『空母いぶき』超ド級の日本映画となった「5つ」の理由!



©かわぐちかいじ・惠谷治・小学館/『空母いぶき』フィルムパートナーズ


2019年5月24日より『空母いぶき』が公開されます。結論から申し上げれば、これは1人でも多くの方に観てほしい、極めて誠実に作られた、エンターテインメント性に満ち満ちていている、豪華俳優陣の熱演にも圧倒される、“超ド級”と呼ぶにふさわしい、素晴らしい日本映画でした!

加えて(詳しくは記事の最後にまとめますが)本作は2016年に公開された『シン・ゴジラ』が好きな方にも存分にオススメできる内容であったのです。その魅力を大きなネタバレのない範囲で以下にお伝えします!

1:平和を維持するための戦いが描かれていた!
“矛盾”や“葛藤”がエンターテインメントになっている!




©かわぐちかいじ・惠谷治・小学館/『空母いぶき』フィルムパートナーズ



映画『空母いぶき』は多層的な構造を持っている作品です。その中でも重要なのは“平和を維持するための戦い”、言い換えれば“自衛のための武力の行使”についての様々な“矛盾”や人々の“葛藤”が描かれているということでしょう。

あらすじは、国籍不明の漁船20隻が日本の領海内に侵入したという一報が首相官邸に届き、加えて漁民を装った武力勢力が海上保安官たちを拘束し波留間群島初島に上陸したことも判明、ただならぬ事態に海上自衛隊は艦隊を即座に現場海域へと向かわせる……というもの。現場では常に一触即発の緊張が走り、結局は“攻撃”をせざるを得ない事態になってしまう……しかし、それでも首相は「わが国は絶対に戦争はしない。これは自衛のための戦闘である」ことを頑に主張している、ということが物語の焦点となっているのです。

その過程において種々の論点がわかりやすく提示されていること、それこそがグイグイと興味を引くエンターテインメントになっていることが本作の最大の魅力です。「戦争は絶対に起こしてはならない」「しかし防衛のために武力を示さなくてもいけない」「何もしなければ侵略されてしまう上に国民に犠牲者が出てしまうかもしれないからだ」「しかし武力を行使すれば敵国側に死者が出てしまうかもしれない」「そもそも戦闘と戦争の何が違うというのか?」「この攻撃を戦争ではないと否定するのはただの欺瞞なのではないか?」……といった矛盾や葛藤は誰にでも理解できるでしょう。同時に、どちらが正しくて間違っているかという二項対立は避けられており、観客それぞれが“フラットな視点で考えることができる”内容にもなっていました。

本作は「もし日本に侵略行為があった時にどのようなことが起こるのか」、もっと言えば「こういうことが日本に起こったら本当にイヤだな」という事例をシミュレートしている、または「自衛隊ができることとは何か」という根本的な意義を問い直している、あるいは戦争が起こるメカニズムを寓話(教訓的な内容を比喩として描く物語)として描いている、はたまた戦争をしないための正しい選択をしていく日本という国の“希望”を示しているとも言えます。それらを実際の憲法第9条や集団的自衛権に絡めて論ずることもできますし、予備知識が一切なくても万人が楽しめる、極めて間口が広い作品になっているのが、この『空母いぶき』なのです。

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