幻のホラービデオ映画『ほんとにあった怖い話』3部作を一挙上映!鶴田監督特集上映会レポート!

■「キネマニア共和国」

8月24日、東京都町田市の和光大学ポプリホール鶴川にて、グローイングアップ映画祭~鶴川ショートムービーコンテスト・プレイベント~鶴田法男監督作品特集上映が開催された。

鶴田法男Profile

昼の部は“マスター・オブ・Jホラー”の異名をとる鶴田監督の原点ともいえる幻のホラービデオ映画『ほんとにあった怖い話』(通称『ほん怖』)3部作を一挙上映。今から四半世紀ほど前の作品で、しかも本来ビデオ画質であるにも関わらず、ホールの大画面に見事に耐えうる画のクオリティと、またそれによって一段と引き立つ恐怖の描出……。

『ほんとにあった怖い話』は、現在フジテレビ系で毎年夏の風物詩として日本の子供たちの80パーセントが見ていると言われるほどの国民的人気のホラー番組となって久しいが、今回来場の子どもたちも、その原点たるオリジナル・ビデオ版たる本作を息を呑んで見入っているが、時折「キャッ」といった悲鳴が場内に響いてくるのが楽しい。

ほん怖
(c)1991,1992 朝日ソノラマ、ジャパンホームビデオ

上映後のトーク・ショーでは、舞台『ヘルメスの媚薬』などで注目の女優・林田沙希絵を進行に、鶴田監督が当時の思い出話などを披露。
「話そうと思えば、一日中話し続けられる(笑)」ほど、監督にとって思い入れの深いシリーズ。現場では俳優に対して、いわゆる「お化けを見ました。キャー」といった芝居はやらせなかった。
商業デビュー作たる第1作目はビデオセールスとして大ヒットはしたものの、本人としてはまだまだ内容に納得がいかず、続く第2作では自分の持てるありったけの力を出し切ったにも関わらず、売れ行きは前作を下回り、第3作ではハリウッド風のショッカー演出も計算して取り入れることにしたとのこと。
しかし時が経つにつれ、特に第2作に対して黒沢清などさまざまな映画人から絶賛の声が上がるようになり、それが後のJホラー・ブームへとつながっていったのだ。

「本当に評価されるものって、やはり時間がかかるものなのだということを実感しています」

これまで手掛けた作品はどれも思い出深いが、やはりメジャー映画デビューとなった『リング0~バースディ』は忘れられないという。ヒロインの仲間由紀恵も初主演、自分も初の映画大作ということで、お互い初々しい熱を込めた現場になったとのこと。

なお、今年も8月29日に新作『ほんとにあった怖い話 夏の特別篇2015』がオンエアされるが、その中の観月ありさ主演「奇々怪々女子寮」は、OV版の中でも特に語り草になって久しい第2作・第2話『霊が蠢く家』に倣った家屋憑きの恐怖を描出すべく、シナリオに何と3年の歳月をかけたとのこと。こちらも楽しみだ。

夜の部では、鶴田監督が和光大学時代に手掛けた自主製作映画を特別上映した後、死者と会話ができるアプリを題材にした『トーク・トゥ・ザ・デッド』が上映。ホラーに悲しみのメロドラマ的要素を交えた意欲作で、再評価が待たれる作品でもある。

桜井ユキ、プロフィール写真
岡村洋一さん

この後、出演者の桜井ユキと司会の岡村洋一を交えてのトーク・ショーPART2が開催。
桜井ユキは、母の借金を背負わされ、弟を亡くしたことを自分のせいだと悔やみ続けるヒロインに、死者のアプリの存在を教える同僚役。鶴田監督はオーディションで、往年の伊佐山ひろ子を彷彿させる存在感を求めてキャスティング。彼女も役をつかむべく監督に直接電話するなどの熱意を示した。
今年、園子温監督『リアル鬼ごっこ』などでブレイク中の桜井ユキの、女優としての期待を熱く語る鶴田監督。
観客から今後やってみたい役を聞かれた桜井は、何と「殺人鬼の役!」と返答。思わず『モンスター』のシャーリーズ・セロンを連想してしまった。また憧れの女優は樹木希林とのこと。さらなる飛躍を期待したい。

また桜井、岡村の両者とも29日オンエアの『ほん怖』に出演していることもあって、そのPRも兼ねつつ、「最近は猟奇犯罪が多発しているが、こうした犯罪者には“恐怖”といった感情が決定的に欠けているのだとか。その意味では、恐怖という感覚を体験させてくれるホラー映画は貴重な存在なのではないか」と、岡村。
それを受けて、鶴田監督も「恐怖の中には、実は人間の業や情といったものも含まれています。自分自身、これからもそういった要素を盛り込んだ作品を発表していきたい」とコメントした。

なお、鶴川ショートムービーコンテスト2015では、現在一般からのコンペ作品を募集中(締め切りは9月30日)。条件は15分以内のオリジナル作品であること。第2の鶴田法男をめざして、ふるってご応募を。

(詳しくは http://www.tsurukawa-smc.com/ まで)

■「キネマニア共和国」の連載をもっと読みたい方は、こちら

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

    ピックアップ

    関連記事

    新着記事