「ブギウギ」スズ子はいつまで育児をひとりでやり続けるのか<第97回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第97回を紐解いていく。
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見覚えある条映撮影所
第21週「あなたが笑えば、私も笑う」(脚本:櫻井剛 演出:盆子原誠)は昭和24年(1949年)の夏。スズ子(趣里)の仕事は順調で、映画の仕事も入ってきます。が、愛子(小野美音)はやんちゃ盛りで家でも仕事場でも落ち着きがありません。かなり大きく成長したように見えますが、「ジャングル・ブギー」が1948年の作品なので、愛子はまだ2歳くらいです。
家では、障子に穴を開けたり、小麦粉を頭からかぶったり。スズ子は困りつつも、頭ごなしに叱ったりはせず、愛情を注ぎます。相変わらず、他人に任せることなく、自分で育てたいと意地を張っています。
手伝えるのは、山下(近藤芳正)のみ。こんなときこそ、先週、再会したタイ子(藤間爽子)と達彦(蒼昴)と仲良くして協力してもらえたりしないのでしょうか。ところがタイ子は大阪に帰ることになりました。この時代に珍しく、向こう三軒両隣的なつきあいが皆無なのは、やっぱりスターだからでしょうか。
いつも親切な麻里(市川実和子)が預かりましょうか、と言っても頑なに頼らないスズ子。
羽鳥(草彅剛)は「青い山脈」(49年)という映画の主題歌が大ヒット、一層多忙になっていました。以前、群像劇の主題歌を依頼されていましたが、それはこの「青い山脈」だったのです。原節子主演の青春群像劇であります。
翌、1950年から日本映画は黄金期を迎えますので、羽鳥やスズ子が映画に進出していくのも自然な流れ。
スズ子は、タナケン(生瀬勝久)との共演の人情喜劇の時代劇『タナケン福来のドタバタ夫婦喧嘩』の撮影に愛子を連れていきます。撮影中は山下に見てもらいますが、山下も年齢的に、元気な子供の面倒を見きれないようで……。スター福来スズ子のために撮影所の人たちも手伝うことになります。
はじめての映画の現場で勝手もわからないうえ、撮影所の人に負担をかけるのだったら子守を雇ったほうがいいのでは……と思うのは気のせいでしょうか。結局、愛子は現場で動き回って、皆が目を離したすきにケガしてしまいます。そして、スズ子は撮影を中断して愛子の元へ――。
ふつうに考えたらこんなことにならないだろうと視聴者をイライラさせるイライラエンタメになってきました。イヤミスみたいなもので、負の感情でも心が揺さぶられるほうがいいのです。だから、スズ子が知恵もお金も使わない、意地っ張りの不器用な、素朴な人として描かれます。
条映撮影所とは、「カムカムエヴリバディ」に出てきた映画の撮影所(ロケ地は東映京都撮影所)。三代目ヒロインひなた(川栄李奈)の勤務先でした。この時代なら初代モモケン(尾上菊之助)がいそう。個性的な監督がいるのも条映ならではなのか、見た目は派手なのに気が弱そうな監督(レ・ロマネスクTOBI)が、タナケンに「監督、声出せよ」と言われていました。
タナケンとスズ子の丁々発止のやりとりはテンポが良くて、楽しめます。タナケンが再登場してくれてよかったー。
(文:木俣冬)
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