「おむすび」結、父譲りの「栄養デカ長」に【98回】

続・朝ドライフ

「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら

2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。

平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第98回を紐解いていく。

[※本記事は広告リンクを含みます。]

▶︎「おむすび」画像を全て見る

「おむすび」をU-NEXTで視聴する

おむすび 孝雄と聖人が「アゲー」

「ねえ もしかしたらさ こんな気持だったのかなお父さん」

歩(仲里依紗)が帰らぬ聖人(北村有起哉)を思って「申し訳ない気持ちこみあげてきたんだけど」と言います。「申し訳ない気持ちこみあげてきたんだけど」というセリフは私はちょっと好きです。

その頃、聖人もいままでに感じたことのない気持ちが込み上げてきていました。ジャズ・バンドの演奏を聞きながら。

胃がんかもしれないと不安に耐えきれず、聖人は仕事をほっぽって街に出て、歩の店(チャンミカの店だけど)に立ち寄って、孝雄(緒形直人)と再会し、彼に飲みに連れていってもらいました。

まずは居酒屋。「きよし」です。「きよし」かー。結の病院のそば、御用達店じゃないですか。セットの都合でしょうけれど。「きよし」を選ぶかー。歩が教えたらしいですが、愛子(麻生久美子)も来た店と思ってのことでしょうか。とはいえ、医者たちがよく集う店に、患者が来て、癌かもと悩みを打ち明けているのってなんだかシュール。

癌かもと打ち明けられた孝雄は、今日はとことん聖人とつきあうことにします。

居酒屋からのジャズバー。聖人は、以前、孝雄がジャズが好きだという話を聞いて、いつかジャズを聞きたいと思っていたようです。そこで、趣味っていいものだと気づきます。いやでも若い頃はギター弾いてましたよね。働きはじめてからは、貧乏で趣味する余裕がなかったわけではなく、永吉(松平健)が趣味人だったので、道楽はしないと意地になったようです。極端ーー。

貧乏ではないとしても、趣味をもたず、仕事一筋の、振り返るとさみしい人生であったことに気づく聖人。父親に振り回された人生だったと思うと虚しい。

最後にひとつまだやりたいことがあると、聖人はプリクラを撮りたいと孝雄に頼みます。でも、夜が遅く、ゲーセンがしまっていて、証明写真コーナーで代用。酔った勢いで「アゲー」と2ショットを撮りました。このワンアイデアは良いと思います。

その頃、歩と結と愛子は、聖人を待って気を揉んでいました。そのときの歩のセリフが冒頭に引用したものです。親の気持ちをようやく知った歩と結でした。

家族4人、糸島時代はこころが離れていたようですが、それを経て、わりとそれなりになんとなく仲良くしている印象がある(なにかと実家に集まっているし、食卓一緒に囲んでいるし、何かあるとすぐ報告するし)わりに、妙に距離感あるように見えるへんな家族です。家族ってそういうものかもしれませんが。

帰ってきた聖人に、居酒屋で何を食べたか問い詰める結を、愛子が「栄養デカ長」と揶揄します。

聖人が昔、自分のことをそう呼んだと嬉しそう。よく覚えてますね。結の高校時代の話ですよ。帰宅が遅れた娘にあれこれいう聖人を愛子が「デカ長」とたしなめたこと、なつかしいです(第6回)。この頃は、楽しいドラマになりそうという希望がありました。

聖人としては、まだ自分が胃がんの可能性があることを隠しているつもりですが、結たちは知っているので、心配でやきもき。でも、知っているなら、こんなふうに家族3人で問い詰めずに、いつもどおりに接するほうが得策のような気がしますが……。

先が決まっているので、テキパキと話を進めていってる感満載です。親父が道楽者で、と久しぶりに永吉の話題が出てきたのも、そろそろ永吉のターンがあるのだろうと推察できます。人生いつ何が起こるかわからないから、その瞬間、せいいっぱい生きようというテーマのドラマにもかかわらず、旅行の添乗員さんに計画どおりに登場人物が動かされているような印象を受けます。もう少し見たいのに、時間ないから、早くバスに戻ってくださいと急かされるような感じ。一日に無理やり、回る場所が詰め込まれている感じ。

北村有起哉さんは御夫婦(奥様は朝ドラ「さくら」のヒロイン)で出演したアマゾンのCMがいい感じでしたが、このドラマが終わったら、がん保険のCMに出そうな気がしてきました。がんを心配して街をさまよう夫を心配する家族。でもがん保険に入っていたからお金は安心みたいなCMができそうと想像が膨らみました。象さんみたいな劇伴もCMで流れそう。

象さんみたいな劇伴が流れるなかで、娘たちが、お父さんの気持ちがわかったというと、聖人も娘たちがおしゃれしてはめ外す気持ちがわかったと言い、ようやく家族がわかりあえます。いつか4人でプリクラを撮ろうと家族の会話が弾みました。ここだけ切り取って見れば、いい話なのです。脚本家は切り取り職人としての才能は抜群です。つまり、タイパを求める時代に最適な作家なのです。

(文:木俣冬)

“朝ドラあるある”満載!「朝ドラ辞典」を見る

木俣冬著「ネットと朝ドラ」、現在好評発売中

「おむすび」をU-NEXTで視聴する

–{「おむすび」第20週あらすじ}–

「おむすび」第20週あらすじ

第20週 「生きるって何なん?」(2/17-2/21)


胃の調子が悪い聖人は、精密検査が必要となり胃カメラの検査を受けることに。結は、実家で聖人から胃がんについて質問され、心配になる。そんなある日、聖人が理容店の休憩時間に外に出たまま帰ってこなくなる。

聖人は歩の仕事ぶりを見るため、歩が勤めている古着店に来ていた。するとそこに神戸に帰ってきた渡辺孝雄(緒形直人)も来て、元気がない聖人をどうにかしようと街へ誘う。一方、家で心配しながら待つ愛子たち。遅くに帰ってきた聖人は、愛子から本気で頭にきたと言われてしまう。

–{「おむすび」作品情報}–

「おむすび」作品情報

放送予定
2024年9月30日(月)より放送開始

出演
米田結(よねだ・ゆい)/ 橋本環奈
『おむすび』の主人公。平成元年生まれ。 自然豊かな福岡県・糸島で、農業を営む家族と暮らしている。 あることがきっかけで、人々の健康を支える栄養士を志すようになる。

【結の家族・米田家の人々】

米田歩(よねだ・あゆみ)/ 仲里依紗
主人公・結の8つ年上の姉。
福岡で“伝説のギャル”として知られる。 奔放な振る舞いで米田家に波乱を巻き起こすが、ギャルになった裏にはある秘密が…。
主人公・結の父。 娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。

米田聖人(よねだ・まさと)/ 北村有起哉
主人公・結の父。
娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。

米田愛子(よねだ・あいこ)/ 麻生久美子
主人公・結の母。
結の祖母・佳代と家事をしながら、聖人の営む農業を支えている。 絵を描くのが得意。

米田永吉(よねだ・えいきち)/ 松平健
主人公・結の祖父。
野球のホークスファンで、自由奔放な“のぼせもん”。 困っている人がいたら放っておけない、情に厚い性格。

米田佳代(よねだ・かよ)/ 宮崎美子
主人公・結の祖母。
古くから伝わる先人たちの知恵に明るく、結が困った時の良きアドバイザーでもある。

【福岡・糸島の人々】

四ツ木翔也(よつぎ・しょうや)/ 佐野勇斗
福岡西高校に野球留学中の高校球児。
四ツ木という姓と眼鏡姿から「福西のヨン様」と呼ばれている。 糸島に練習場があり、結と時々出くわす。栃木県出身。

古賀陽太(こが・ようた)/ 菅生新樹
結の幼なじみで高校のクラスメイト。野球部員。
父は糸島の漁師だが家業を継ぐ気はなく、IT業界を目指している。 ある約束により、結のことを何かと気にかけている。

風見亮介(かざみ・りょうすけ)/ 松本怜生
書道部の先輩。
結にとって憧れの存在。 書道のイメージを一新するような書家を志している。

宮崎恵美(みやざき・えみ)/ 中村守里
結のクラスメイトであり、高校での最初の友達。
結を熱心に書道部へと誘う。 派手なギャルが苦手。

真島瑠梨(ましま・るり)<ルーリー>/ みりちゃむ
結の姉・歩が結成した「博多ギャル連合」(略してハギャレン)の、現在の総代表。
ハギャレンの復興を目指している。

佐藤珠子(さとう・たまこ)<タマッチ>/ 谷藤海咲
ハギャレンのメンバー。
子どものころからダンス好きで、ハギャレンではパラパラの振付を担当。 筋が通らないことを良しとしない、一本気タイプ。

田中鈴音(たなか・すずね)<スズリン>/ 岡本夏美
ハギャレンのメンバー。
結と同い年で、いつもスナック菓子を食べている。 手先が器用で、ネイルチップ作りが趣味。

柚木理沙(ゆずき・りさ)<リサポン>/ 田村芽実
結のクラスメイト。
学校では校則を守るおとなしい女子高生だが、実は隠れギャル&ハギャレンメンバーでもある。ギャルの歴史を本にすることが夢。

ひみこ / 池畑慎之介
糸島の「スナックひみこ」の店主。
年齢、性別、経歴、すべてが不詳の謎の人物。 糸島の住人一人一人の事情をなぜか把握している。

草野誠也(くさの・せいや)/ 原口あきまさ
糸島の商店街で陶器店を営んでいる。
ホークスの大ファン。

古賀武志(こが・たけし)/ ゴリけん
結の幼なじみ・陽太(ようた)の父親。
糸島で漁師をしている。

大村伸介(おおむら・しんすけ)/ 斉藤優(パラシュート部隊)
糸島の商店街で薬店を営んでいる。
ホークスの大ファン。

井出康平(いで・こうへい)/ 須田邦裕
結の父・聖人(まさと)の幼なじみ。
糸島の農業を何とかしたいと日々奮闘している。

佐々木佑馬(ささき・ゆうま)/ 一ノ瀬ワタル
結の姉・歩と行動を共にする“自称・米田歩のマネージャー”。

大河内明日香(おおこうち・あすか)/ 寺本莉緒
結の姉・歩と対立していた、元天神乙女会のギャル。

飯塚恭介(いいづか・きょうすけ)/ BUTCH
福岡県博多のカフェバー「HeavenGod」の店長。


根本ノンジ

音楽
堤博明

主題歌
B’z「イルミネーション」

ロゴデザイン
大島慶一郎

語り
リリー・フランキー

制作統括

宇佐川隆史、真鍋 斎

プロデューサー
管原 浩

公式サイト

タイトルとURLをコピーしました