9.11を5本の映画で振り返える

今年もまた9月11日がやってきました。

2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件。

今なお、あの時の衝撃映像などが目に焼き付いている方は多いかと思われます。

思えばこのときが今に至る激動の21世紀を象徴していたのかもしれません。

さて、あれから20年近くの歳月が流れ、映画もさまざまな形であの事件を振り返っています。

そこで今回は9.11をモチーフにした映画をいくつか紹介していきましょう。

『ユナイテッド93』(06)

9.11では4機の旅客機がテロリストにハイジャックされ、3機が自爆テロを遂行しましたが、唯一彼らの目標に達することなく墜落したのがユナイテッド航空93便です。

『ユナイテッド93』は、その93便の離陸からハイジャックの模様、そして墜落に至るまでの機内の様子をドキュメンタリー・タッチで綴った作品です。

通常の娯楽映画であれば、こういった事件が起きてスリリングな状況が頻発していっても最後はメデタシとなるのが常ですが、こちらはあくまでも実話の映画化なのでウソは許されません。

あたかも自分が客席にいるかのような恐怖の臨場感に胸が締め付けられてしまうほどではありますが、結末こそ変えようのない悲劇であれ、そこに至るまでに乗客や乗務員らが生きのびるために精一杯の行動を起こしていた事実も描かれていることで、最終的には見る側に人間の叡智みたいなものを改めて痛感させられる作品に仕上がっています。

『ワールド・トレード・センター』(06)

9.11テロの標的となって崩壊したNYの世界貿易センター・ビルを舞台にしたサバイバル映画。

当日の朝、テロリストに占拠されたアメリカン航空11便がセンターのタワー1に、続けてユナイテッド航空175便がタワー2に激突し、大惨事が引き起こされていく中、センター内の人々を避難させようとして自分らも閉じ込められてしまったジョン・マクローリン(ニコラス・ケイジ)やウィル・ヒメノ(マイケル・ペーニャ)ら港湾局警察警官たちの決死のサバイバルを描いた実話の映画化です。

これまで『プラトーン』『JFK』などアメリカ社会の闇を糾弾する映画作りに長けてきたオリヴァー・ストーン監督ではありますが、実は生粋のニューヨーカーでもある彼は、ここでは惨劇に屈することなく命がけで奮闘した人々へエールを送りつつ、人間そのものの生命力を讃歌しようと腐心しています。

映画化に際してモデルのふたりの警官がアドバイザーを務めていますが、彼らは映画的アレンジを認めず、あくまでも事実を描くよう強く要求し、またそれに応じたものに仕上がっているとのことです。

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(11)

9.11で宝石商の父(トム・ハンクス)を亡くした11歳の少年オスカー(トーマス・ホーン)が、遺品の中から“ブラック”と書かれた封筒とその中の鍵を発見。

かつて父から「NYには幻の第6区がある」と聞かされていた彼は、NY中のブラックという苗字の人物を探して鍵の秘密を解き明かそうという「調査探検」の旅に出かけます。

オスカーはアスペルガー症候群(社会的コミュニケーションが困難。興味の対象範囲が狭い。など)を抱えており、父は生前の父はよく彼を連れて「調査探検」の遊びを施していたのでした……。

ジョナサン・サフラン・フォアの小説を原作に、スティヴン・ダルトリー監督のメガホンで映画化されたヒューマン映画。NYテロがもたらした数々の悲しみを乗り越えて、少年が成長していくさまを感動的に綴っていきます。

鍵と幻の第6区の正体は? それは直接映画をご覧になって確かめてください。

主演の少年トーマス・ホーンや名優トム・ハンクスら男優陣の好演もさながら、母を演じたサンドラ・ブロックも素晴らしい存在感を見せつけています。

『ナインイレブン 運命を分けた日』(17)

9.11テロに巻き込まれた世界貿易センタービルの中、たまたまエレベーターに乗り合わせていた離婚調停中のジェフリー(チャーリー・シーン)&イヴ(ジーナ・ガーション)の夫婦ら5人の男女が、ノースタワー38階付近に閉じ込められ、まもなく来るビル崩壊の恐怖に怯えながらも脱出の糸口を探ろうとしていくサバイバル映画。

ドラマの大半がエレベーター内で繰り広げられていく密室会話劇スタイルで、パトリック・カーソンの戯曲を原作にマルティン・ギギが監督。

崩壊パニック・スペクタクル的要素は排除し、あくまでも夫婦間の諍いやら人種の別などの偏見と確執が、極限状況の中ではまったく意味を持たなくなっていくといった人間ドラマこそを屹立させていくあたりが妙味です。

エレベーター内の5人をインターコムで励まし続けるビルのオペレーター、メッツィを演じるウーピー・ゴールドバーグの貫禄ある名演にも目を見張らされます。

また1970年代の人気スター、ジャクリーン・ビセットやブルース・デイヴィソンが出演しているのも、オールドファンにはお楽しみでしょう。

『11’09”01/セプテンバー11』(02)

11人の世界的権威の映画監督たちが2001年9月11日」に勃発した9.11をモチーフに、それぞれが「11分9秒01」の尺で描いたオムニバス映画。

フランスからクロード・ルルーシュ、イギリスからケン・ローチ、アメリカからショーン・ペン、メキシコからアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥなどと肩を並べて、日本からは『復讐するは我にあり』『うなぎ』などの名匠・今村昌平監督が参加。

今村監督が描いたのは、何と第二次世界大戦を経て戦後復員してきた男(田口トモロヲ)が、最後に蛇になっていくという寓話的内容。結果として11本の短編の中でもひときわ異彩を放つものとして、世界中で大きな注目を集めることとなりました。

(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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