映画コラム

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2018年03月24日

『ちはやふる-結び-』が大傑作となった8つの理由!

『ちはやふる-結び-』が大傑作となった8つの理由!



(C)2018 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社


現在公開中の『ちはやふる -結び-』は各界から絶賛の声が相次ぎ、映画情報サービスFilmarksでは5.0点中4.2点という超高評価を記録、その口コミ効果もあって大ヒットをしています。

ここでも断言します。『ちはやふる -結び-』は青春映画の新たなマスターピースであり、マンガの実写映画化作品としても理想的であり、最高の完結編であると! なぜここまでの大傑作となったのか、大きなネタバレのない範囲で、その理由をたっぷりとご紹介します!

1:若手俳優たちの“2年間の成長”が、劇中の物語とシンクロした!


『ちはやふる』シリーズの何よりの魅力は、やはり若手俳優たちの活躍。(知名度ばかりを優先せずに)オーディションで選ばれた彼らが実力を存分に発揮し、「またあいつらに会いたい!」と強く願えるほど個性的で愛すべきキャラたちを熱演していたことに、異論のある方はほとんどいないでしょう。

本作『ちはやふる -結び-』は、2016年に公開された『ちはやふる 上の句』および『ちはやふる 下の句』の2年ぶりの続編となっており、そちらに出演していた彼らが、大きく成長して“帰ってきた”ことも特筆に値します。

広瀬すずは『ちはやふる』前2部作の公開当時から注目はされていたとはいえ、これまで映画で主演を演じたのは『海街diary』(それも4姉妹のうちの1人)のみでしたが、そちらで記憶に残る存在感を見せ絶賛で迎えられていました。野村周平は『クジラのいた夏』や『日々ロック』でも、上白石萌音は『舞妓はレディ』でも主演を務めていましたが、本作で初めてその存在を知ったという方も多いでしょう。

『ちはやふる』前2部作でさらに知名度をあげた若手俳優たちは、その後に公開された話題作にも次々と主演および出演をします。広瀬すずは『怒り』や『三度目の殺人』、野村周平は『帝一の國』や『22年目の告白 -私が殺人犯です-』、新田真剣佑は『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』や『不能犯』、松岡茉優は『勝手にふるえてろ』や『聲の形』(声の出演)、上白石萌音は『溺れるナイフ』や『君の名は。』(声の出演)、矢本悠馬は『君の膵臓をたべたい』や『トリガール!』、森永悠希は『あさひなぐ』などなど……。『ちはやふる』は、彼らの出世作として重要な作品でもあるのです。

そうして役者として活躍してきた彼らの2年間が、リアルタイムで2年の時を経て公開された『ちはやふる -結び-』の物語(高校1年生だった主人公たちが3年生になっている)ともシンクロしているかのようなのです。久しぶりに“再会”した彼らは、一見すると印象は変わらないけれど、その演技や表情には2年間という空白の時間にあった成長を感じさせる……そこには映画という虚構と、現実が結びついているかのような感動がありました。

なお、俳優陣はかるた競技の感覚を取り戻すため、クランクインの前にみっちりと合同練習をしたそうです。その甲斐もあって、競技の迫力も前2部作を超えていますよ!



(C)2018 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社



2:“想定されていなかった続編”とはとても思えない! 脚本が神がかり的な完成度だ!


『上の句』および『下の句』では、原作マンガのエッセンスを拾い上げ、かつ限られた上映時間でまとめる映画ならではの“再構築”も抜群に上手く行われていました。2部作であることに必然性があり、題材となる百人一首の歌と絡めた物語運びも含め、エポックメイキングであったと言えるでしょう。

※原作マンガからの改変の上手さについては、以下の記事でもまとめています。
『ちはやふる 上の句』のここを観て欲しい!王道スポ根の青春映画として最高峰である理由を大いに語る!

実は、今回の『-結び-』の企画はもともと想定されていませんでした。続編の可能性が浮上したのは『上の句』が完成した2015年の11月のことで、脚本を手がけた小泉徳宏監督は「2部作でやるべきことはやりきったつもりだったので、以降のことは何も考えていなかった」などとも語っているのです。

つまり『-結び-』の物語は“後付け”ということ。一歩間違えば「蛇足」や「せっかくの2部作が台無しになった」と言われてしまいそうな企画でもあるのですが……実際の本編を観てみると、そんな不安を持っていたことが申し訳なくなる、もはや神がかり的とも言ってよい完成度を誇っていました!

『-結び-』の脚本が素晴らしい理由は、以下の5点に集約されると言っていいでしょう。

『-結び-』の脚本が素晴らしい理由

(1)初登場のキャラクターそれぞれをこれ以上なく魅力的に描けている

(2)前2部作を踏まえたロジカルな構成になっている

(3)原作マンガのエッセンスを拾いつつ普遍的に響くメッセージを備えている

(4)競技かるたおよび百人一首への多大なるリスペクトがある

(5)原作マンガの“IF”をも描いている


以下からは、それぞれについて解説します!



(C)2018 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社



3:初登場キャラが魅力的な理由はこれだ!


『-結び-』では、前2部作にはいなかった初登場のキャラがなんと4人もいます。優希美青演じる“恋に超特急な新入部員”、佐野勇斗演じる“実力があるけど不遜な新入部員”、賀来賢人演じる“感じの良い問題人物”、清原果耶演じる“恋のライバル”な映画オリジナルキャラがそうです。 -

これだけのキャラを新たに描くとなれば、物語が散漫になってしまったり、彼らの魅力を十分に描けていないといった不満が出そうなものですが、まったくそんなことがないというのが驚異的! 彼らのことも大好きになることができ、かつ全体の物語の躍動感、完成度に一役も二役も買っているのです。

なぜ彼らのことを魅力的に感じるのかと言えば、短い上映時間の間に“価値観の転換”が行われるからでしょう。たとえば、恋心を募らせるがあまり起こした行動がどうなるか、かるたの団体戦での独断がどのような結果になるか、どのようなことを講義で諭すのか、そしてかるた競技でどのような戦い方をするか……彼らの行動および成長は(後述しますが)普遍的に届く、尊いメッセージにも昇華されているのです。

小泉徳宏監督は、『ちはやふる』前2部作は言うに及ばず、(主演に限らず)脇役を演じた若手俳優の魅力を引き出すことにも定評があります。その点においても、この『-結び-』は完璧。新キャラを演じた4人それぞれの若手俳優の今後の活躍を、追い続けたくなることは間違いありません。



(C)2018 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社



4:前2部作を踏まえたロジカルな構成がすごすぎる!


ここで明言しておきたいのが、本作『-結び-』は、『上の句』と『下の句』を観てくおくことで、感動が何倍にも膨らむということ。なぜなら、その前2部作での数々の伏線が、本作で回収されるからです。

ネタバレになるので詳しくは書けませんが、『上の句』で主人公の千早の行動は(原作マンガにもあった)本作の“チャンス”についての教えにつながり、『下の句』での太一の行動にも新たな驚きと感動を与えてくれます。さらには、2部作それぞれのメッセージ、特に“かるた競技にかける情熱”、“かるた競技を続ける理由”もが伏線となり、それらをひっくるめて(これも後述しますが)普遍的な“青春の意義”をも問い直していました。

さらに、“勝つことに明確なロジックがある戦い”が、前2部作でのキャラの成長も踏まえたものになっていることも見事! 今回の団体戦で肉まんくんが新入部員にとあることを諭した時に、彼が『上の句』の団体戦ではどのような戦略を取っていたか、を思いだしてみるといいでしょう。

さらにさらに、机くんが団体戦でとある活躍をすることも、古典オタクの奏ちゃんが百人一首の歌に込められた恋心を語ることも、現クイーンの詩暢が笑みを浮かべた理由も、そして千早に切ない恋心を抱いていた太一の行動も、前2部作で描かれたキャラの性格や成長を踏まえたものになっているのです!

『-結び-』の物語そのものは前2部作から独立していますし、かるた競技のルールも簡潔に説明されているので、「初めて観る方でも楽しめる」要素も十分にあります。しかしながら、筆者個人としては、やはり「『上の句』と『下の句』を観てから劇場に足を運んで欲しい!」と強く願います。

その理由は、前述したように若手俳優たちの成長を感じられることと、前2部作での数々の伏線が回収されること、何よりも“かるた競技にかけた3年間の青春”を体感できるからこその感動もあるからなのです。前2部作を観たことがないという方は、Huluで『上の句』および『下の句』が配信されているので、ぜひ鑑賞してみてください!



(C)2018 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社


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