絶好調の黒木華、飛躍のきっかけとなった『小さいおうち』とは?

(C)2014「小さいおうち」製作委員会 

このところ黒木華の出演映画が毎月のように公開されています。

7月のアニメ映画『未来のミライ』声の出演を皮切りに、9月に『散り椿』、10月に『億男』と『日日是好日』、そして11月には『ビブリア古書堂の事件簿』が、さらには12月に『来る』が……。

これにNHK大河ドラマ『西郷どん』にNTV『獣になれない私たち』と、現在オンエア中のTVドラマまで入れますと、もはや彼女の姿を見ない日のほうが少ないといっても過言ではないほど!

今回は、そんな女優として絶好調の黒木華の出世作『小さいおうち』をご紹介したいと思います!

戦争の足音と不倫が
もたらすものとは?

『小さいおうち』は2014年度の山田洋次監督作品。

第143回直木賞を受賞した中島京子の同名小説を映画化したものです。

舞台はまず現代、大叔母のタキ(倍賞千恵子)が亡くなり、大学生の健史(妻夫木聡)らが遺品を整理していたら、その中に赤い屋根の家の絵と、それからまもなくして健史あての大学ノートが見つかりました。

その大学ノートの中に記されていたもの、それは彼女の若き日の自叙伝であり、戦争の足音が迫ってくる昭和初期、上京して奉公していたおもちゃ会社の常務・平井家の妻・時子(松たか子)のことが記されていました。

ノートによると、平井家はモダンで赤い屋根瓦の小さい家だったようです。

やがて時子は、会社に新しく入った芸大卒の青年・板倉(吉岡秀隆)と意気投合していくうちに、いつしかただならぬ関係へ……。

本作は山田洋次監督には珍しく、不倫という背徳の行為をモチーフに展開されていきますが、それと戦争の脅威が重なり合うことでダーク・ファンタジーともいうべき一種不可思議な世界観に包まれていくのが妙味の作品です。

そして、板倉にのめりこんでいく時子の秘密を知り、情熱を目の当たりにして戸惑う若き日のタキを演じているのが黒木華なのでした。

昭和と平成を対比させながら
誘う未来への希望

およそ半世紀以上も隔たる時間を行き来しながら、映画は昭和の悲劇と同時に、これからの未来への希望を示唆していきます。

そこに山田監督の真の狙いがあったともいえるでしょう。

そのメッセージは公開当時の2014年よりも、まもなく平成の世も終わりに近づいてきている今のほうがより痛切に感じられるのではないかとも思われます。

純粋無垢であるがゆえに、かつて時子らに対して取ったタキの行動と後悔を、昭和の黒木華が、平成の倍賞千恵子が、それぞれ見事に体現しています。

そして黒木華は、本作で第64回ベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞し、女優として一気に大きく飛躍を遂げ、現在の隆盛へ至るのでした。

ここ最近の彼女の活躍を見守りつつ、ぜひその原点ともいえる『小さいおうち』もふりかえっていただけたら幸いです。

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(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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