セックス依存症の妻に翻弄される夫を演じる苦悩とは?『雨が降ると君は優しい』玉山鉄二インタビュー

2017年9月16日(土)より配信スタートのHuluオリジナル連続ドラマ『雨が降ると君は優しい』は、野島伸司が「セックス依存症」を題材にした話題作。

セックス依存症(性嗜好障害の1つ)に苦しむ妻を佐々木希が、そしてその妻を愛するがゆえに悩む夫を玉山鉄二が演じています。

シネマズ by 松竹では、夫・立木信夫(たちきのぶお)を演じる玉山鉄二さんにインタビューを実施。難役に挑戦する思いや葛藤、見どころなどをお聞きしました。

【作品情報】
心から愛し合いながらも“妻のセックス依存症性(性嗜好障害の1つ)”という究極の試練を与えられた新婚夫婦、立木信夫(玉山鉄二)と立木彩(佐々木希)を中心に、“心の闇を抱えた男女らの愛と憎しみが交錯する群像劇”を切なく鋭く描く。

── 本作は「セックス依存症」がテーマなだけに、演じられる役柄はすごく難しいものだと思います。ご自身でもテーマに対し深く理解できないところがあったとコメントされておりましたが、それはどのようにクリアしたのでしょうか?

玉山鉄二(以下、玉山):野島さんやプロデューサーさんともたくさんお話をさせて頂きましたが、クランクインまでに完璧に埋められなくて、ある種、恐怖を持って現場に臨みました。でも、今では自分が信夫を体感したからこそ、実際に演じなきゃわからない部分があったんだと気がつきました。

結局、僕は今まで、台本を読んだりいろんな人の話を聞いたりと、広く浅く穴を掘っていただけで、同じところをずっと掘る作業をしていなかったんだと。だから自分が信夫を体現することで、言葉では説明できないけれど、自然といろんな表現が出てきたり、「あれ?」って思うことがたくさん出てきたり、そして希ちゃんのお芝居をみて、いろいろ引き出されたり。

今となっては、次の日の台本を覚えている時が楽しみなんです。どういう信夫が出てくるのかなと。苦しいお芝居が多いけれど、役者としては居心地がいいというか、ちゃんと信夫を体感できてるという思いが今はすごくあります。

── 信夫を体感できている点でお聞かせください。編集者をしている信夫は良い原稿をもらうために作家からどんな酷い扱いを受けても黙って耐えていますが、そのモチベーションはどこから来ていると思われますか?

玉山:多分、信夫のなかでは、セオリー的な行動をとってしまう人間を、くだらないと思っているところがあります。自分で自分のことをコントロールできている快感みたいなものが彼にはあると思うんです。それをコントロールできない人間を、いわゆる陳腐な人間という解釈をしているような気がしていて。

だから、浮気話に興味を持ったりとか、些細な出来事で誰かが揉めたりとかいうことを、どこかで馬鹿にしている。そういった男が、妻の病気によって翻弄される。それくらいの境地の人間が、妻の病気、妻の存在で翻弄されて、ぐちゃぐちゃになっていき、砂のように崩れていってしまうのが、このドラマの面白さだと感じています。

── 佐々木希さんとの共演ではどんなことを感じてますか?

玉山:1番びっくりしたのは、涙を出すまでのストロークの短さです(笑)。多分この役を体の中に入れることができているんだなって。彼女は本当に、健気に役に向き合って、自分と役を近づけようという様がすごく愛おしく感じることもあります。やっぱりあのような役だから、向き合うのも怖いし、近づけるのもの怖いと思うんですよ。それを臆することなく、演じる姿が本当に素晴らしいと思っています。

── そんな佐々木希さんが演じる、彩という女性はあることがきっかけでセックスに対して抗えなくなるわけですが、玉山さんご自身は、何かがきっかけで誰にも邪魔されたくないと感じるようなことはありますか?

玉山:ちょっと違うかもしれませんが、台本を読んでいるときは誰にも邪魔されたくないですね。子どもが入って来られないように部屋の鍵を閉めます。僕はあまり集中力がないので、ノイズキャンセリングイヤホンも使ったりします。

── 自分から集中するためのスイッチを入れにいくということでしょうか?

玉山:僕自身、すごくわがままだなって思うのですが、「今やればいい」と思うことができないんですよね。セリフを覚えるとか、台本を読むこととか、読みたいと思う瞬間を待っちゃうんですよ(笑)。

それってなんか自分の中で分析すると、そういうタイミングを待って、そういうときじゃないと、いろんな物事が浮かびこんできたり、セリフも入ってこないんじゃないかと思ってるというか…。

── わかる気がします。でも、モチベーションが高まる瞬間が来ないかもしれない恐怖はないですか?

玉山:あります! 僕自身、しっかり準備をするタイプなので、タイミングが来なくて、焦って移動時間に台本を見ることもありますよ、やっぱり(笑)。

── 本作のタイトル『雨が降ると君は優しい』で思い出したのですが、以前インタビューで「大事なシーンの前日は、雨が降ってくれないかな」と思うほどナーバスになるとお答えになられていましたが、今はどうですか?

玉山:今でもあまり変わっていないですね。キャリアを積んでも、若い時の自分と比べて臆病にはなっているところもありますから。でも、ダメな自分と向き合える勇気は持てている部分もあります。

それを考えた上で、今の自分に何ができて、何が必要かとか、ロジックで説明するのは難しいですけど、過度に自分に期待をしなくなったところもあります。

僕は、こういう取材とかがなければ自分の作品を見ないし、撮影中のチェックも基本的にはしません。振り返って、その作品にいい影響を与えられるのであれば見ますが、今の僕にとってはあまりいい影響が与えられないんだと思っています。

── 見直すことで良い結果につながらないということですか?

そうですね。見直したとして、どこかで挽回しなきゃいけない思いだったり、悲しみが足りないからどこかで足さなきゃいけなかったり、それを感じたとしても、もはやそれは僕の仕事ではなくて監督のお仕事なので。

僕は僕ができることに専念しなくてはいけないというか、もしかしたら潔くなったのかもしれません。そういう雑念があると、その役になれないというか。

── 逆に、その役になってしまえばいいと?

役になってしまえば、僕がどういう表現をしようが、役のフィルターから出てきたものは、もうそういう答えだっていう風に、思うようにしてます。

── 最後に、本作はHuluでの配信ですが、玉山さんはネット配信についてはどう思われますか?

やはり自分からコンテンツを選んで、見たいものを見るという作業が一番大きなメリットだと思いますし、子どもにもそうさせています。見たいものを見なさいと。

流れているものを漠然と見るんじゃなくて、見たいと思うものを選んで見なさいと約束をしていて、自分が見たいのか見たくないのかをはっきりさせています。垂れ流しのものをただ見る、それが頭の片隅に残ることが非常に危ないというか、よくないことだと思っています。自分が必要とする情報を自分から掴みにいくというのは、すごく大事なことですから。

また、オンデマンドのオリジナルコンテンツは、地上波とは違う制約の中で物作りができるので、思い切ったものが作れますし、大胆な表現ができることがメリットだと思っています。

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(取材・文・撮影:ゆうせい)

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