「ブギウギ」小夜ちゃんのお手柄、ついに泥棒を発見<第67回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第67回を紐解いていく。
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戦争が終わった
朝ドラ辞典2.0 【玉音放送(ぎょくおんほうそう)】戦時中が舞台になる朝ドラでは必ず出てくる場面。1945年8月15日、日本が戦争に負けたことを天皇陛下がラジオで報告する声を主人公や周囲の人たちがどう聞くかで、ドラマのまなざしが感じられる。泣く人、泣かない人、様々で。例えば「カーネーション」(11年度後期/脚本:渡辺あや)では、ヒロイン糸子(尾野真千子)が放送を聞いたあと「お昼にしようけ」と台所に立つ。その淡々となにげない言動が逆に印象的だった。「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」の部分がよく使用されるが、「カムカムエヴリバディ」(21年度後期/脚本:藤本有紀)では違う部分を使用している。「ブギウギ」では小夜(富田望生)が、言ってることがよくわからないという反応をする。当時、ラジオの音声がよく聞こえなかったことは事実のようだ。
戦争が終わった。スズ子(趣里)は呆然としながら、心は東京に残した愛助(水上恒司)のことでいっぱい。予定していた慰問公演も中止になり、富山を発ちます。
スズ子「ほなら帰ろう」
一井「そうだな家に帰ろう」
一井(陰山泰)の「家に帰ろう」が染みました。”家”は日常の象徴であり、戦争という非日常からふだんの生活に戻るという意味に聞こえて、ホッとしました。
帰りの列車は混んでいて、盗みを働こうとする人も混じっています。スズ子の荷物に手を出した人物を小夜が見咎めます。愛助のときは完全な勘違いでしたが、小夜のように常に疑いの心を持って生きていることが役に立つこともあるのです。小夜はおそらく、奉公先でとてもつらい目にあっていて、他人に心をゆるさない性分になっていたのだろうと思う場面でした。
三鷹に帰ると、愛助も坂口(黒田有)も無事でした。ただ、食べるものがなく、愛助は畑をはじめます。野球をやっていた水上恒司さんは骨格も筋肉もしっかりしていて、畑仕事の動作が難なくたくましく見えます。病弱な文系青年には見えないですが、実実な人柄が透けて見える感じは役に合っています。
畑をはじめても収穫までは時間がかかります。それまで、じゃがいもができたらどう調理するか、ほかにはどんなものを植えたいか、想像して、ひとときやり過ごす、スズ子、愛助、小夜。楽しいことを想像することは大事です。
その頃、上海では、日本が負けたので、日本人の立場が危うくなっていました。さすがの羽鳥(草彅剛)もメンタルがやられ、どんなにお酒を飲んでも酔えなくなっていますが、黎錦光(浩歌)はおめでとう、と微笑みます。音楽を通して国境はないことを示そうとした人たちですが、ことは簡単ではありません。羽鳥のもとに、拳銃を構えた中国人がやって来て……。どうなる羽鳥。
緊張感のある第15週「ワテらはもう自由や」のはじまりでしたが、一箇所気になることがありました。二村(えなりかずき)がいなかった。玉音放送のときと、「帰ろう」と決めるときにいないことはあまり気にならなかったのですが、藤子屋を出発するとき、背中を向けている二村らしき人物がいることが逆に気になってしまい……。二村はいる体(てい)でもえなりかずきさんはいないのだなあと。
背を向けて泣いてるふうだった二村。彼は誰よりも敗戦がショックだったのでしょうか。
(文:木俣冬)
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