を流しながらも、やがて学校内に潜む“何者か”の息遣いに気づく。さらに不可解な出来事が相次ぎ、周囲で凄惨な事件が続発する。

©️1977 SEDA SPETTACOLI S.P.A ©2004 CDE / VIDEA

幾度となく語り続けられる名作だけにもはや説明不要だが、本作は常識を軽々と超越するアルジェントのホラー美学が随所で炸裂している。

プログレバンド・ゴブリンのBGMを背景に極彩色のライティングや鮮血が流れるスラッシャー描写、そして“何者か”の正体などインパクト抜群。作品自体が悪夢のようで、一度鑑賞すれば二度と脳裏から離れることはない

 (C)1974 MEDIASET

なお本作のヒットを受け、日本で1978年に『サスペリアPART2』が公開されている。とはいえ本国イタリアで1975年に製作された作品であり、後年の『サスペリア』とはもちろん関連は一切ナシ。ただこちらもアルジェント節がしっかり効いているのでご注目を。

▶︎『サスペリア』を観る

▶︎『サスペリアPART2』を観る

『フェノミナ』インテグラルハード完全版

■見るもおぞましい“蛆虫風呂”でおなじみ

(C)1984 TITANUS 

数あるアルジェント作品の中でも、『サスペリア』と並ぶアルジェントの代表作として挙げられることが多い『フェノミナ』。日本では本国と同じ1985年に公開されており、10代にして主演を務めた美少女ジェニファー・コネリーが日本での知名度を一気に上げるきっかけにもなった。

本作は冒頭からスイスの美しい山並みが映し出されるが、見惚れる間もなく観光客の少女が首を切断されるというショッキングな展開に。コネリーが演じるのは連続殺人事件が発生している街に引っ越してきた少女・ジェニファーで、昆虫と交信できるという不思議な能力を持つ。彼女は連続殺人事件に捜査協力する昆虫学者・マクレガーと親しくなるが、彼女も事件の渦中に巻き込まれてしまう。


『サスペリア』に比べて極端な絵作りは抑えられているものの(それでも結構ハード)、それでも本作が語り継がれるにはれっきとした理由がある。事件の猟奇性・不可解性はもちろん、意外な犯人とその動機などサスペンスホラーとしての魅力は十分すぎるほど。

さらにホラー史に残る名(?)場面となったジェニファーが蛆虫風呂に突き落とされるクライマックスなど、“アルジェントらしさ”は恐ろしいまでに全開となっている。

【関連記事】虫・グロ注意!?それでも観たい『フェノミナ』ジェニファー・コネリーの魅力

▶︎『フェノミナ』インテグラルハード完全版を観る

『シャドー』

■これぞ大・どん・でん・返し!


『サスペリア』や『フェノミナ』など毒々しい映像表現からそれがアルジェントの売りだと思いがちだが、それ以上にアルジェントはサスペンスミステリーの名手であることを忘れてはならない。

監督初期作の『わたしは目撃者』や『4匹の蝿』、そして『サスペリア』や「魔女三部作」の2作目『インフェルノ』を経て製作された『シャドー』もサスペンス性を重視した作品だ。

本作の主人公は仕事でローマを訪れた売れっ子ミステリ作家のピーター・ニール。彼の来訪に合わせたかのように近辺で連続殺人事件が発生し、自身の小説が見立て殺人に利用されていること、さらにパリにいるはずのない人物を目撃して困惑する。ニールは事件の真相を追う中で、自身と接点を持つ人間が犯行に及んでいるのではないかと疑う……。

ジャッロ映画に回帰した作品でありどんでん返しも楽しめるが、正直なところ「そうはならんやろ」「なっとるやろがい」な場面も多い。ただアルジェント作品ではよくあること(?)であり、建物を這うようなワンカットショットや殺人シーンの美学などアルジェントこだわりの演出術も冴え渡る。

これは余談だが、ミステリ小説が好きな筆者は真相編の畳みかける衝撃がツボすぎて「アルジェントのベスト作品」にはいつも本作を挙げている。

▶︎『シャドー』を観る

『サスペリア・テルザ 最後の魔女』

■「魔女三部作」完結編にしてゴア度増し増し

(C) COPYRIGHT MEDUSA FILM S.p.A. 2007

『サスペリア』『インフェルノ』に続く「魔女三部作」の完結編にあたる本作。前々作・前作の製作年が1977年・1980年であるのに対して2007年と比較的新しく、劇中には携帯電話も登場するので約30年の時の流れを感じさせる。

なんの関係もなかった『サスペリアPART2』とは違って『サスペリア』としっかり連動しており、キーワードの「魔女」を紐解く上でも重要な作品だ。

物語はローマのとある工事現場から、古い棺と遺品が収められた入れ物が発掘されるところから始まる。アメリカから来ていた古代美術研究生のサラ(演じるのはアルジェントとダリア・ニコロディの実娘アーシア・アルジェント)が分析を試みようとした矢先に「涙の母」と呼ばれる魔女が復活し、その呪いがローマ全土へと広がってしまう。

『サスペリア』は寄宿学校を舞台にしているが、本作はローマという土地そのものへとストーリーが拡大。魔女の影響によりあちこちで殺人が起きるため犠牲者数も半端なく、序盤から目を覆いたくなるようなゴア描写も展開する。

根底にあるオカルト色は共通しているもののアート性は排しており、子殺しも平気で描くなど本作は魔女による惨劇の絶望感を徹底して押し出した印象が強い。

▶︎『サスペリア・テルザ 最後の魔女』を観る

『ダークグラス』

■アルジェントは止まらない

Copyright 2021 © URANIA PICTURES S.R.L. e GETAWAY FILMS S.A.S.  

70年代・80年代のジャッロ映画ブームを支えたアルジェントが、まさかいまになって改めて原点回帰するとは。2023年4月に日本で公開された『ダークグラス』は、そんな驚きとも喜びとも呼べる感情を呼び起こしてくれた。

しかも『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』から10年ぶりの新作として、80歳を過ぎてこの映画を撮ってしまうバイタリティよ……。

娼婦ばかりを狙った猟奇連続殺人事件の渦中にあるローマ。主人公のコールガール・ディアナも殺人鬼のターゲットになり、車を衝突させられる大事故の末に両目の視力を失ってしまう。盲目になった彼女はその事故で両親を亡くした少年と生活を共にするようになるが、常軌を逸した殺人鬼はなおも執拗にディアナをつけ狙う。

Copyright 2021 © URANIA PICTURES S.R.L. e GETAWAY FILMS S.A.S.  

相変わらずバンバン人が死んでいく出血多量な作品であり、フーダニットというよりは雰囲気そのものを楽しむ映画でもある。つまり往年のアルジェント好きにとっては、長きにわたって彼を愛してきたことへの「ご褒美」のようなもの。

アルノー・ルボチーニによる激アツな音楽もゴブリンの流れを汲んでおり、もはやジャッロというより「ダリオ・アルジェント」というひとつのジャンルにさえ思える。

▶︎『ダークグラス』を観る

まとめ

『VORTEX ヴォルテックス』© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS – GOODFELLAS – LES CINEMAS DE LA ZONE - KNM – ARTEMIS PRODUCTIONS – SRAB FILMS – LES FILMS VELVET – KALLOUCHE CINEMA

アルジェント作品は音楽の個性も強く、ゴブリンだけでなく初期作品でタッグを組んだエンニオ・モリコーネとのコラボも必見。またローマの街並みや建物を時にクラシカルに、時に毒々しく映し出す演出術・美術など画面の隅々まで目を離せない。

現代ホラーの礎ともいえるアルジェント監督には、これからも変わらず登場人物と観客を地獄に突き落とすような作品を生み続けてほしい。

(文:葦見川和哉)

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