ミュージカルの舞台裏を描く『ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢』

1週間お疲れ様でした!金曜の夜、映画を観ながらゆっくりと過ごすのはいかがでしょうか?

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今週はドキュメンタリー映画「ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢」をご紹介します。

ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢 (プレミアムエディション 2枚組) [DVD]

私はミュージカルもミュージカル映画も大好きで、「オペラ座の怪人」「シカゴ」「Rent」など、ニューヨークに行くとリーズナブルなチケットを買うために早くから長い列に並ぶのも苦ではなく、「ヘアスプレー」や「マンマミーア」「ムーランルージュ」などのサントラをパワーソングにランニングをしたり仕事をしたりしています。

この「ブロードウェイ♫ブロードウェイ〜コーラスラインにかける夢」は、そんな華やかなミュージカルの舞台の(熾烈な!)裏側を覗くことが出来るドキュメンタリー映画です。

映画は、1974年、演出家で振付師のマイケル・ベネットが22人のダンサーの前で話した時に録音された、彼の肉声から始まります。

「ミュージカルを作りたい。タイトルは『コーラスライン』」

この時にマイケル・ベネット自身が赤裸々に自分のことを打ち明けたため、そこにいたダンサーたちも過去や生い立ちを素直に話し、それをベースに「コーラスライン」のストーリーが作られていきました。この「ブロードウェイ♫ブロードウェイ〜コーラスラインにかける夢」は、まさにダンサーたちがその「コーラスライン」の舞台に立つためにオーディションを戦い抜いていく姿が、ありのまま描かれています。

まず、ミュージカルの「コーラスライン」のストーリーを簡単にご紹介します。

舞台は、ニューヨークのブロードウェイ。演出家のザックのもと、彼の新作にコーラスダンサーとして出演するため、17人のダンサーたちが最終オーディションを受けているシーンから始まります。17人は一列に白いラインに並び、順番に身の上話をしていきます。

この白いラインこそ、まさにタイトルとなる「コーラスライン」。

稽古の時に舞台上に引かれているラインのことで、役名のないコーラスはこのラインから前に出ないように、とされ、メインキャストと無名のコーラスが隔てられる象徴になっています。厳しいオーディションを勝ち抜いたとしても、得られるのは無名のコーラス。ザックからは、「きみたちはスターを彩る額縁」「誰も僕の目を惹いてはいけない」と言われます。それでも、その8つあるコーラスの座を手に入れるために17人のダンサーたちが必至に自分をアピールしていきます。

背が低いことがコンプレックスだったり、音痴だったり、一度はスターの道を歩んでいたのにその階段を踏み外したり、整形をしていたり。それぞれが履歴書にはないエピソードを赤裸々に話していき、最終的に8人が選ばれます…。

「コーラスライン」は、ブロードウェイにて1975年に初演され、日本では劇団四季でも、1979年に初演を迎えており、その舞台稽古にはマイケル・ベネット本人も訪れていたそうです。

この「コーラスライン」のストーリーそのものが、ダンサーたちを主役に、ダンサーたちがどんな重圧や問題を日々抱えているか、そして後悔することなくどう自分らしく生きるかが描かれており、他のミュージカルの舞台に立つことよりも、ダンサーたちにとって特別な意味があるようです。

「ブロードウェイ♫ブロードウェイ〜コーラスラインにかける夢」の中で、コニーという中国系アメリカ人の女性の役に、日本人である沖縄出身の高良由香さん(YUKA)がオーディションを受けているのですが、「この作品がダンサーたちの「真実」だから、この作品に出る、ということにとても意味がある」と語っています。

本編のオーディションには、オリジナル版でこのコニー役を演じた女性が振り付け、ダンスのレッスン、そして選考をしているのですが、その彼女が「あの子は私とは全然違う」と、YUKAを気に入っていない様子がありありと伝わってきます。NY育ちでない彼女の英語も気に入らず、オーディションの際にも「Tenって発音してみて!」「次はDancingって発音してみて!」とリピートさせられます。

また、YUKAは、親友でもある別のダンサーと同じ役を取り合うことになり、(役を取れるのが)「どっちでもうれしいわ」とお互いに言い合うシーンがあるのですが、日本人のこちらとしては、YUKAが果たしてコニー役を手に入れることができるのか!

このYUKAに限らず、舞台の上の綺麗なところだけでなく、舞台袖から別の候補者のオーディションをのぞき、「あの急に目立ってきた金髪の子は何?私、同じ役狙ってたらイヤなんすけど」とかオーディション後に「あなたの演技、とっても良かったわ〜、私なんて全然ダメよ〜」と声を掛けつつ「絶対に真意は違うんだろうな」と思うようなシーンなど、女性たちが火花を散らし、お互いを褒めつつも「自分の方が優れていて役も何がなんでも手に入れたい」、というのがありありと伝わってくる、そんなバチバチとした熱い戦いがとても面白いです。

映画の93分の間、観ているこちらとしては女性キャストにも男性キャストにも、「推しメン」ができてくるわけで、おのずとその人が選ばれるかどうか、「この自信過剰な人は脱落しないかな」など、個人的な好みも出てくるので、観ている方も力が入ります。

本作の原題は「Every Little Step」。一度はみなさん耳にしたことがあるだろう、「コーラスライン」の一番の見せ所、ラインダンスの曲「ONE」の歌詞にもあります。1つ1つのオーディションを全身全霊で勝ち抜いていき、そしてその次のステップであるオーディションが8ヶ月も空く、というように1歩1歩ゆっくりと着実に進んでいく様子が映画では描かれています。

次のオーディショまでは、トレーニングを重ねたり、靴やレオタードを新調したり、と過ごし方は三者三様ですが、迎えたオーディションで「今日の君はどうしたんだ?8ヶ月前の演技をしてほしい」とあるダンサーが言われたときも、「8ヶ月の間に色々とあった。前の演技をしろ、と言われても覚えてないし、あの時の演技のどこを気に入ってくれていたのかわからない」と話してたのも印象的でした。

また、オーディションが進む中で、候補者たちが故郷にいる家族に電話で状況を伝えるシーンも何度かあり、電話口から伝わる親御さんのリアクションが、子供を持つ私としては泣きポイントにもなってきます。

私の子どももプチ芸能活動をしているのですが、チーズのホームページの写真に小さくでも使われたり、雑誌にちょっと載っただけでも、チーズや雑誌をたくさん購入して売上に貢献してしまう身からすると、ブロードウェイミュージカルでの役を手に入れたなんてことになったら、卒倒してしまうだろうな、と思いました。毎日劇場に足を運びたくなることでしょう。

ダンサー側だけでなく、制作側、オリジナル版のキャストの話や彼らのマイケル・ベネットへの想い、そして初演を迎えてから「何かが足りない」と、エンディングを変え、そこから大ヒットしたエピソードなど、1つのステージが作り上げられていくその舞台裏を余すことなく覗くことができます。

本作の監督は、2003年にトニー賞を受賞したブロードウェイミュージカル「ヘアスプレー」のディレクションをしたJames D.Sternと、2013年からNetflixのオリジナルドキュメンタリーの制作チームのディレクターを務めるAdam Del Deoです。

ヘビーで淡々とした展開かな?と思われるかもしれませんが、作品の中では要所要所に舞台で使われている曲がシーンに合わせて流れてくるので、軽快に進んでいきます。たとえば、オーディションのために、会場の外に並んでいるシーンでは「I hope I get it」。「使って!選んで!」と強く候補者たちが願っているシーンでは「Use me, Choose me」。など。

大学受験、会社の面接、お見合い、など人生の中で「選ばれたい!」「選んでもらいたい!」と思う場面はいくつかあると思いますが、ここまで強く「使って!選んで!」と願ったことはそうそうないのではないしょうか?そして、そこで選ばれるか、選ばれないかによって、最終選考まで残っていたとしても、その後の人生が全く変わってくる…。

観終わった後、また何かに挑戦してみたいな、という気持ちにもしてくれる作品です。

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(文:hosohana)

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    ライタープロフィール

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    hosohana

    hosohana 1984年生まれ。2児の母。 映画に携わることだけを考えて就活し、「何らかの形でPixarに関われるのでは!?」と思い某IT企業に勤務しています。至福の時は、ポップコーンとビールを手に映画を観ている時。出身は、映画のロケ支援を市を上げて行っている長野県上田市です。映画以外の趣味は、食器集めとサラダ屋さん巡り。特技は人を痩せさせることです。 好きな国はハワイとニューヨーク。NYに行った時に「アイ・アム・レジェンド」の撮影で道が閉鎖されていたり、Apple Storeで買い物をしようとしたら大好きなウーピー・ゴールドバーグがお会計の列で前にいたり、訪れると何かミラクルが起きます。

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