「ブギウギ」スズ子、出産、その頃、愛助は……<第85回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第85回を紐解いていく。
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丹前を抱きながら
愛助(水上恒司)がスズ子(趣里)へのハガキに、だいぶようなってきたとか、病院の食事が美味しい、お腹の子供の名前を考えるのは楽しみ。予定日には絶対に帰る、などと書いてきたのは、予定日が近づいてきているから、スズ子を安心させようという気遣いでしょうか。でも、実際の愛助は、病院で用意された食事にも手がつけられなくなっていました。
スズ子も彼が無理しているのは気づいているようですが、ここまで悪化しているとは思っていなかったことでしょう。
愛助が手紙を読む声の穏やかさ明るさと、実際の表情のギャップがすごい。
病院で寝ているばかりで、治療しているのかしてないのか、手がつけられないほど悪くなってしまったのか、状況がよくわかりませんが、トミ(小雪)は「絶対に死なさへん」「大阪中の医者を集めてでも治したる」と最後まで希望を捨てません。
でも、八方手を尽くしていたようにも見えず。この病院に入院した時点で、かなり悪かったのでしょう。とにかく悲しい。
「あんた病気治したら、お母ちゃんなんでも言うこと訊いたるわ」
いやいや、トミさん。もう、いますぐ、結婚を許してあげればいいではないですか。
なんで、ここだけ、頑ななのか。
史実の、結婚を認めてもらえなかったというところを守ると、トミが、病気が治らないのをわかったうえで、結婚を認めてないみたいに見えてしまいますよね。トミとしては、希望をもたせるために、治ったら結婚、と言っているのでしょうけれど。結婚許可されて安心して、急に気力が失くなったらいけないと思ってのことなのでしょう。でも……。
そして、電話があるにもかかわらず、1回も電話はしない謎。
これもまた、電話したら、弱々しい声を聞かれてしまうという、愛助の意地なのかもしれません。
史実はどうかわかりませんが、ドラマの愛助は、弱さを見せない、強がりなところがあります。スズ子への思いやりでもあるでしょうし、それが愛助の生き方なのだと感じます。
しとしとと雨が降ってきて、愛助が危篤となり、山下(近藤芳正)と坂口(黒田有)がそれを知らせるべきかどうか迷いながら、スズ子の家に来ると――。スズ子の陣痛がはじまっていて、大慌てで病院へ――。
丹前を抱きしめながら出産するスズ子。その頃、愛助は、最期の力を振り絞って手紙を書いています。
このときの、愛助の真剣な眼差しが、これより死に赴く特攻隊の覚悟の顔のように強く、美しい。
無事、女の子が生まれて、山下と坂口が大喜び。さっそく坂口が大阪に電話をかけます。このときの、
山下、坂口、電話を受けた矢崎(三浦誠己)の表情が喜びと悲しみを深く物語っていました。
とくに、坂口。冗談を言ったあとの、愕然とした表情の差異が名演技。
表情といえば、なんといっても、赤ちゃん。スズ子とみつめあう、あどけない表情に悲しみを一瞬、忘れました。
(文:木俣冬)
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