現代トップの若手が多数出演!幕末青春時代劇『合葬』

合葬 映画 BD DVD

(C)2015 杉浦日向子・MS.HS / 「合葬」製作委員会

現在NHK大河ドラマでは明治維新の雄として知られる西郷隆盛を主人公とする『西郷(せご)どん』が、映画では明治時代初頭を舞台とするバトル・ファンタジー『曇天に笑う』が公開中です。

さらにはパラレルワールドとしての幕末や現代がごった煮となった『銀魂』や、日本刀を擬人化した『刀剣乱舞』などが若者たちの間で大人気を博すなど、このところ幕末明治ものが流行のようです。

今回ご紹介する『合葬』もまた幕末を舞台にしたものですが、こちらは薩摩&長州を主流とする官軍に徹底抗戦した徳川幕府側の彰義隊に入隊した3人の若者の悲劇をリアルに描いた青春時代劇です。

討幕軍に徹底抗戦した彰義隊に
身を投じた若者たちの悲劇の青春

『合葬』は漫画家で江戸風俗研究家としても著名な杉浦日向子が発表し、1984年の第13回日本漫画家協会賞・優秀賞を受賞した同名コミックを映画化したものです。

もともと彰義隊は第15代将軍・徳川慶喜の警護や治安維持を目的に結成されたものでしたが、大政奉還、江戸城無血開城といった幕府解体の流れを受け、いつしか反政府的立場に追いやられてしまっていました。

そんな中、将軍・慶喜に忠誠を誓う秋津極(柳楽優弥)は、友人・福原悌二郎(岡山天音)の妹・砂世(門脇麦)との婚約を破談にしてまで彰義隊に身を投じていきます。

極と悌二郎の幼馴染である吉森征之助(瀬戸康史)も、養子先から追い出され、行く当てのないまま彰義隊に入隊しました。

やがて悌二郎も、彰義隊の存在意義に疑問を持ちつつ、その渦に巻き込まれるかのように彰義隊へ……。

本作は戦闘スペクタクルをメインにするのではなく、あくまでも幕末の熾烈な争いに身を投じた若者たちの悲劇を描いた青春群像劇として松竹撮影所が企画したものです。

それは監督に『カントリーガール』の小林達夫、脚本に『天然コケッコー』の渡辺あやと、現代の息吹を感じさせるに足る青春映画の若手らを多く起用していることからも納得していただけるかと思われます。

多くの出演者がブレイク!
そのきっかけとなった作品

さて、本作は2015年9月26日に公開されていますが、およそ2年半の月日を経て、出演している若手俳優の多くがブレイクしていることからも、先見の明あるキャスティングに注目したいものがあります。

極役の柳楽優弥は『誰も知らない』(04)で第57回(2004年度)カンヌ国際映画祭において史上最年少(当時14歳)かつ日本人で初めて男優賞を受賞。その後、栄光のプレッシャーもあってか伸び悩んでいた時期もありましたが、クリント・イーストウッド監督主演の西部劇を日本でリメイクした『許されざる者』(13)や、自意識過剰な漫画家志望青年に扮したTV『アオイホノオ』(14)などで改めて演技開眼。2016年の『ディストラクション・ベイビーズ』でキネマ旬報やヨコハマ映画祭などの主演男優賞を受賞するに至り、今では日本映画界になくてはならない存在です。

征之助役の瀬戸康史は2005年の第2回D-BOYSオーディションで準グランプリを獲得し、芸能界デビュー。2006年の舞台『ミュージカル テニスの王子様』菊丸役や2008年のTV特撮ヒーロードラマ『仮面ライダーキバ』主演に抜擢されて注目を集め、着実にキャリアを伸ばし続けてきています。特に2017年は『ナラタージュ』『ミックス。』などの映画も印象的で、TVでは『幕末グルメ ブシメシ』シリーズ(17・18)主人公がはまり役(2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』も含めて、彼は幕末ものには縁がありますね)。『海月姫』(18)の女装美青年・蔵之助役も実にはまっていました。

悌二郎役の岡山天音は2009年に芸能界入りし、数多くの映画やドラマに出演してきましたが、2017年の『ポエトリー・エンジェル』で第32回高崎映画祭最優秀新人男優賞を受賞。また同年のNHK朝のTV小説『ひよっこ』で売れない漫画家コンビを好演し、お茶の間でも広く知られる存在となりました。2018年も出会い系サイトで知り合った女(瀬戸さおり/瀬戸康史の妹です)によって奈落の底に突き落とされていく青年を熱演した『愛の病』や、ダブル主演映画『神様の轍―CHECKPOINT OF THE LIFE―』など続々公開されています。

男優だけでなく、女優にもご注目を。門脇麦は2011年にデビューし、裏風俗を題材にした舞台劇を2014年に映画化したR18映画『愛の渦』で注目され、その年のキネマ旬報やヨコハマ映画祭などで新人女優賞を受賞。また同年の『セーラー服と宇宙人(エイリアン)』でTVドラマ初主演し、翌15年のNHK朝のTV小説『まれ』でヒロインの友人を演じ、お茶の間でも知られる存在となっていきました。2016年の映画『二重生活』で単独初主演を果たし、最近でも『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(17)『花筐/HANAGATAMI』(17)『サニー/32』(18)など話題作に出演し続けています。

こうして振り返ってみますと、現在の日本映画界をしょって立つ若手俳優たちが大きく飛躍していく時期、その波に乗るきっかけとしても、『合葬』は大きく位置しているように思えてなりません。

また、そういった目で本作を見直してみると、若手俳優個々の青春の1ページを綴った歴史劇として、違った面白さも見いだせるのではないでしょうか。

[2018年3月23日現在、配信中のサービス]
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(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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