「ブギウギ」復興ソング「東京ブギウギ」作詞の鈴木ちゃんって誰だ<第90回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第90回を紐解いていく。
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米兵さんもノリノリ
列車のなかで閃いて、喫茶店で紙ナプキンに書き込んで、完成した「東京ブギウギ」。コロンコロンレコードの佐原(夙川アトム)もこれは売れるとやる気になり、どうやって売り出すか考えます。まずはレコードか。と、山下(近藤芳正)がレコーディングのとき、本場の米兵に聞かせたらどうかと提案し、あれよあれよという間に、そういう流れに。
前例のないことをやってみるという企画にワクワクして小躍りする、羽鳥(草彅剛)と山下のノリがいい。坂口(黒田有)とふたりのときも軽妙だったし、近藤芳正さんがノリを引き出しているんじゃないかと感じます。その場が躍動、活性化することが大事なのです。
羽鳥が作詞を依頼したのは、「センチメンタル・ダイナ」の藤村(宮本亞門)ではなく、丸い眼鏡の鈴木ちゃんという人物で、羽鳥は「鈴木ちゃん」「鈴木ちゃん」と気安く呼びますが、スズ子(趣里)はピンと来てない様子。でも会ったことがあると羽鳥は言います。
いろんな人の安否は語らないけれど、出てこない「鈴木ちゃん」についてはこんなふうに
情報をセリフにぶっ込んでくる自由さ。これぞブギウギなんでしょうか(ウソ)。
鈴木ちゃんという人のモデルは、鈴木勝という人物で、ジャーナリスト。仏教哲学者・鈴木大拙の息子でした。結果的には、羽鳥のモデル・服部良一と共作になったようですが(服部良一の自叙伝より)。
そこで生まれたのは「ズキズキワクワク」という謎のワード。ウキウキワクワクではなく「ズキズキワクワク」。「ズキズキ」のインパクトが強烈であります。
そして、米兵さんに歌を聞かせる日。ガタイがデカくて無愛想な米兵さんが集まってきます。スズ子は空元気を出しながら、歌うと、米兵さんはノリノリ。
スズ子「兵隊さんも楽しんで!」
しーん
スズ子「笑てえや」
の間合いが面白かった。
米兵の反応に、これは絶対にイケると確信した佐原は、コンサートと同時にレコード発売を決めました。
その日を楽しみにしながら、有楽町の街を歩くスズ子と山下。ガード下は、復興の最中で、まだ少し、荒みながら、人々はなんとか生きようとしています。
いまは終戦から2年め。
復興描写はもっと前から描いていてもよかったのではないかと思ったので、ヤフーニュースエキスパートで、制作統括の福岡利武さんに取材したところ、スズ子の住んでいる三鷹では空襲がなかったので焼け跡が描けなかったとのことでした。
正直、唐突に出てきたなあとは思いましたが、「東京ブギウギ」を中心に描くことを選択したのでしょう。
スズ子の前に靴磨きの少年・達彦(蒼昴)が現れました。「おばさんお金持っているでしょう。いい靴履いてるもん」と話しかけます。「あさイチ」では博多大吉さんが少年のかわいさに注目していました。
この少年のように、街には貧しい人たちが溢れていますが、スズ子たちはとても恵まれているほうなのです。スズ子は愛する人を失ってしまったけれど、経済的にはかなり恵まれている。日本には、もっとたくさんのものを失った人たちがそこらじゅうに存在しているのです。
朝ドラではたいてい、主人公が戦争で経済的にも困窮することが多いのですが(「おしん」は夫が軍需景気で潤っていましたが)、そうではない側を今回は描いているようです。
戦後、芸能界の人たちは、存外、恵まれていたということでしょう。たしかに、いまだって芸能人は超富裕層です。だからこそ、貧しい庶民をひととき慰める歌を作る義務がある。
「生きる希望になるんやから」と愛助(水上恒司)も言っていました。
さあ、スズ子、ズキズキワクワクさせてくれ。
(文:木俣冬)
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