続・朝ドライフ

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2024年02月20日

「ブギウギ」スズ子とりつ子の対立を煽る、週刊誌記者鮫島にイライラする<98回>

「ブギウギ」スズ子とりつ子の対立を煽る、週刊誌記者鮫島にイライラする<98回>


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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。

「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第98回を紐解いていく。

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りつ子までが鮫島に

「苦労も努力も関係ない。つまらんものを見せたら最後、そっぽをむかれてしまいだよ」
(タナケン)

スズ子(趣里)の仕事中、愛子(小野美音)がケガをしました。
幸い大事に至りませんでしたが、撮影を止めてしまい、タナケン(生瀬勝久)はスズ子に、彼女が子育てに忙しいという事情など、観客には関係ないのだと厳しく助言します。

その言葉が響いたのかどうか、結局、スズ子は愛子に振り回されっぱなし。
それを見たタナケンの表情は険しかったように感じます。

育児も仕事も大事で、両立したいという気持ちは尊重すべきです。が、芸の道はまたちょっと違っていて、一般的な、仕事も結婚も子育てもすべてやりたいという願望が満たされるものではないのです。なかには、満たされるような仕事の仕方を選択する人もいます。でも、結婚も子育ても、なんなら介護も捨てないとやれない仕事もあるのです。

厳しいタナケンが、私生活を捨てて芸一本なのかはわかりませんが、芸一本の人がいます。
茨田りつ子(菊地凛子)です。未婚で出産し、その子供を実家に預け、ひたすら仕事をしています。歌以外で声を使いたくないように気をつけていて、自伝執筆の仕事が来ても、歌を優先しています。

一方、スズ子は、仕事と子育てを両立していることで、街娼たちからも共感と支持を得ていて、ここまではうまくいっていました。

仕事も私生活も諦めないスズ子と、私生活を捨てているりつ子。この対比に目をつけたのが、「真相婦人」記者の鮫島(みのすけ)。りつ子を挑発し、スズ子への宣戦布告のような記事を書きます。

ブギはもう終わり、つまり、ブギに頼っている福来スズ子はもう終わり――今の言葉で言うと「オワコン」とりつ子が言ってるかのような大げさな文言です。でもスズ子は経験者ですから、鮫島があることないこと書いたに違いないと最初は思いますが、鮫島は口八丁手八丁。まんまと乗せられて、りつ子と対談することに……。

「あれ」と我に返るスズ子で「つづく」になる流れは、愉快な連続ドラマ『スズ子さん』といった雰囲気。15分の短期間にほのぼの笑えるライトなドラマを狙った作品は過去にも「とと姉ちゃん」や「まんぷく」「エール」などがあります。

著名な実在する人物をモデルにして、その人が歴史にも残っている偉業を成し遂げる大きな流れのなかにちょいちょいライトなコメディを挿入し、主人公をキャラとして定着させる構成です。

「まんぷく」は安藤サクラと長谷川博己の芝居と、月9や大河も手掛けた福田靖の脚本で、福子と萬平をキャラ化もできたうえに、テーマもきちっと書け、楽しくまとまりましたが、「とと姉ちゃん」は、軽すぎると、丁寧で上品な生き方を好む「暮らしの手帖」ファンに物足りなさを感じさせ、「エール」は本編の途中にスピンオフが入るなどして、古関裕而の歌のドラマをもっと見たい層を戸惑わせました。

「ブギウギ」もスズ子を”スズ子さん”にしたかったのだと感じます。が、実在する人物を漫画やアニメのようなキャラ化するのは簡単そうで難しい。その人の真面目な面が世の中に浸透しているからです。

おそらく、鮫島は、キャラドラマなら、「ゲゲゲの鬼太郎」でいったら、ねずみ男的な存在でしょう。いつでも鬼太郎の邪魔をするズルいやつですが、なぜか憎めないキャラに鮫島もなり得るはずなのですが……。

オリジナルのキャラを作るのは難しいので、著名人をお借りしてキャラ化して、ライトなドラマを作ることはトライだとは思うし、実際「まんぷく」は成功したのですから、幅広い人に愛されるドラマをこれからも試行錯誤しながら作り続けてほしいものです。


(文:木俣冬)

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