『ダンケルク』には英国紳士たちのプライドが詰まっている

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『インセプション』や『ダークナイト』などの話題作で知られるクリストファー・ノーラン監督の最新作『ダンケルク』。『ダンケルク』の舞台は1940年、第二次世界大戦中のフランス・ダンケルクという海岸都市。そこで実際にあった史上最大のイギリス軍・フランス軍撤退作戦、通称「ダイナモ作戦」を描いた作品です。

ノーラン監督初の戦争映画・初の実話ベースというこれまでの作品とはだいぶ違う題材ですが、期待を裏切らない素晴らしい「ノーラン作品」に仕上がっていたと同時に、どんな題材であっても「ノーラン映画にハズレなし」を証明した作品になったのかもしれません。

導入から息つく暇のない戦場の緊張感が走り、エンディングまで全力で駆け抜ける99分間。他の作品と比べて短めなのは、観客を精神的に疲れさせないという意図があるのかもしれないですね。

さて、この映画でイギリス軍を描いたノーラン監督もイギリス人。彼の写真や映像を見るといつもパリッとスーツを着こなしています。とても清く礼儀とマナーを重んじる英国紳士らしい風貌なのです。そんな英国紳士なノーラン監督、この映画のイギリス軍兵士たちにも英国紳士の振る舞いを散りばめています。

『ダンケルク』の映像のリアルさや作品の作り込みの素晴らしさは言わずもがなですが、今回は少し斜めから『ダンケルク』における英国紳士のポイントを、陸・空・海のキャスト別にまとめてみました。

※以下、ネタバレあり注意。筆者の思う英国紳士ポイントを語るに当たって、ストーリーの状況を挙げています。

【陸】老紳士の一言からにじみ出る英国人のプライド

ダンケルク メイン

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この作戦の肝である「本国に無事に帰ること」が基本テーマとして描かれています。陸の兵士たちは、とにかく祖国イギリスに生きて帰るため必死に生き延びようとします。

ハリー・スタイルズ演じる兵士アレックスは、やっとの思いで生きて祖国の地を踏むわけですが、だんだん逃げて来たと非難されるのではないかと怯えはじめます。戦場ではとにかく必死に生きたかったのに、いざ帰るとなるとイギリス軍の兵士、そして男としてのプライドがじわじわと出てくるのです。

そんなアレックスにある老人が「よくがんばった」と声をかけます。アレックスは「何もしていない、ただ生き残っただけだ」と捨て台詞を吐きます。すると老人は「それで十分だ」と言うのです。生き延びること、それを恥じないことこそ英国人のプライドだと教えてくれたようなシーンでした。

【空】九死に一生を得た瞬間に紳士が発する言葉とは

ダンケルク サブ

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この映画で観る者のハートをぐっと掴んでくるのがイギリス軍の誇る高速戦闘機スピットファイアのパイロットたち。ノーラン作品では常連のトム・ハーディーが、勇敢かつ技術の高いパイロットを演じています。そしてもう一人、英国紳士ぶりをこの映画で1番見せてくれるのがジャック・ロウデン演じる若きパイロットのコリンズ操縦士。彼の飛行機はドイツ軍戦闘機に撃たれ不時着することになるのですが、せっかく不時着を成功させたのになんとハッチが開かず迫り来る水に飲まれてあわや溺死…という寸前に救出されます。

九死に一生を得て息も荒い状態の中、コリンズが発した最初の言葉が「ごきげんよう(Afternoon)」なのです。しかも落ち着き払った紳士の態度で。あの冷静さとピンチでも取り乱さない様子には女性だけでなく男性までもグッと来るに違いありません。

そしてコリンズの紳士ポイントをもう一つ。沈没する飛行機から引き上げられたコリンズは空から海へと場所を移し救助に一役買うわけですが、終始冷静沈着。ブルーのジャケット、シャツにしっかりネクタイを締めたスタイルのままで陸の兵士の救出を手伝います。ノーラン監督のいつもパリッとしたスーツを思い出しますね。衣服を乱さず英国空軍パイロットのプライドをしっかりと見せてくれます。

【海】少年が英国紳士になった瞬間

ダンケルク サブ6

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海の部では、主人公は兵士ではなく民間人の親子。ダンケルクに残された兵士を連れ帰るため、イギリスの海岸から自分の船で救出に向かう父、息子、そして息子の友人。この海の部の英国紳士ナンバーワンは船長の息子、ピーターです。ピーターは不時着するスピットファイヤに近づき溺死寸前のパイロットを引き上げます。そう、コリンズを引き上げたのはピーター少年なのです。そして彼も冷静です。引き上げて「大丈夫ですか?」なんて野暮な言葉はかけません。いきなり「こんにちは(Good Day)」です。それに対して前途したようにコリン操縦士が「ごきげんよう(Afternoon)」と返事をしたわけです。

ものすごい状況下でも冷静であり礼儀を重んじ、イギリスらしいちょっと皮肉っぽさもある挨拶を交わす2人の英国紳士ポイントは100点満点だと思います。

そんなピーター少年はまだ齢14,5と言ったところですが勇敢な父や兄に習い、自分も冷静で勇敢な紳士でいようという姿勢がたくさん見られます。不慮の事故で友人が大怪我をしてしまいます。そして救助した陸の兵士たちを船に乗せる際「下に怪我人がいるから気をつけてくれ」と声をかけます。すると兵士の1人が「もう死んでるぞ」とあっさり衝撃的な返事しますが、ピーターは取り乱すことなく「だからこそ、丁寧に扱ってくれ」とまるで動じない態度をとります。

内面はショックで揺さぶられまくっているに違いないピーター少年が、どれほどの思いで冷静さを保ったかと思うと涙が出ます。ピーター少年が立派な英国紳士になった瞬間ですね。

2回目以降は英国紳士を探してみては?

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ストーリーや映像など以外にこういう斜めからの視点で映画を観るのも、なかなか興味深いものです。『ダンケルク』のリアルで臨場感溢れる映像を堪能したら、2回目は英国紳士の振る舞いを、そして他にも英国紳士ポイントが隠れていないか、見て頂きたいと思います。

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(文:岩田リョウコ)

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