『フォードvsフェラーリ』のレビュー|2020年最初の1本にオススメ!

「手に汗握る!」という言葉が
素直に似つかわしい快作!

(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation 

本作はル・マン24時間耐久レース史上に残る1966年の伝説的レース“フォードVSフェラーリ”の赤裸々な舞台裏を提示しつつ、クライマックスでは白熱のデッドヒートを完全再現させながら、絶対王者に挑む者たちの熱き気概と誇りを高らかに描き上げた快作中の一大快作です。

とにもかくにも男ふたりのハートが熱い!

このところ彼が出ていると知っただけで作品のクオリティの高さを確信できてしまうほどのクリスチャン・ベイルですが、ここでの頑固一徹で不器用なまでのマイルズの車オタクぶりは、同族オタクたちならずとも感涙させてくれること必至(家族思いなのも好感度大)。

一方、そんな彼をうまくなだめながらことを進めていくシェルビー役のマット・デイモンは、かつてレーサーとしての花道を絶たれた男の悔恨を次なるプロジェクトへのエネルギーに変えていこうとする前向きな姿勢がさりげなくも確実に醸し出されています。

監督はウルヴァリン3部作の第2作『ウルヴァリン:SAMURAI』(13)と完結編『ローガン』(17)で好評を博したジェームズ・マンゴールド。もともとラブストーリーからミステリー、西部劇、音楽映画、コメディなど多彩なジャンルを手掛ける彼ですが、やはり男たちの熱い闘いを描いたアクション仕立てのものに一段と才能を発揮してくれるような印象もあり、その伝に倣えば本作はそのトップに位置するものともいえるでしょう。

前半のドラマの進行をてきぱきと処理しながらフォード車を調整していく諸所のシーンの挿入タイミングなど編集の妙味も大いに讃えられるべきで、後半のル・マンが始まってからの展開はもう「手に汗握る!」という言葉がこれほど自然に似合う映画も珍しいと驚くほどスルリングかつダイナミック!

そして「実は味方の中に敵がいる」といった人生の機微を痛感させられるような本作の裏テーマは、洋の東西を問わず優れたエンタテインメントによく見られる傾向でもあり(わが国では岡本喜八監督作品に顕著であります)、ならばこの作品、いったいどういう結末を迎えるのか?

実話の映画化なので結論はちょっとググればすぐにわかることですが、ここではぐっと我慢して映画の中で確認し、大いに驚嘆してもらうことをお勧めします(もっとも既にレースの結果を知っている方でも、本作のテンションの高い演出の妙に乗せられ、大いに感情移入できることでしょう)。

今年最初の1本に何を見るかというのは、映画ファンにとってある種の運試しでもあり、いわばおみくじを引くようなもの。

その意味ではこの映画、大吉です。ぜひお試しください!

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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