秋にふさわしいロマンティック・ファンタジー 『アデライン 100年目の恋』

■「キネマニア共和国」

ファンタジーにもいろいろありますが、架空ではない現実の世界の中で、ちょっとひとひねりすることで、実際にはあり得ないだろうけどロマンティックかつ切ないドラマを紡ぎだすことは大いに可能です……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街 vol.42》

『アデライン 100年目の恋』もそういった愛のファンタジーです。
アデライン、100年目の恋

ある日突然、齢をとらなくなった
ヒロインの意外なまでの苦悩

本作は、ある奇妙な出来事がきっかけで、齢をとらなくなってしまったヒロイン、アデラインの物語です。

現在は100歳を越えているにも関わらず、見た目は29歳のまま。実の娘がもう老人となっているのに、ふたり並ぶと100人が100人ともアデラインを娘と思ってしまうことでしょう。

“永遠の若さ”、これぞ男女を問わず、思わず憧れてしまう神秘的モチーフではありますが、本作を見ると意外や意外、永遠に変わらず生き続けることがいかにシビアであるか、その現実を見せつけられてしまいます。

アデラインは10年おきに名前も住所も変え、人間関係もそのつど断ち切って、ひっそりと生き続けています。そうしないと彼女の存在自体が危うくなるからです。

ひどい物言いをすると、バケモノ扱いされて迫害されるか、国家に軟禁されて実験対象になってしまうかもしれません。

彼女の心の友は愛犬だけですが、彼らもまた確実に命絶えていきます。一体、彼女は何匹の友の最期を看取ってきたのでしょう?

また、彼女がいかに誰かを愛そうとも、相手は確実に年老いてくのに対し、自分はそのままであることの矛盾と苦悩……。

しかし、常に若く美貌を讃えた彼女に対し、男たちは競うようにモーションをかけようとしてきますし、彼女もまたふっとその誘いに乗ってしまうこともあります。

いけないと思いつつ、またも恋に落ちてしまったアデラインは、彼の父親を紹介されて愕然となります。

その父親は、かつての恋人だったのです……。
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成功の大きな要因でもあるキャステイング

本来、不老不死を扱ったものは、手塚治虫の代表作『火の鳥』を例に出すまでもなく、人間の驕りなどを戒めつつ、限りある命の大切さを説くものであったり、それこそ吸血鬼ドラキュラのように永遠に生き続けるモンスター・ホラーものの要素として取り上げられがちですが、本作は前者のパターンを踏襲しつつも、そこに時空を超えたファンタジック・ラブストーリー的テイストを織り交ぜることで、ロマンティシズムに満ちあふれた佳作となり得ています。

これにはキャスティングの成功も大きいでしょう。

まずは、アデラインを演じるのは『恋するジーンズと16歳の夏』(08)や『ザ・タウン』(10)、そしてTV『ゴシップガール』(07~12)で絶大な人気を得たブレイク・ライヴリー。エレガントな装いの奥にクラシカルな佇まいを忍ばせる存在感は、この役に不可欠なものともいえ、彼女が演じなければここまでの魅力を醸し出すことは不可能だったでしょう。
アデライン、100年目の恋
アデラインを愛する若者に『ブラックブック』(06)『わたしに会うまでの1600キロ』(14)などのオランダ人俳優ミキール・ハースマン。最近ではTVシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』(15)でもおなじみの存在です。

そして彼の父親に扮するのは名優ハリソン・フォード!
かつての『スター・ウォーズ』サーガのハン・ソロ(新作エピソード7にも出演!)や、インディ・ジョーンズ・シリーズ(何と最近、スピルバーグ監督が第5弾を彼主演で制作すると示唆⁉)をリアルタイムで接してきた側すると、老いてなおクラシカルな佇まいが健在なことに感嘆するとともに、かつて彼が若き日に熱演した戦時下を舞台にしたラブ・ストーリー『ハノーバー・ストリート 哀愁の街かど』(79)を彷彿させるロマンティシズムの発露に、かつて彼に熱狂していたを女性ファンの気持ちが今さらながらに理解できたような想いでもあります。
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また、アデラインの娘に扮するエレン・バースティンは、『アリスの恋』(74)のヒロインでアカデミー賞主演女優賞を受賞し、また『エクソシスト』(73)では悪魔に憑かれる娘の母親役で名を馳せるなど、70年代ハリウッド映画を語る上で絶対に避けて通れない名女優。最近では『インターステラー』(14)にも出演していましたが、彼女の名前をクレジットで見かけたら、その映画は見ておいて損はないとまで断言できる名女優です。

監督のリー・トランド・クリーガーは1983年生まれ、長編第3作target=_blank>『セレステ∞ジェシー』(12)のヒットで注目された若手監督ですが、長編第4作となる本作では、ノスタルジックかつロマンティックな世界観を醸し出しながら、歳をとることのできないヒロインの苦悩なども見事に描出しています。

この秋にふさわしいロマンティックかつファンタジックなラブストーリー。その顛末も含めて、ぜひご注目のほどを。

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(文・増當竜也)

映画『アデライン』は2015年10月17日(土)より全国ロードショー!
公式サイト http://adaline100.jp/

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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