ネタバレ御免!バッド・エンドな映画たち

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編集部「今度の《金曜映画ナビ》、何かバッド・エンドな映画をピックアップしてね」

私「は~い…って、え? バッド・エンド映画なんて、せっかく12月なんだからクリスマスとか何とか華やかな映画の特集にしましょうよ」

編集部「いや、年の瀬だからこそ、思いっきりバッドな映画を見てもらい、厄落としも兼ねてすっきりした気分で新年を迎えていただくのだ!」

私「はあ、そんなもんですかねえ……」

なんて会話がなされたかどうかはさておき(!?)、今回はバッド・エンド映画の中から『アフターショック』をご紹介!(ってか、よくよく考えてみると、これってある意味ネタバレしてるような気もしてならないけど……まあ、今回は大目に見てやってくださいませ)

大震災の後=『アフターショック』で
もっとも怖いのは?

(C)2012 Vertebra Aftershock Film, LLC  

『アフターショック』は2012年に製作されたアメリカ=チリ合作映画で、ジャンルはパニック・ホラーです。

旅行でチリにやってきたグリンゴ(イーライ・ロス)は、現地案内人でもある友人アリエルとポヨに連れていかれたナイトクラブで、モニカ(アンドレア・オズヴァルト)ら3人の若い女性と知り合い意気投合していました。

そんな折、突如大地震が発生!

クラブの中はパニックに陥り、アリエルは片腕をなくす大怪我を負ってしまいました。

ようやく一同が外に出たら、そこはもう瓦礫だらけの廃墟と化していて、しかも津波警報のサイレンまで鳴り出したので、避難すべくケーブルカーで山に向かうことに。

しかし先にアリエルを乗せたケーブルカーは途中で落下し、乗員は全員死亡。

逃げ場を失った人々は、津波がまもなくやってくる恐怖も相まって、次第に暴徒化していきます。

さらには崩壊した刑務所から囚人たちが脱走し、警官隊と激しい攻防を繰り広げつつ、若い女性たちに襲いかかっていきます。

旅行のアバンチュルから一転、阿鼻叫喚と化していく地獄絵図の中、グリンゴたちの運命やいかに?

本作では地震や津波といった自然災害の恐怖はもちろんですが、それ以上に怖いのは人間そのものであるといった辛辣な視線のもと、シビアでえぐい描写が徐々につるべ打ちとなっていきます。

何せ主演が『キャビン・フィーバー』(03)や『ホステル』(05)『グリーン・インフェルノ』(13)など地獄モードのホラー映画監督として定評のある(最近は『ルイスと不思議な時計』みたいなメルヘン映画も手掛けるようになってはいますが)イーライ・ロスなので、まあ、彼が主演に加えて原案、脚本にまで関わる作品ですから、そりゃあ、あの、その、ねえ……。

ちなみに原題でもある“aftershock”とは“余震”や“余波”という意味ですが、現実的にも災害の後の真の余波とは、人心の恐怖そのものであることを痛感させられる作品でもあります。

なお、次章ではバッドエンド映画の名作選をお届けしますが、これまたある程度のネタバレは避けられない類いの特集になってしまいますので(さすがにエンドそのものの内容までは記しませんけどね)、そういうのは「僕は(私は)嫌だ!」という方は、ここでストップして『アフターショック』をご覧になってみてください!?

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ジャンル別で
バッドエンド映画を選んでみた!

では今回はジャンル別にバッド・エンド映画をいくつか集めてみました。
(あからさまなホラー映画は今回除外しています。だってホラーはバッドエンドなホラー映画って当たり前すぎるでしょ)

戦争映画

戦争映画の場合、『遠すぎた橋』(77)みたいにミッションの失敗を描いたものもさながら、やはり戦場に赴いた兵士の悲惨な末路を描いたものが数多く、古くは『西部戦線異状なし』(30)みたいな戦前の名作はそのスタンダード。潜水艦映画の名作『U・ボート』(81)なんて海の底も海上もどちらも地獄であったことを訴えながら戦争の過酷さと人生の過酷さを重ね合わせた名作でした。

やむなく上官の命令に従ったことで戦後BC級戦犯として処刑される日本人の悲劇を描いた『私は貝になりたい』は幾度もドラマ(58・07)&映画化(59・08)されています。日本の戦争映画は『ひめゆりの塔』(54・82・95)や『樺太1945年夏・氷雪の門』(74)、また広島や長崎の原爆を扱った作品など、悲劇を戦争そのものに対する怒りに変えて反戦を訴える作品も多いですね。

そういった中で、あえて今回1本選ぶとしたら、戦場で両手足も目も耳も口も失った兵士ジョニーの悲劇を描いたドルトン・トランボ監督の『ジョニーは戦場へ行った』(71)を挙げたいところ。

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凄惨な現在と、そんな彼にも甘く切ない青春があったことを告げる、そのギャップがあまりにもエモーショナルに心に響き、見終えてしばらくは何もできなくなるほどの衝撃をもたらしてくれます。

SFファンタジー映画

『スター・ウォーズ』が1977年に登場する以前、1960年代末から70年代なかばにかけてのSF映画は、従来のセンス・オブ・ワンダー活劇的なものから、『猿の惑星』(68)を筆頭に文明批判を強く訴える傾向がありました。『ソイレント・グリーン』(73)『赤ちゃんよ永遠に…』(72)『ソイレント・グリーン』(73)など行き過ぎた文明を批判するバッド・エンド作品が多く作られています。

80年代に入り、本来は未来が暗いことを訴えようとしていた『ブレードランナー』(82)は、製作サイドの意向により後味の良いラストを付け足したものが最初に劇場公開され、後に監督のリドリー・スコットが理想とするディレクターズカットが幾度もお披露目されていきました。

テリー・ギリアム監督の『未来世紀ブラジル』(85)も、当初のバッドエンドと真逆なハッピーエンド版を製作サイドが勝手にこしらえたことで、後々ハリウッドを揺るがす一大トラブル事件が発生しています。

21世紀に入り、9・11以降のSFファンタジーは文明批判を含んだダークテイストのものが再び急増(今に至るゾンビ映画のブームも、それとは無縁ではないでしょう)。
中でも20世紀の『ターミネーター』1(84)&2(91)は未来の危機をいかに回避するかに焦点が絞られていましたが、『ターミネーター3』(03)では今までの努力がすべて水の泡と化したかのように世界は崩壊し、さながら『猿の惑星』シリーズみたいな様相を呈していきます。逃れられない世界崩壊の予言と対峙する家族の悲劇を描いた『ノウイング』(09)なんて、見ているだけで辛く空しい映画もありました。

が、個人的に最も愛してやまないバッド・エンドSFファンタジー映画はスティーブン・キング原作の『ミスト』(07)です。

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濃霧の中から次々と人を襲う謎のモンスターによる壮大なる惨禍と、それに伴う人生の無情と無常の描出は、この手の作品が苦手な人でも一度は見ておくべきと断言できる優れものです。

サスペンス映画

こちらもホラー映画同様、バッドエンドなものは数限りなく多いジャンルです。

この手の特集でよく登場するのは『セブン』(95)や『レクイエム・フォー・ドリーム』(00)みたいな作品で、どちらも見終えていや~んな気分にさせられること必至。

ただ、こちらも個人的に押したいのはブライアン・デ・パルマ監督の『ミッドナイトクロス』(81)。

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殺人に伴う狙撃音をたまたま録音してしまった映画音響マンがたどる数奇な運命をミステリアスに描いたものですが、このラストはもうあまりにもつらく悲しすぎて……。ちなみにこの時期のデ・パルマ監督は、他にも『キャリー』(76)や『フューリー』(78)『殺しのドレス』(80)などの悪夢的バッド・エンド意欲作で台頭し、多くの映画ファンを虜にしていました。

ミュージカル

ミュージカルといえば華やかでハッピーなイメージが付きまといがちですが、よくよく考えますと《ロミオとジュリエット》をモデルにした『ウエスト・サイド物語』(61)なんて完全なるアンハッピーエンドですし、ロミジュリそのもののミュージカル化『ロミオ&ジュリエット』(96)もあります。フランス映画『シェルブールの雨傘』(63)にしても、最後は切ない終わり方になっています。

またヴェトナム戦争批判を前面に訴えた『ヘアー』(79)あたりからミュージカルもどんどん自由になってきたとでもいいますか、マドンナ主演の『エビータ』(96)も感動的ではあれ悲劇の人生の映画化でした。最近の『ラ・ラ・ランド』(16)だって、視点を変えてみるとある意味バッドエンドでしょう。

そしてアイスランド出身の人気歌手ビョーグ主演という触れ込みで日本でも大ヒットした『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00)も、それまでバッドエンドに免疫のない若者たちに多大なトラウマを与えたことで大いに知られている作品です。

ダンサー・イン・ザ・ダーク(字幕版)

本作のラース・フォン・トリアー監督はこれ以外にも『ドッグヴィル』(03)などトラウマ映画の巨匠ともいえる存在なので、クレジットに彼の名前をみつけたらある程度の覚悟をもって作品に接するべきでしょう。

アニメーション

これはもう説明不要、高畑勲監督の『火垂るの墓』(88)に尽きる!

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初公開時は何と『となりのトトロ』(88)と二本立てだったという、まさにどちらを先に見るかで映画館を後にするときの気分が天国か地獄かと言わんばかりに違ってきます。

あともう1本挙げたいのは『風が吹くとき』(86)。これは核戦争勃発を知らされた老夫婦が、政府の安易なマニュアルに盲目的に従って保存食やらシェルターやらの準備をした挙句、放射能に侵されて死んでいくという、『スノーマン』でおなじみレイモンド・ブリックスの描くキャラクターの愛らしさとは真逆の悲惨さに満ち溢れた問題作でした。

北野武

こちらももう言わずもがなで、デビュー作『その男、凶暴につき』(89)から『アウトレイジ』3部作(10~17)まで、彼が作るバイオレンス映画にハッピーエンドなんて求めてはいけません。

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クリント・イーストウッド

実は彼こそバッド・エンド映画の名匠ではないかと確信しております。特に21世紀に入ってからの『ミスティック・リバー』(03)や『ミリオンダラー・ベイビー』(04)『J・エドガー』(11)『アメリカン・スナイパー』(14)など、いずれも秀逸な出来ではあれ、しょっちゅう何度も繰り返し見たいかどうかと問われるとあまりにも辛い、そんな人生をシビアに見据えた彼の監督作品は意外に多いのです。

ミスティック・リバー (字幕版)

もともとイーストウッドは初監督作品『恐怖のメロディ』(71)の頃から、どこかしら倒錯的で残酷なバイオレンス映画を撮り続けています。また出演作品でも『白い肌の異常な夜』(71)など猟奇的題材のものが多々あります。

そもそも残虐なイタリア製西部劇マカロニ・ウエスタンの立役者だった彼、そこでもたらされた血の洗礼は今もなお影響を及ぼしているのかもしれません。

人間ドラマ

最後に、バッドエンドなのに見終えて心がなぜか洗われる作品を紹介しておきたいと思います。

ジョン・フォード監督の1941年度作品『わが谷は緑なりき』。

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初老の男が生まれ故郷のイギリス、ウェールズ地方の炭鉱町ロンダの谷での貧しくも幸せだった少年時代の家族を回想していくストーリー。

しかし、その幸せはやがて終わりを告げ、それこそ誰も報われることなく映画は終わります。

それでも、この作品は人間の善意と誠実さを抒情的モノクロ映像で切々と謳い上げていくことによって、悲しみの涙が見る者の心を浄化させてくれる究極の人間讃歌として見事に成立しているのです。

第14回アカデミー賞では最優秀作品賞をはじめ6部門を制覇した名作中の名作。

バッドエンドが見る者の心を豊かに潤わせてくれる奇跡的なまでのマジック、それも映画ならではの効用といえるのかもしれませんね。

(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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