「虎に翼」寅子と優三の最初の夜<第35回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第35回を紐解いていく。
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優三の気持ち
社会的地位を得るために優三(仲野太賀)と結婚することにした寅子(伊藤沙莉)。さっそく、はる(石田ゆり子)と直言(岡部たかし)に報告しますと、直言は戸惑い、はるは「その手があったか」と寅子と同じことを言います。
ただ優三に結婚の「うまみ」は何か、と質問。さすがに「うまみ」という言い方は……と寅子も咎めますが、はるは真剣。
大事な寅子を託すのですから、優三の真剣さを確認したかったのでしょう。
結婚を決めた途端、運が回ってきたのか、事務所でははじめて弁護を担当できることになりました。それが、依頼人に、もうすぐ結婚すると言ったからかは定かではないですが、依頼人はしばらく迷ったすえに寅子が担当することを承諾するのです。
”佐田寅子”という名前がいいのかもしれません。
そして、はじめて法廷に立つこともできました。法廷の階段をあがる寅子の横顔は美しかった。
「紙切れ1枚でこれだけ立場がよくなる」と言う寅子に、
もともと結婚をくだらないと思っていたよね(土居志央梨)は懐疑的。
「逃げ道を手にいれると人間弱くなるものだぞ」と意見を述べます。
「逃げ道」のつもりは寅子にはないようですが、傍から見ると、そうも見えるのでしょうか。てっとり早く、弁護士として仕事したかったのもあるでしょうし、花岡(岩田剛典)の婚約が少なからず影響しているとは思いますが……。
試験に落ちてもけっして男装をやめない不器用なよねと、目的のためには手段を厭わない要領のいい寅子。どちらがいいとは決めきれません。
今週のサブタイトル「女の心は猫の目?」で、猫の目のように変わりやすいということわざでした。男だけれど花岡のほうが猫の目に見えましたが、寅子も目的はひとつ、法の道を行くことながら、「結婚しない」から「結婚する」(しかも誰でもよかった)に方針を変えました。
戦争は激しくなっていて、笹山(田中要次)も寿司屋を畳んで、国に帰ってしまいました(「ブギウギ」のおでん屋さんと同じですね)。そんな昭和16年11月、寅子と優三は籍を入れて、家族で記念写真を撮り、晴れて夫婦となりました。
もともと家族のように過ごしていた優三ですから、猪爪家で一緒に暮らすのも自然な感じ。みなにあたたかく迎えられます。
違うのは、寅子と同じ部屋であること。
はじめての夜、並んで眠るふたりはやや緊張気味。でも、優三は「指一本触れないから」と寅子を安心させます。でも、つい「僕はずっと好きだったんだけどね 寅ちゃんが」と本音が漏れました。
しばしの間をおいて「えっ?」とその言葉が気になる寅子。起きて、優三の真意を問いただしました。
お互い割り切った契約結婚であればさばさばやれそうですが、一方は好意を持っているにもかかわらず同じ部屋で過ごすことは気まずそう。優三さんのメンタルや身体状態が心配になります。
男性の辛さをこうもバッサバッサ切り捨てていくのは、そうすることで逆に男性のつらさにも気づこうよ、という意図なのかもしれません。
優三は「サザエさん」のマスオさん状態で、寅子は実家にそのまま住み、家事の負担も増えなさそうです。これなら弁護士の仕事にも支障はなさそう。優三でよかったですね。ほかの人と結婚して、その家に嫁いだらいろいろ負担があったでしょうから。かなり恵まれています。
(文:木俣冬)
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