映画『事故物件』さながら、家憑き恐怖の不穏なイメージを具現化した『恐怖ノ黒洋館』

 (C)2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会 

ネットの発達というものは恐ろしいくらいに便利なもので、今では自殺や殺人、孤独死などが起きた事故物件が自分の家の近所にどのくらいあるかを検索することもできてしまいます。

私も一度試しにやってみたところ、半径100メートル圏内で数件出てきて「ほえ~」となったりもしたのですが、そんな事故物件にTVバラエティ番組の企画としてわざわざ住むことになったお笑い芸人の運命を描く亀梨哲也主演の映画『事故物件 恐い間取り』が8月28日より公開となります。

とかく“家”をめぐる恐怖というものは映画の大好物ではありまして、古今東西さまざまな家憑きホラー映画が作られたりしています。

今回はそんな中の1本、2012年度の作品『恐怖ノ黒洋館』をご紹介。

何と本作の監督ロドリゴ・グディーニョの実体験に基づいた映画化だそうで!?

母親の遺産=古屋敷を受け継いだ
息子の不穏な体験

『恐怖ノ黒洋館』のストーリーは、骨董品のコレクターであるレオン(アーロン・プール)が、別居中に死別した母親(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)の遺産として巨大な屋敷を受け継ぐことになるところから始まります(冒頭に何とも不可思議で観念的な母親のモノローグがついています)。

不気味な静けさに包まれた屋敷内を散策していくと、そこには奇妙な骨とう品などのオブジェが数多く並べられていて、そこが実は不穏なカルト新興宗教団体の聖地であったことがわかってきます。

やがてレオンは、母親の霊魂からのメッセージを感知し始めるようになっていきます。

さらに、屋敷内で起きるさまざまな超常現象を目の当たりにしていくレオンは、母親の信仰の奥には何か恐ろしい事実が潜んでいるのではないかと確信するようになっていくのですが……。

不穏なムードを体感させる
リアルな恐怖

正直なところ、ショッカー演出で見る者をキャアキャア言わせる類いの作品ではありません。

もちろんそういった描写が皆無なわけではないのですが、総体的には屋敷内の不穏なムードを体感させるための演出が施されています。

たとえば幽霊が出る噂の古屋敷などを訪れたことのある方なら理解できるかと思われますが、いざ行ってみて何かが起きそうな気配はするけど、実際に何かが起きるわけではない。

しかし、妙に誰かから見つめられているかのような……。

本作はそんな不気味な雰囲気をかなりのところまで徹底して保ちつつ、静謐に展開されていきます。

屋敷内のオブジェなども相まって、美しくも不穏な空気が映像からクールに発散されまくっており、そういった要素を堪能できるか否かで評価はかなり変わっていくことでしょう。

登場するキャラクターの数も少なく、上映時間も81分とスリムに仕立てられてはいますが、その奥に細む広大な恐怖世界の入り口に立たされているかのような忸怩たる感覚に包まれつつ、恐いもの見たさで「いっそ中に飛び込んでみようか!」などと思ってしまう瞬間を“闇ノモノ”たちは決して見逃さない……そんな気分に浸れてしまう作品です。

(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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