映画コラム

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2021年12月31日

<2021年公開映画TOP10>「あなたのベスト10は?」って訊かれたから私的に書くが、ネタバレすると1位は誰がなんと言おうと『ビーチ・バム』だ

<2021年公開映画TOP10>「あなたのベスト10は?」って訊かれたから私的に書くが、ネタバレすると1位は誰がなんと言おうと『ビーチ・バム』だ

編集部から毎月出されるお題をもとにコラムを書く「月刊シネマズ」。今月のテーマは「2021年、あなたのベスト10」だそうだ。

「あなたの」と言われたので、おそらく私のベスト10を出せば良いのだろう。だが、「何の」ベスト10かは規定されていない。

なので別に「今年食ったからあげクンベスト10」とか、「モデルナを打って辛かったことベスト10」とか、「酔っ払いが発した迷言ベスト10」とかを提出しても問題ない気がする。しかし、今回のようなケースでは奇をてらうと大体滑り倒すので、本サイトが主に映画を取り扱っている点を鑑み「2021年に公開された映画ベスト10」あたりが無難だろう。それでは以下、TOP10でございます。

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【第10位】デカい画面で、デカい音で映画を鑑賞する素晴らしさを思い出させてくれた『DUNE / 砂の惑星』


(C)020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

2021年のコロナ禍により、我々は映画館の休業〜席数を半分にしての営業〜通常営業まで、あらゆる形態の映画館を目撃、あるいは体験した。そして多くの人は、コロナ以前と比べて映画館に行く回数が減ったはずだ。

映画館から足が遠のくと、不思議と行かなくとも平気になるもので、家でNetflixを観ながら「別にこれでもいいよなあ」とつい思ってしまった。なんて人も少なくないだろう。そんななか、「とにかくデカい画面で、そしてデカい音で、映画を観る体験の素晴らしさ」を改めて感じたのが本作『DUNE / 砂の惑星』である。

どこか知らない星の美術館巡りをしているような荘厳な風景が巨大なスクリーンに映し出され、聖書をめくるような手付きでなされていくストーリーテリング。そして「俺が! ハンス! ジマー! です!」と自己紹介をしてくるかのように爆音で叩き込まれるハンス・ジマー印の劇伴……にはちょっと笑ったが、まさしく「映画館で観るべき映画」であり、映像と音を「浴びる」心地よさを教えてくれる。

「ちょっと長すぎ」「冗長」「アクションシーンがもっさり」といった指摘は各所でなされていたものの、長すぎや冗長といった意見に関して述べるならば、原作ではアトレイデス家の引越しすらなかなか終わらないので、史実に基づいているとも言える。にしてもヴィルヌーヴは比較的コンパクトにまとめたと思うし、アクションシーンは『メッセージ』の爆破シーンや『ブレード・ランナー2049』の格闘シーンを持ち出さずとも、もう仕方ない(笑)。

これらはすべて「ヴィルヌーヴの刻印」みたいなものなので、ノレる人はノレるし、ノレない人は無理だろう。いずれにせよ、正当な評価は完結してから、といったところだろうか。

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【第9位】今世紀最高のベネディクト・カンバーバッチを目撃した『パワー・オブ・ザ・ドッグ』


一部場にて11月19日(金)公開
Netflix映画「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
12月1日(水)よりNetflixにて全世界独占配信開始

とにかく「嫌」な映画である。全編を通して漲るような緊張感に溢れ、その中核を成すベネディクト・カンバーバッチの名演は、ドクター・ストレンジよりも遥かにストレンジであり、今やキャリアの頂点だと言ってもどこからも文句は飛んで来ないだろう。

主な登場人物は4人だ。カンバーバッチに加えて、控えめで柔和な弟ジョージをジェシー・プレモンスが、彼に見初められて結婚。カンバーバッチから激しい憎悪を向けられる未亡人ローズにはキルスティン・ダンストが配役されている。ローズの連れ子を演じるコディ・スミット=マクフィーも、3人のハイスキルな演技に押されていない。

通常、脚本と演技、演出などが完璧であるならば、映画は安心して観ていられそうなものだが、本作はとにかくこちらを不穏にさせ続ける。人にはあまり薦められないが、気になる方はぜひご覧になって欲しい。

広大な牧場という開放的な空間と対比された恐ろしいまでの閉塞感は「田舎なんてこんなモンでしょ」レベルではない。鑑賞している方ですら息が詰まるほどの、実質的な空気の重みは、これがジェーン・カンピオンの最新作であると雄弁に語る。

【第8位】若き日のフュリオサはソフィア・ブエナベントゥラが演じるべきだと思わせる『MONOS 猿と呼ばれし者たち』


(C)Stela Cine, Campo, Lemming Film, Pandora, SnowGlobe, Film iVäst, Pando & MutanteCine

「2021年に公開された映画のなかで、最も美しい景色は?」と訊かれたら、迷わず「『MONOS 猿と呼ばれし者たち』の少年・少女兵たちが生活する、雲上の丘である」と答える準備はできているが、未だ誰にも訊かれないので今書いた。

本作の監督はアレハンドロ・ランデス。「アレハンドロ・ランデス」。既に名前が巨匠っぽいが、名前負けせずに美しくも恐ろしい混沌を見事に描き出した。

またミカ・レヴィによる劇伴も美しく、しかも必要最低限だけ使用している点も好印象で、徹底的な抑制を感じる。念の為に書くが「控えめ」とか「地味」とかそういう意味ではない。

狂気に向かって突っ走っていく少年・少女兵は全員で8人いるが、そのなかでもランボー(ソフィア・ブエナベントゥラ)の存在感は素晴らしい。『マッド・マックス 怒りのデスロード』の前日譚である『フュリオサ』が公開予定だが、今からでも遅くはない。アニャ・テイラー=ジョイよりもソフィア・ブエナベントゥラにやらせるべきだ。

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【第7位】思い出補正?でもそんなの関係ないね『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』


(C)カラー

マジで完結したので驚いた。正直ランキングに入れるか、それとも番外として記載するか悩んだのだが、結局ランクインさせた。思い出補正というか、リアルタイムで追いかけた感慨も手伝ってはいるが、極私的ベスト10だからして構わないだろう。
1995年から2021年までのおよそ26年間、26年もあれば人間だいぶ変わるもので、私の好きなキャラも綾波→アスカ→マリへと26年かけて変遷していった。

こと本作のマリは凄まじく、なんかもう「ありがとう」としか言えない。男は誰しも、駅のホームでマリのような女性の手引きにより、世界が広がるのを切望しているのだ。だが、現実の世界にマリは登場しない。この事実は旧劇で実写映像を観せられたときよりも結構心に来る。あと、1995年時点では碇シンジと同じくらいの年齢だったのに、もう碇ゲンドウとの方が年が近い事実も、結構心に来る。

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