巨匠・クリント・イーストウッドの『15時17分、パリ行き』がいかに素晴らしいか

■橋本淳の「おこがまシネマ」

どうも、橋本淳でございます。
6回目の今回は、日本公開初日から日数は経ってしまいましたが、傑作なこちらを、おこがましくも紹介していこうかなと思います。

『15時17分、パリ行き』

はい。

巨匠、クリント・イーストウッド監督作品ですね。

もう殆どの方は観てるだろうと思いますが、まだ未見の方(え? そんな人いるの?)もいると思うので、紹介を。

イーストウッド監督、ということで、僕も公開してすぐに映画館に駆け込みました。

この監督は一体、何作名作を生み出すのでしょうか。傑作を作ったと思ったら、その1年後にはまた傑作を、と、なんともハイペースに撮り続けているにも関わらず、クオリティが落ちない、それどころか、どんどん違う手法を試していて、そのチャレンジ精神に脱帽です。すごい米寿です。

2015年に実際起きた、ヨーロッパでの無差別テロ事件を題材にした物語。

8月21日、オランダとフランスを結ぶ、高速国際列車タリスの車内で、テロリストに立ち向かったのは、幼少期からの仲で、ヨーロッパ旅行をしていた3人の若者だった。

主人公の3人、スペンサー・ストーン、アレク・スカラトス、アンソニー・サドラーという若者たち。演じたのは、、、まさかその実際に起こった事件の当事者。

そうです、本人が本人を演じているのです。

イーストウッド監督が映画化するにあたり、この3人に当時の話を伺っているうちに、彼らの幼少期からの話が興味深く、感銘を受けて、彼らの半生を描いてみたくなった。さらに、本人たちに演じてもらうというアイデアになっていったようです。

しっかし、この3人の芝居が素晴らしいです。

3人とももちろん演技をしたことは無かったのですが、自然な佇いは見事です。

監督の早撮りのテクニックなのか、3人一緒だったから、あの自然なグルーヴ感になったのか、現場を見てみたかったですね。

インタビューによると、監督がいろんな細かいところにまで気を配り、僕ら素人に緊張させないようにしてくれた、と語っていたので、やはり監督の手腕なのでしょうか。

3人以外にも、本人役で出演している方が何名かいます。(3人以外にも!? と僕は鑑賞後に知ったので、驚きでした)

テロリストに銃で撃たれてしまう人も本人だったとは驚きです。それ故にあのリアリティだったと、納得です。

演じるのは本人、さらには列車の中も自然光で、着ている衣装など、当時と全く同じものを再現。

事件を経験した当人達も、「あの時のまんまで、衝撃的な記憶が蘇った」「あのシーンはきつかった、なんども撮影を止めてもらい、気持ちを落ち着かせていた」と、言うほどの再現率。

入念な取材の上に構築し、さらには役者に寄り添い、現場を仕切りきる監督の力ですね。本当に素晴らしいです。

予告編を観て映画館に行き、本編を観ると、予想を裏切られる人が多かったのではないでしょうか?(僕だけでしょうか?)

実際の事件を題材にした、列車内で起きたテロから多くの人々を救った3人の英雄を描き、どう解決したのか、というものかな、と安直な想像をしていました。(愚かですね。あのイーストウッドがそんなことするはずないのに)

3人の幼少期から描いていくのです。

出会いであったり、学校では落ちこぼれ、というか、すぐに問題ありとして校長室に呼ばれる姿など。後に、スペンサーは当てもない生活をしているところから、とつぜん夢であった軍に入隊するものの、志願していた部隊とは別の部へ配属されます。そこでの訓練でも失敗ばかり、落第生の烙印を押されてしまう。。。

と言った具合に、やたらと3人の半生が長いので(悪い意味でなく、とてもいいシーンなのです)、観ているときは、あれ? これ尺90分だけど、事件のこと全然やらないな、、どう終わらせるんだろうと勝手に焦っていました。(勝手に)

観終わる頃には、そんな雑念は彼方に飛んでいき、どっぷり鑑賞に浸っていました。

運命というもの、全て繋がっていて、決して無駄な瞬間、無駄なことは、無いと言われているようで、僕はなんだか救われたような浄化されたような感覚に捉われました。

イーストウッド監督の優しさなのか、厳しさなのか、唯一無二な視点で描かれた今作を、是非多くの方に。

では、今回も、おこがましくも紹介させていただきました。

(文:橋本淳)

■このライターの記事をもっと読む

関連記事

『15時17分、パリ行き』でなぜ犯人は描かれなかったのか?
クリント・イーストウッドにとって「演技」とは?『15時17分、パリ行き』インタビュー到着
クリント・イーストウッドが偉大なる映画スターであることをそろそろみんなで語ろう!
『ハドソン川の奇跡』──イーストウッドの新たな傑作とジャズ音楽が意図するもの
神木隆之介に「潰してやる!」と橋本淳が宣言!?ドラマ「刑事ゆがみ」先輩後輩対談


    ライタープロフィール

    橋本淳

    橋本淳

    2004年(平成16年)テレビ『WATER BOYS2』で本格的に芸能活動を開始。2005年(平成17年)に『魔法戦隊マジレンジャー』の小津 魁/マジレッド役に抜擢される。 以後、テレビ『連続テレビ小説 ちりとてちん』『大河ドラマ 軍師官兵衛』『PATグランパ!』『悦ちゃん』、『CHASE』、『刑事ゆがみ』など。映画『婿入金魚』、『At the terrace テラスにて』、舞台『黒いハンカチーフ』『書く女』『月・こうこう、風・そうそう』『クレシダ』『キネマと恋人』『君が人生の時』城山羊の会『相談者たち』など多数の作品に出演。 シネマズby松竹では【おこがまシネマ】を第2、4水曜に隔週連載。「烏滸がましくも、まだまだ青臭さの抜けない、橋本淳という役者が、映画を紹介するページです。嗚呼、烏滸がましや烏滸がましや」

    ピックアップ

    関連記事

    新着記事

    WP Facebook Auto Publish Powered By : XYZScripts.com