「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら
2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。
平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第99回を紐解いていく。
[※本記事は広告リンクを含みます。]
退院したら、したいこと
聖人(北村有起哉)の検査の結果が出ました。
胃がんでしたが、ステージ2で、それだと治る可能性が高いです。
愛子(麻生久美子)は癌と聞いて、深い溜息をつきますが、こんなとき結(橋本環奈)がいるから、ステージ2なら手術すれば治る可能性は高いと聖人を元気づけます。医者でも看護師でもなく管理栄養士だけれど、病院勤務だから信憑性はあります。
結はNSTとして、聖人の栄養をしっかり診ることになりました。聖人の病室に、ずらりと集まるNST。
結の家族ーー父、母、夫がNSTの面々に晒されることになりました。若いお母さんだなあとか、夫、イケメンだなあとか思ったでしょうね。
それにしても聖人が胃がんだからというのはあるとは思いますが、身内が担当になるのって身びいきを疑われないのでしょうかね。NSTはかなり特殊なグループのようなので、なかなか特別に担当してもらえないところ、科長や医師からのはからいで、特別にNSTが聖人を担当することになったようで。これはドラマだから、すんなりとあたたかい気持ちで、なんならいいシーンと思って見てしまいますが、自分がこの病院に入院して、病気によるストレスが溜まっているとしたら、この贔屓には苛立つだろうなあと思いました。
でも、この関係に馴れ合いはありません。結がしっかり説明していると、聖人は真顔になって、口調も「いたみいります」などと敬語になります。家族ではなく、患者と栄養管理士という関係性になっているのです。聖人が「職人」というものにこだわってきたところが生きてきます。
歩(仲里依紗)の働いている姿を見たいと思ってお店に来た聖人。結の働いている姿も見ることができて満足でしょう。
愛子も結がしっかり仕事しているところを見て、嬉しそう。そして、病院には、いろんな人が働いているのだと感じています。これも先日、出版社を見て愛子が感動したことにつながっています。愛子は、出版社や病院と、いろんな世界を見て、たぶん、何か心の変化が訪れていることでしょう。
そこに、どんな人が働いているかの重要性は、歩が新規ブランドのサンプルを海外に発注したため、相手の顔が見えず、雑な仕事をされてしまっていることにもつながっています。職人の孝雄(緒形直人)はもっと仕事相手をしっかり知ることの重要性を歩に説きました。
さて。手術は不安なもの。結は聖人に、目先の手術について考えるのではなく、無事終わったあとに何がしたいか、想像するよう促します。これって大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で主人公の蔦重(横浜流星)が子どものときから、不幸な生い立ちを払拭するためにやっていることと同じですね。いまの時代、未来を夢見ることが大切なムーブなのだと感じます。
入院中は、「ゴルゴ13」の27巻が読みたいと言っていた聖人ですが、退院したら、糸島にみんなで行きたいと言います。治るためにしっかり食べる。結の「食べり」を久しぶりに聞いたという聖人。北村有起哉さんの話し方や表情、かかる劇伴がピアノのやさしい感じで、いい場面になっています。
糸島を出て10年くらい経っているはず。盆暮れ正月には糸島にくるようにと永吉(松平健)が言っていたと記憶しますが、行ってたのかな。行ってなさそう。
永吉は、ひ孫が生まれたら、せっせとやって来そうだけれど、糸島と神戸の関わりはどうなっているのかは、脳内補完と「あさイチ」でも言っていました。「あさイチ」で発言されると「脳内補完」が一般化した感じがいたします。空いた部分は、受け手がいくらでも想像していい。ネガティブな想像をして苛立つよりも、いいことを想像して満たされたほうが精神衛生上いいとは思いますが、ドラマの脳内補完が一般的に認められたら、悪いことを想像する自由も同時にあるということなのです。
ただ、ドラマでは、いい未来を想像することを推奨しているので、過去も未来も、いいほうに考えたほうがいいかもしれません。例えば、海外の縫製工場の人たちも、実際に会って話をしたら、彼らも決して悪い人たちではなく、雑な仕事になってしまう致し方ない理由がわかるかもしれないですよ。
(文:木俣冬)
木俣冬著「ネットと朝ドラ」、現在好評発売中
–{「おむすび」第20週あらすじ}–
「おむすび」第20週あらすじ
第20週 「生きるって何なん?」(2/17-2/21)
胃の調子が悪い聖人は、精密検査が必要となり胃カメラの検査を受けることに。結は、実家で聖人から胃がんについて質問され、心配になる。そんなある日、聖人が理容店の休憩時間に外に出たまま帰ってこなくなる。
聖人は歩の仕事ぶりを見るため、歩が勤めている古着店に来ていた。するとそこに神戸に帰ってきた渡辺孝雄(緒形直人)も来て、元気がない聖人をどうにかしようと街へ誘う。一方、家で心配しながら待つ愛子たち。遅くに帰ってきた聖人は、愛子から本気で頭にきたと言われてしまう。
–{「おむすび」作品情報}–
「おむすび」作品情報
放送予定
2024年9月30日(月)より放送開始
出演
米田結(よねだ・ゆい)/ 橋本環奈
『おむすび』の主人公。平成元年生まれ。 自然豊かな福岡県・糸島で、農業を営む家族と暮らしている。 あることがきっかけで、人々の健康を支える栄養士を志すようになる。
【結の家族・米田家の人々】
米田歩(よねだ・あゆみ)/ 仲里依紗
主人公・結の8つ年上の姉。
福岡で“伝説のギャル”として知られる。 奔放な振る舞いで米田家に波乱を巻き起こすが、ギャルになった裏にはある秘密が…。
主人公・結の父。 娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。
米田聖人(よねだ・まさと)/ 北村有起哉
主人公・結の父。
娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。
米田愛子(よねだ・あいこ)/ 麻生久美子
主人公・結の母。
結の祖母・佳代と家事をしながら、聖人の営む農業を支えている。 絵を描くのが得意。
米田永吉(よねだ・えいきち)/ 松平健
主人公・結の祖父。
野球のホークスファンで、自由奔放な“のぼせもん”。 困っている人がいたら放っておけない、情に厚い性格。
米田佳代(よねだ・かよ)/ 宮崎美子
主人公・結の祖母。
古くから伝わる先人たちの知恵に明るく、結が困った時の良きアドバイザーでもある。
【福岡・糸島の人々】
四ツ木翔也(よつぎ・しょうや)/ 佐野勇斗
福岡西高校に野球留学中の高校球児。
四ツ木という姓と眼鏡姿から「福西のヨン様」と呼ばれている。 糸島に練習場があり、結と時々出くわす。栃木県出身。
古賀陽太(こが・ようた)/ 菅生新樹
結の幼なじみで高校のクラスメイト。野球部員。
父は糸島の漁師だが家業を継ぐ気はなく、IT業界を目指している。 ある約束により、結のことを何かと気にかけている。
風見亮介(かざみ・りょうすけ)/ 松本怜生
書道部の先輩。
結にとって憧れの存在。 書道のイメージを一新するような書家を志している。
宮崎恵美(みやざき・えみ)/ 中村守里
結のクラスメイトであり、高校での最初の友達。
結を熱心に書道部へと誘う。 派手なギャルが苦手。
真島瑠梨(ましま・るり)<ルーリー>/ みりちゃむ
結の姉・歩が結成した「博多ギャル連合」(略してハギャレン)の、現在の総代表。
ハギャレンの復興を目指している。
佐藤珠子(さとう・たまこ)<タマッチ>/ 谷藤海咲
ハギャレンのメンバー。
子どものころからダンス好きで、ハギャレンではパラパラの振付を担当。 筋が通らないことを良しとしない、一本気タイプ。
田中鈴音(たなか・すずね)<スズリン>/ 岡本夏美
ハギャレンのメンバー。
結と同い年で、いつもスナック菓子を食べている。 手先が器用で、ネイルチップ作りが趣味。
柚木理沙(ゆずき・りさ)<リサポン>/ 田村芽実
結のクラスメイト。
学校では校則を守るおとなしい女子高生だが、実は隠れギャル&ハギャレンメンバーでもある。ギャルの歴史を本にすることが夢。
ひみこ / 池畑慎之介
糸島の「スナックひみこ」の店主。
年齢、性別、経歴、すべてが不詳の謎の人物。 糸島の住人一人一人の事情をなぜか把握している。
草野誠也(くさの・せいや)/ 原口あきまさ
糸島の商店街で陶器店を営んでいる。
ホークスの大ファン。
古賀武志(こが・たけし)/ ゴリけん
結の幼なじみ・陽太(ようた)の父親。
糸島で漁師をしている。
大村伸介(おおむら・しんすけ)/ 斉藤優(パラシュート部隊)
糸島の商店街で薬店を営んでいる。
ホークスの大ファン。
井出康平(いで・こうへい)/ 須田邦裕
結の父・聖人(まさと)の幼なじみ。
糸島の農業を何とかしたいと日々奮闘している。
佐々木佑馬(ささき・ゆうま)/ 一ノ瀬ワタル
結の姉・歩と行動を共にする“自称・米田歩のマネージャー”。
大河内明日香(おおこうち・あすか)/ 寺本莉緒
結の姉・歩と対立していた、元天神乙女会のギャル。
飯塚恭介(いいづか・きょうすけ)/ BUTCH
福岡県博多のカフェバー「HeavenGod」の店長。
作
根本ノンジ
音楽
堤博明
主題歌
B’z「イルミネーション」
ロゴデザイン
大島慶一郎
語り
リリー・フランキー
制作統括
宇佐川隆史、真鍋 斎
プロデューサー
管原 浩