『エイミー、エイミー、エイミー!』が説く、恋愛なしの一夜限りの関係ってありorなし?

エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方 ポスター

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2015年度のTIME誌で「世界で最も影響力のある100人」のひとりに選出された全米人気コメディエンヌ、エイミー・シューマー。

本作は、その選出のきっかけにもなった彼女主演の大ヒット・ロマンティック・コメディで、第73回ゴールデングローブ賞(ミュージカル・コメディ部門)作品賞を受賞。

エイミー・シューマーも主演女優賞候補になった快作なのですが……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.211》

そのモチーフは、本作のサブタイトルからも一目瞭然、「こじらせ女子のシングルライフからの抜け出し方」なのでした!

こじらせ女子エイミーのシングルライフとは?

『エイミー、エイミー、エイミー!こじらせシングルライフの抜け出し方』は、幼い頃に離婚した父親から「一夫一妻制なんて悪だ!」と教えられて大人になったヒロイン、、エイミーの物語です。

エイミーは父親の言葉がトラウマになったかのように、恋愛なんか無駄だと言わんばかりに、男性とは一夜限りの関係のみを求めるといった割り切り人生を送り続けています。

◎良い仕事と良いアパート

◎「思う」より「思われている」と思える男をキープ

◎絶対に電話番号は教えない。

◎一夜の関係といえども、決してお泊りはしない

そんなモットーの許で日々を過ごすエイミーではありますが、正直なところそういった生活にマンネリも感じ始めているようで、そんな折、彼女は仕事でスポーツ外科医のアーロンの記事を執筆することになり、彼との出会いをきっかけに自分自身をもう一度見つめ直してみようとしますが……。

こういった現代女性のリアルな生き方をコミカル・モードで描くことに関して、アメリカ映画の右に出るものはありませんが、本作も例外ではなく、セクシーかつコミカルな言動の数々でクスクスとした笑いを取りながらも、一方ではスマートかつオシャレなタッチでヒロインの悩みや迷いにそっと寄り添ってくれています。

エイミー・シューマーはスタンダップコメディアンとして、下ネタも含むプライベートなトーク・ライヴで人気を得た逸材ですが、そのネタの中にはかなりダークでシリアスなものもあるのだとか。そういった腹をくくった姿勢が評価され、また彼女自身のコミカルな中にもどこか哀愁漂う個性が醸し出されているのでしょう。

エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方 メイン

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ファンタスティックな顔触れで女性のリアルを好もしく描出する好編

共演者もユニークで、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)BB-8などの声優としても活躍するビル・ヘイダー。『ナルニア国物語』シリーズ(05~10)や『ドクター・ストレンジ』(16)のティルダ・スウィントン、そして『ルーム』でアカデミー賞を受賞しているけど、今年のエンタメを代表する傑作『キングコング:髑髏島の巨神』にもヒロイン役で出演しているブリー・ラーソンと、妙にファンタスティック映画とゆかりのある面々が今回集結し、ある意味リアルなシングルライフ・ストーリーに彩りを添えているのが、どことなくユニークではあります。

あと、今回はカメオ出演も多く、その中にはハリー・ポッター・シリーズでおなじみのあの人や、かつて『ウォー・ゲーム』(83)に主演した彼、『少年は残酷な弓を射る』(11)の妖艶な美少年、『いとこのビニー』(92)でアカデミー賞助演女優賞を受賞した彼女、などなどがヒョコヒョコと登場してくるので、映画ファンは画面から目を離せません。
(宣伝サイドがなぜか各々の名前を銘記していないので、こちらもあえて記すのは避けたいと思います)

スポーツ界からも元プロテニス選手クリス・エバートやアメフトのトニー・ロモなども出演しています。

監督は『40歳の童貞男』(05)や『プライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(11)などのジャド・アパトー。なかなかユニークな邦題がつけられることの多い彼の作品群ですが、おバカな笑いの数々の中に、そこはかとなくペーソスが漂うタッチは本作でも健在で、もう若くはないキャリアウーマンの心の停滞とそこからの脱却を洒脱なセンスで描出していきます。

邦題の『エイミー、エイミー、エイミー!』とは、こじらせ女子としてのエイミー、その実真面目なエイミー、そしてエイミー・シューマー本人のことを指しているのでしょう。

ちなみに原題“TRAINWRECK”は、「大惨事」や「大失敗」「メチャクチャな状態」といった意味のスラングです。なるほど、これはやはり彼女にとっての「大惨事」なのでしょうね。

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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