『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』が仕掛ける史上最大のカンニング!

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安室奈美恵が引退してしまいましたね。

それこそ少女時代のSUPERMONKEY’Sや『ポンキッキーズ』(94~97)のシスター・ラビッツあたりから、またたくまに歌姫へと成長していった彼女をずっと目の当たりにしてきた身としては何だか感無量ではありますが、一方で映画ファンの立場からすると彼女がヒロインを務めた映画『That’s カンニング!史上最大の作戦?』(96)をふと思い出したりもします。

こちらは取り壊しが決まった大学寮の存亡をかけて、寮生たちが試験でオールAを取るべくカンニングを仕掛けていく青春ラブ・コメディの佳作でした(ちなみに主演は山口達也でした……)。

カンニングと聞くと、私のような昭和世代は週刊少年サンデーに連載されていた聖日出夫の『試験(テスト)あらし』なんてカンニング漫画の快作を思い出したりもします(およそありえないカンニング・テクニックを毎週楽しみにしていたものでした)。

まあ、そんなことはともかく、安室奈美恵引退からおよそ1週間後の9月22日より、カンニングを題材にした映画『バッド・ジーニアス危険な天才たち』が公開されますが……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街334》

この作品はタイ映画。つまりタイの熾烈な受験戦争を背景に高校生たちがスリリングなカンニング・テクニックを披露するピカレスク青春映画なのです!

カンニング・ビジネスに手を染めていく
天才少女の運命やいかに!

『バッドジーニアス―危険な天才たち―』の主人公は、小学生のころからずっと成績優秀で天才的頭脳を持つ女子高生リン(チュティモン・ジャジャルーンスックジン)。

特待奨学生として進学校に転入したリンは、あるテストの際、友人のグレース(イッサヤー・ホースワン)にこっそり答えを教えて彼女の危機を救いますが、そのことを聞きつけたグレースの彼氏で金持ちの息子パット(ティーラドン・スパパンピンヨー)は、リンにカンニング・ビジネスを持ちかけました。

つまりテストの答えをみんなに教えて、報酬をいただく……。

リンはピアノを弾くように指の動きを暗号化する“ピアノレッスン方式”を生み出すことでそのビジネスを成し遂げ、多くの生徒たちから賞賛されるようになり、お金も貯まっていきます。

しかしリン同様奨学金をもらって大学進学を目指す苦学生のバンク(チャーノン・サンティナトーンクン)が、あるときテスト中のカンニング行為を察知してしまい……。

本作はカンニングそのもののユニークなテクニックを披露しながら、危険なビジネスに手を覚めたリンとその仲間たちのスリリングな青春群像劇として屹立させた作品です。

以前フランスで『ザ・カンニング[IQ=0]』(80)というオバカ・コメディ映画がありましたが(シリーズ化もされましたね)、どちらかといえばコミカルに扱われることの多いカンニングというモチーフを、ここでは熱く青くイキのよいピカレスク・ロマンとして描いているのが新味といえるでしょう。

イメージとしては、お宝ならぬテストの答えを盗む『オーシャンズ』シリーズのタイ高校生版といったところでしょうか。

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国や地域の相違を乗り越える
エンタテインメントの力

サスペンス映画としての側面を持つ本作、あまりストーリーを細かく記す愚は避けたいところですが、ドラマそのものはやがてリンとバンクの関係性に絞られていきます。

そしてクライマックスとなるのはアメリカの大学に留学するために世界各国で行われる大学統一入試〈STIC〉。

リンたちはこの難関にどう立ち向かっていくのか、そしてその合否は?

結果は映画を見ていただくとして、日本でも徐々に公開されるようになってきたタイなどのアジア映画、かなりエンタテインメント性を兼ね備えたものが多く見られるようになり、個人的には嬉しい限り。

世界各国さまざまな文化や思想などを理解し、ヘイト的な問題なども含めた国同士の諍いを乗り越えていくのに、映画ほどふさわしいものはありません。

本作にしても、かつての日本を彷彿させる受験戦争の実態や、教師や学校の権威主義的姿勢の中、どこの国でも変わることのない思春期ならではの繊細な輝きを帯びた若者たちの熱気と息吹に心打たれるものがあります。

タイの若手俳優たちの存在感も抜群で、またそれぞれが役に応じた魅力を放っているあたりも特筆しておくべきでしょう。

既に世界16か国で大ヒットし、米批評サイト“Rotten Tomatoes”では92%FRESHを計上している本作、やはり優れたエンタテインメントこそは万国共通であり、必然的にワールドワイドに打って出ていくことを見事に証明して見せた好例が、この『バッド・ジーニアス』であるといっても過言ではありません。

一方でラストの展開はおよそ今の日本映画ではありえない、まさにタイというお国柄を反映させたものだなとも痛感させられます。

同じアジア、異なるアジア、近くて遠いそれぞれの国や地域の文化、風土、思想などを知る良ききっかけとしても、やはり本作のような良質のエンタテインメントは実にお勧めなのでした。

(文:増當竜也)

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