続・朝ドライフ

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2024年04月04日

「虎に翼」穂高(小林薫)と寅子の父母が知り合いだった偶然<第4回>

「虎に翼」穂高(小林薫)と寅子の父母が知り合いだった偶然<第4回>


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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。

日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第4回を紐解いていく。

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披露宴で嫌そうに歌う寅子

ほしいものを得るためには「したたかに」と、花江(森田望智)に助言された寅子(伊藤沙莉)は女子部法科に入るため、笑顔をたやさず家事手伝いを粛々とこなしていきます。

そうこうしているうちに、兄・直道(上川周作)と花江の結婚式。

「どこを切り取ってもここには幸せしかありません」とナレーション(尾野真千子)が入りますが、その声は浮かない感じで、寅子も浮かない表情をしています。

直言(岡部たかし)に請われ、余興で寅子は歌を歌い、直言が踊ります。みんな愉快に手拍子をたたき、盛り上がりますが、ここに幸せは見いだせず、この場でも男性陣は無礼講で、女性たちは一歩下がったふうにスンッとしているように寅子には見え、歌は自棄になります。

それに花江だけは気づいていて、宴のあと「我慢してくれてありがとう」とささやきます。

酒の席で、男性たちが声も態度も大きく乱れまくっている姿を見るのはなんともいやなものです。お酌をしたり、興味のない話に相槌を打ったり、聴きたくない歌にわーって盛り上がる振りしたり、というのはうんざりです。

歌は「あやまるのはいつもパパ」とパパのダメなところをあげママのほうが強いという歌で、ダメなパパがかわいく、怒ってばかりのママを揶揄している曲にも思えますが、男性優位の世の中でも女性がいなくちゃはじまらないと誰もが思っている歌にも思えるような……。いつの時代も、こんなふうに歌に思いがこっそり託されてきたのでしょうか。

ドラマの主題歌、米津玄師さんの「さよーならまたいつか!」は悔しい思いをなんとか昇華しようとしているような歌詞で、いくつかのフレーズを聞くたび筆者は泣きそうになります。ここまで、はっきり世の中に対する反抗の歌詞のある朝ドラの主題歌はいままでなかったと思います。声も曲もタイトルバックの絵もきれいだけど、アグレッシブです。

話を戻して、披露宴の歌です。友人と兄の結婚式で歌うのがこれほどいやなものか、バレるほど悔しい顔で、歌う寅子。結婚制度への疑問がどんどん大きくなっているのでしょう。
結婚すると、家事を夫の代理人として行う以外は、権利がまったくなく、「無能力者」とみなされるかと思ったら、結婚式なんて地獄の入口にしか思えないのでしょう。そんなところに行こうとする友人をニコニコ笑って見送るなんて無理!

ですが、この時代のエリート銀行員は、ここまで昭和の軽くておバカな宴会ノリじゃないような気もするのです。

女性の権利を獲得するという題材なため、極端に、女性たちが賢さを隠し男性の機嫌をとっているように描いていますが、明治生まれで苦労して勉強してきた祖父を持つ筆者としては、男性はこんな感じじゃないなあと思ってしまいました。飲みの席では羽目を外していたかもしれませんが。法律で有利になってはいたけど、その分責任もすごく重いし、本当に勉強してすごく働いていました。だからこそ頑固で融通がきかず、それがいやではありましたが。
真面目で勉強家の男性像も過去の朝ドラには描かれています。「とと姉ちゃん」のお父さんや「まんぷく」の萬平さんなどですね。

岡部たかしさんは素敵だし、演じているお父さんも実は寅子の気持ちをわかっていて法科に入れるように尽力してくれる人ではありますが、この時代の経済界で働いて、あれだけの立派な家をもてるほどの人物にはどうも見えなくて……。でもそれには理由があると想像します。

たぶん、時代に沿いすぎて堅苦しい話になりすぎないように、令和の視聴者に親しみやすくしようとしているのではないかと。

伊藤沙莉さんのキャスティングもそうで、この父娘が、当時の勉強家エリートのイメージの中央値から少しズレて見えるのですが、あえてそうしているのだと思います。

さて、宴会のあと、穂高(小林薫)とばったり。直言とはる(石田ゆり子)と知り合いでした。世界は狭い。

これなら法科に入る話も早いかと思いきや、はるにちゃんと話す前に計画を知られてしまい……。


(文:木俣冬)

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