『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』は緊張感MAXの完璧映画!「5つ」の魅力はこれだ!



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11月16日より、麻薬戦争を描くアクションスリラー映画『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』が公開されます。本作は2015年に公開された『ボーダーライン』の続編。どこに魅力があり、どのような内容になっているのか、大きなネタバレのない範囲で、以下にたっぷりと紹介します。

1:16歳の少女が巻き込まれてしまう! 
前作に続きエンタメ性も高い映画だった!


まず、『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』について何よりも申し上げておきたいのは、エンターテインメント性が高く、麻薬戦争や世界情勢に詳しくなくても高確率でのめり込んで観られるという、意外な“取っ付きやすさ”があることでしょう。

その大きな理由の1つが、“事情を良く知らない立場の女性”がメインキャラクターにいること。前作『ボーダーライン』では女性FBI捜査官が謎めいた男の麻薬捜査に同行し、彼の強硬を通り越してムチャクチャな行動に翻弄をされ続けるというのがメインの物語になっていて、観客と登場人物の気持ちが「一体どうなっているの?」と一致することが興味の持続に繋がっていました。今回の続編では、その男の正体や目的は明らかにはされているものの、“混沌めいた状況に追い込まれる”面白さは存分に引き継がれていたのです。


今回“事情を良く知らない立場の女性”となるのは、なんと麻薬王の娘である16歳の少女です(演じているのは『トランスフォーマー 最後の騎士王』で廃墟で暮らす少女を演じたイザベラ・モナー)。しかも、主人公側が行う作戦というのが“麻薬王の娘を誘拐して麻薬カルテルを大混乱させ戦争をも起こさせる”という大胆を通り越して常軌を逸しているもの。端的に言って“道義的にも最悪な作戦に同行させられる少女に同情を禁じ得なくなる”ということこそが、物語の最大の推進力になっているのです。前作でも“子供”の視点がありましたが、今回はメインキャラクターに据えることでより“子供が巻き込まれてしまう”ことへの問題提起が目立っていると言ってもいいでしょう。

同時に、“主人公でありながら純粋な正義とは呼べない行動をする男”と“事情を知らないまま一方的に巻き込まれた少女”の関わり、ある種の共依存的な関係が、ドラマとしても面白く仕上がっています。主人公は表面的には非道な人物にも見えますが内面にはどこか“人間くささ”も感じられ、少女には気丈なようでいて年相応の幼さも見え、死と隣り合わせの彼らの旅路の無事を心から祈りたくなる……そんな“感情移入ができる物語”としても、申し分のない内容になっているのです。

なお、『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』の物語は前作『ボーダーライン』から独立しているので、今回から観るという方でもほぼ問題なく楽しめます。ただし、前作で物語上の“謎”として描かれていた主人公の男の過去が、今回では必然的にネタバレしてしまっているので、可能であれば前作から観ておいたほうがいいでしょう。前作における彼の“終盤のある行動”を振り返れば、さらに今回の物語に奥行きを感じられるはずです。

※前作『ボーダーライン』の紹介記事はこちら↓
□『ボーダーライン』感想&初心者にこそオススメしたい「10」の理由

2:前作とはスタッフがかなり違う? 
しかし多大なリスペクトと新たな挑戦のある続編だった!



本作『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』は『ボーダーライン』の正式な続編ですが、主要なスタッフが交代しているということにも触れなければならないでしょう。

監督は『メッセージ』や『ブレードランナー 2049』でも絶賛を浴びたドゥニ・ヴィルヌーヴから、イタリア人監督のステファノ・ソッリマにバトンタッチしました。音楽は2018年2月に亡くなったヨハン・ヨハンソンから、その弟子であるヒドゥル・グドナドッティルへ。撮影監督も大ベテランのロジャー・ディーキンスから、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのダリウス・ウォルスキーへと代わっています。しかも、前作のヒロインであり実質的な主人公でもあったエミリー・ブラント演じる女性FBI捜査官は、今回は全く姿を表さないのです。これを聞くと、前作が好きであったという方は動揺や不安を感じてしまうのではないでしょうか。

結論から言えば、そんな心配は全く必要ありません。本作は、誰もが「『ボーダーライン』の続編だ!」と思える内容になっていたのですから。それは、前述した“事情を良く知らない立場の女性”の視点などの“引き継がれた魅力”と、前作の繰り返しにはならない“新たな面白さ”も合わせ持っているからでしょう。

ステファノ・ソッリマ監督は、過去に『暗黒街』という血みどろの争いが繰り広げられる、群像劇の犯罪映画を手がけていました(Netflixではそのドラマ版が配信されています)。この『暗黒街』で特徴的なのは、残酷なシーンの多くを大げさな演出や寄ったカメラで見せず、まるで“遠くから誰かが観ているかのような”ロングショットで捉えていること。このおかげで凄惨な事件が日常的に起こっているかのような、客観的な視点での恐怖を感じられるという効果を生んでいたのです。その“一歩引いた視点”が、今回の『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』の冒頭のとあるシーンでも大胆に取り入れられており、誰もが恐れおののくことができるでしょう。(これが映画の“掴み”としても抜群!)

同時に、ステファノ・ソッリマ監督は今回の大規模なアクションシーンにおいては、“主人公たちを常に捉え、彼らの視点をアクションに取り込む”という挑戦もしていました。こうした客観的な視点、主観的な視点という正反対のアクションの撮り方こそが映画に躍動感を与えており、劇中の爆発をすべてCGなしの本物で撮影するという演出も相まって、フィクションの物語でありながら“この出来事が本当にあったとしか思えない”リアリティを感じられるのです。

なお、音楽を手がけたヒドゥル・グドナドッティルは、15年に渡り生前のヨハン・ヨハンソンと共同で音楽を製作しており、プロデューサーのモリー・スミスもその手腕を「ヨハンソンの作った『ボーダーライン』の音楽も想起させるが、同時に新鮮で力強い」と太鼓判を押しており、ヒドゥル自身も「“同じ世界観”を描き出しながらも、いくつかの曲は前作とかなり方向性が異なっている」と、やはり前作を引き継ぎながらも新たな魅力もある音楽を作ろうと尽力していることを窺わせるコメントをしています。総じて、メインのスタッフが代わろうとも前作に多大なリスペクトがあり、同時に前作の二番煎じにはならない工夫も存分にされていることは明確と言えるでしょう。



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3:脚本家のテイラー・シェリダンの作家性とは? 
良い意味で超イヤな気分にもさせてくれる!


前述したように今回はメインのスタッフが前作からガラリと代わっているわけですが、脚本家はテイラー・シェリダンが続投しているということも重要です。前作『ボーダーライン』の他、Netflixで配信中の『最後の追跡』や、日本で2018年7月より上映されたばかりの『ウィンド・リバー』などを観てわかるテイラー・シェリダンの作家性は、登場人物の“はっきりとは読めない”心情の変化こそが全編に渡り緊張感を生んでいることと、辺境と呼べる土地での“歴史”を感じさせることにあると言っていいでしょう。

「この人はこういう性格なんだろうな」とタカをくくっているとその先入観が覆される出来事が起こり、その出来事からは土地にあった悪しき歴史と現状も浮かび上がっていく……テイラー・シェリダンの脚本は、端的に言ってドラマ部分でのエンターテインメント性と、現実の問題に根ざした奥深いメッセージ性を備えているのです。説教臭くならない、まさに“映画”でしかできない魅力に満ち満ちています。

また、テイラー・シェリダンの脚本には、“誰かが絶望的な状況に追い込まれてしまう”ということも良くあります。「絶対にこういう状況にはなりたくない!」と観客を良い意味で超イヤな気分にさせてくれると同時に、最悪な事態が起こってしまう世界の片鱗をも見せてくれる……残酷かつ意地悪ではあるのですが、だからこそテイラー・シェリダンが手がけた作品は面白く、様々な未解決の問題がはびこる現代に作られる意義があると言えるでしょう。今回の『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』のラストシーンは、ある意味で真っ当な“教訓”が込められているとも言えるかも……?



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4:ベニチオ・デル・トロの“怪演”がさらに進化! 
実は“笑ってしまう”内容かも?


物語およびスタッフのことばかりに触れてきましたが、『ボーダーライン』および『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』の最大の魅力は、やはり主人公の男を演じるベニチオ・デル・トロの“怪演”に他なりません。彼が前作から引き続きどういう人物であるか、またどのような心境の変化が訪れるか……はネタバレになるので書かないでおきますが、とにかく微妙な表情の変化1つで魅せられること、予告や公式Twitterでも観られる“デルトロ撃ち”のカッコよさをお伝えしなければならないでしょう!



前述した通り全体的な物語そのものは良い意味で超イヤな気分にさせてくれるのですが、極悪とも言える方法でひたすらに目的を追求する“アンチ・ヒーロー”的な魅力を持ち、アクションシーンでは「悪いヤツは問題無用で処刑だ!」な感じにもなる(それ以外にも複雑な感情を内面に隠している)主人公の姿には、やはり痛快さも禁じえないです。

さらには、(ネタバレになるのでやっぱり具体的には書けませんが)終盤に彼が取る“ある攻撃方法”は恐怖を通り越して笑いが漏れてきます。前作でも「あれ?なんだこの男?そしてこの状況?」という混乱による“黒い笑い”を届けてくれましたが、やはり今回もベニチオ・デル・トロが演じるからこそのユーモアがあるのです。

なお、脚本を手がけたテイラー・シェリダンは、ベニチオ・デル・トロ演じる男について「まるで麻薬絡みのすべての暴力の犠牲者の魂が集まって、彼らの復讐と正義を果たすという使命を持って生み出されたかのような男だ。強い悲しみと傷は怒りになって現れるというのが、キャラクターの背景にあるアイデアだった」と語っています。そのキャラクターに記号的ではない奥行きを感じさせるのは、そのメッセージ性の強い練りに練られた脚本はもちろん、ベニチオ・デル・トロの演技力によるところが大きいのも間違いありません。

その他、味方のはずなのにどこか胡散臭いジョシュ・ブローリンや、組織の規律を重んじるCIA副長官のキャサリン・キーナーなど、実力派の俳優が揃っており、その会話の1つに1つが全体に漂う緊張感とエンターテインメント性に一役も二役も買っていました。俳優のファンにとっても、見逃せない作品でしょう。




5:劇場で観てこその“体感型ムービー”! 
合わせて観て欲しい映画はこれだ!


総じて、実力派のスタッフによる細部までこだわり抜かれた画作りや演出、俳優たちの鬼気迫る演技、意外にも親しみやすく感情移入もしやすい物語、“正当な続編”としての真摯な姿勢などにより、『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』は幅広い方におすすめできる、アクションサスペンス映画の新たな傑作に仕上がっていたと言っていいでしょう。

また、(可能な限り)「映画館で観て欲しい」と本気と願います。その理由は、スクリーンで観てこそ“地獄のような麻薬戦争の最中”に放り込まれたような感覚が得られるから。こだわり抜かれた音楽と音響のおかげもあり、「こんなところにはいたくない!(でも続きが観たい!)」という貴重な体験ができる映画なのです。言うまでもなく、なるべく音響設備が整った劇場を選択することをおすすめします。

最後に余談ですが、前作『ボーダーライン』で音楽を担当したヨハン・ヨハンソンの遺作(の1つ)となる『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』が現在公開中です。



こちらは復讐鬼と化したニコラス・ケイジが狂気の集団を血祭りにあげまくるという好き者にはたまらない内容で、真っ赤な靄がかかった映像と、重厚な音楽のおかげで“悪夢的な世界”に迷い込んだような感覚が得られる素敵な映画に仕上がっていました。残虐描写が満載で観る人を選ぶところもありますが、こちらも「映画館で観ないともったいない!」な体感型ムービーですので、ぜひ『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』と合わせてご覧ください!


(文:ヒナタカ)

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