「ブギウギ」下宿夫妻がいまだに行方不明情報にショック<第89回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第89回を紐解いていく。
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梅吉が来た
思わせぶりに足元が映って、梅吉(柳葉敏郎)が香川から三鷹にやって来ました。お父ちゃん、テンション高くて、場がぱーっっと明るくなります。羽鳥(草彅剛)もそうで、柳葉さんと草彅さんが「ブギウギ」を明るくしてくれてるなあと感じます。
新聞の集金と偽って玄関を開けたら、ホンモノの新聞の集金がいたという間の悪さ。第87回の「プロポーズかと思った」などもそうで、「ブギウギ」は、あえて滑った笑いを描いている気がします。そこが新鮮だし個性的。たしかに世の中、そんなにうまいことおもしろいことの言える人は多くはないです。うまく言えたらプロになっているでしょう。
「生きとったか 知っとたけどな」と、離れていた間もスズ子(趣里)と梅吉が連絡をとりあっていたことをさらっと一言で済まします。
本日、各所で出ているネットニュースに、手紙のやりとりはしていた裏設定があると出ていると思います。筆者もそういう記事を書きました。そう、梅吉とスズ子は手紙のやりとりをしていたようです。
梅吉の口から、おでん屋台の伝蔵(坂田聡)、下宿の小村夫妻(ふせえり、隈本晃俊)はどうしているのか、という疑問が出ました。いままで誰も口にしなかったことを梅吉が言う。一瞬、ホッとしましたが、皆さん、行方知らずのようで、ショック。伝蔵は屋台を閉めてそのあとわからないというニュアンスではありましたが。
行方知らずだからこそ、誰も口にしなかった。そして距離のある梅吉だから言えたという設定でしょうか。このように微妙に繊細な気遣いがたまに見え隠れするのですが、そうかと思うとベタなところも多く。ベタな表現と繊細な表現のバランスは少し気になるところではあります。でもそれも個性。
トミ(小雪)、麻里(市川実和子)、梅吉と順々に来て、手助けや励ましをスズ子にもたらす週。これはすこし寓話的にも見えます。
久しぶりに、食卓を囲む父と娘。一生くいっぱぐれないように、とお食い初めの儀式を愛子にする梅吉。のんきに何もしないでいたようだった梅吉も、こういう伝統を知っていて、スズ子に伝えるのです。さらに「子育てはもっと優雅にのんびり」と助言も。
「孫より我が子のほうがどんだけかわいいか」と、スズ子を気にする梅吉の率直さと、いまだにツヤの不在を抱え立ち直れていない梅吉とスズ子は、愛する者に先立たれた者同士として、唯一、スズ子の喪失を受け止められる存在になります。でも、ここでも、それをことさら強調しないで
梅吉「かわいそうやなわし」
スズ子「自分かいな」
と茶化す。そこが良さです。
梅吉はついに、写真館をやって繁盛させて、お小遣い(祝儀)も娘にわたすことができました。
スズ子「ありたがく」
梅吉「もらうんかーい」
のタイミングもばっちり。
そして、別れの花吹雪。
いかにも商業演劇の花道コーナーのように大きく盛り上げることなく脱力の効果音でさらっと終わるのも良かったです。
こうして、スズ子復活の下地が着々と作られます。
羽鳥は、スズ子の頼まれた新曲をひねり出しながら、これまでのことを思い出して……。
場面変わって、なぜか急に列車の中。
通勤に疲れた人たちの姿と、列車のリズムから、何か閃く!
下車して喫茶店に飛び込み、紙ナプキンに譜を書き出し、スズ子の家に駆け込んできて……。
この状況を整理すると、作曲に悩み、スズ子の家に行こうとして三鷹行きの列車に乗っていたということでしょうか。羽鳥のモデル服部良一さんの自伝を読むと、ほかのお仕事の帰り、電車のなかで、閃き、途中下車して、喫茶店でナフキンをもらって書き留めたとありました。ドラマも別日なのかもしれません。
生まれた曲は
「福来くんの復興ソングであると同時に日本の復興ソングでもあるんだ」という「東京ブギウギ」、早く聞きたい。
(羽鳥)
「これ(作詞)は藤村じゃないよね」の藤村は、「センチメンタルダイナー」の作詞をした、宮本亞門さんが演じていた人。彼もいま何をしているのか。何をしているかといえば、梅丸楽劇団の制作部長の辛島(安井順平)はどうしているのか。頑なに語られない人はあとから出てくる法則と考えたら、いつか出てくる?
(文:木俣冬)
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