RADWIMPS野田洋次郎×杉咲花、今を時めくコンビの出世作『トイレのピエタ』

トイレのピエタ 野田洋次郎 RADWIMPS

(C)2015「トイレのピエタ」製作委員会

公開されてから数年経って、振り返ると実はすごいキャスティングだったなと驚かされる作品がときに存在しますが、今回ご紹介する『トイレのピエタ』(15)もその1本です。

先日DVDが発売された『君の名は。』。その主題歌と音楽を担当したのはRADWIMPS。そのボーカル野田洋次郎と現在公開中の『メアリと魔女の花』で主役の声優を務める杉咲花が主演する感動の青春映画なのでした!

ちなみに野田洋次郎はソロプロジェクト「illion」として、明日より公開の『東京喰種 トーキョーグール』の主題歌も務めています。

余命3か月の青年と女子高生の
不可思議な交流

映画『トイレのピエタ』のストーリーは、美大卒の若いフリーター宏がある日突然倒れ、ガンで余命3か月を宣告されます。そんな折、彼はふとしたことから「今から一緒に死んじゃおうか」と誘うふてぶてしい女子高生の真衣と出会い、翻弄されつつもいつしか人生の目的を見出していきます。

宏に扮するのが、人気バンドRADWIPSのヴォーカル&ギターを担当している野田洋次郎。これが俳優デビュー作となりましたが、脚本を読んでぜひやってみたいという気持ちにさせられてのオファー快諾だったとのこと。

結果として彼は本作で日本アカデミー賞新人賞やスポニチグランプリ新人賞を受賞。

しかし、もっともすごかったのは翌16年、RADWIMPSが音楽を担当したアニメーション映画『君の名は。』が興収200億円を超えるメガヒットとなり、彼らが歌う『前々前世』などの歌曲も大ヒット。何やら本作の栄誉がそのまま勢いとなって結びついたもののように思えてなりません。

杉咲花も本作でヨコハマ映画祭最優秀新人賞やTAMA映画賞最優秀新進女優賞などを受賞。

そして翌16年『湯を沸かすほど熱い愛』で彼女は日本アカデミー賞最優秀助演女優賞など、その年の助演女優賞をほとんど総なめするといった飛躍を示し、一気にトップスターの座に躍り出ました。

正直『トイレのピエタ』を初めて見たときも、この二人、実に良いコンビネーションのキャスティングだなと感嘆させらされたものですが、そういったキャリアの相乗効果として現在の地位があるのだなと、改めて唸らされます。

世に出るべき人は、ちゃんと出るということですね。

そんな二人の魅力を大いに引き出したのが、俳優出身で、11年に『ピュ~ぴる』を初監督して以来、着実に映画監督としての道を邁進してきた松永大司。

本作のみずみずしくも力みなぎった演出で、彼もまた日本映画監督協会新人賞や新藤兼人銀賞などの新人監督賞を多数受賞しました。

天才漫画家の最期のアイデアを
基に作られた作品

そんな主演男女&監督、3人の新人を大いにステップアップさせた本作、もともとは漫画家の手塚治虫が晩年の病床で記していた日記の最後に記されていたアイデア・メモを原案に、松永監督がオリジナル・ストーリーを構築したものでした。

それはがんの宣告を受けた男が、ミケランジェロさながらに入院室のトイレに天井画を描き出すというもので、主人公のイメージは手塚本人であったと思われますが、これを基に本作はより自由な発想をもって作られ、結果として独創的な青春恋愛映画として映えることにもなったのです。

(ちなみに手塚の実子・手塚眞も、そのメモを原案にした短編アニメ『クミとチューリップ』を監督していますが、やはりその内容は大きく異なります)

天才漫画家の最期のアイデアが、新たなる次代のクリエイターやアーティストを発掘し、育成していく。何とも素晴らしきタスキの渡し方ではないでしょうか。

映画『トイレのピエタ』は2015年6月6日に公開されましたが、同時にロッテルダム(オランダ)や全州(韓国)、台北(台湾)、シュリンゲル(ドイツ)、オーストラリアといった世界各地の国際映画祭に正式出品され、そのみずみずしい感性が大いに評価されました。

人の命と愛、そして人生の目的を問う行為に国の別などまったく関係ないということの証左でしょう。

P.S.

本作には大竹しのぶと宮沢りえが出演していますが、ふたりともRADWIMPSの大ファンだったようで、またその直後に宮沢と杉咲が『湯を沸かすほど熱い愛』で親子役を演じることになるのですから、縁というのはつくづく面白いものだなと思いますね。

[この映画を見れる動画配信サイトはこちら!](2017年7月28日現在配信中)
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(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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