映画コラム

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2017年06月16日

『インサイド・ヘッド』から読み解く「リーダー論」とは?もっと面白くなる5つのポイント!

『インサイド・ヘッド』から読み解く「リーダー論」とは?もっと面白くなる5つのポイント!



(C)2015 Disney/Pixar. All Rights Reserved.


本日6月16日に金曜ロードSHOW!で放送される『インサイド・ヘッド』は、頭の中の感情を“擬人化”するアイデアを見事に成功させた異色作。何となく観ているだけでも楽しい作品ですが、実はオトナこそハッと気づくことがある、奥深い作品でもあるのです。ここでは、さらに本作が面白くなる5つのポイントを紹介します!

※以下、核心的な部分は避けていますが、『インサイド・ヘッド』本編の軽めのネタバレに触れています。なるべく鑑賞後に読むことをおすすめします。

1:ヨロコビはダメなリーダーだった?


主人公の女の子のライリーの頭の中には、ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリという5人の感情が住んでいます。彼女たちのリーダーであるヨロコビは、朝から仲間にテキパキと指示をする有能さを見せている……と、思いきや、カナシミにだけには「あなたの仕事はこの輪の中にすべての悲しみを入れておくことよ」と言っていました。



言うまでもなく、これは体(てい)よく仕事を与えているようで、その実「お前は何もするな」と、カナシミの可能性を全否定している命令です。ヨロコビは彼女を“職場で余計なことばっかりする存在”としか認識しておらず、その能力に目を向けていないのです。仲間をつまはじきにして“窓際族”のように仕事をさせないなんて、思いっきりダメなリーダーではありませんか!

また、ヨロコビがカナシミに「マニュアルでも読んどいてよ」と“とりあえず”な指示をしていたことが、後に司令室へ戻るための道標になったことがありました。結果的によかったとはいえ、これもまたダメなリーダーの典型ですよね。部下に実践的な教育をせずにマニュアルを読ませ、しかもそれを指示した本人は読んでいないなんて……。基本的なことが書かれているマニュアルは、やはり仕事の役に立つものですよね。

なお、ヨロコビは転校初日のライリーを1日中ハッピーにすることを目標としていましたが、ライリー自身は家から出る前に「緊張するけどきっと楽しいよ」と不安そうに言っていました。そうした“本音”を気にもせず、とにかく喜びでいっぱいにするというヨロコビのプランは的外れとも言ってもいいでしょう。組織または会社(ライリー)が求められているもの(本当は転校してちょっと悲しい)と正反対のこと(無理にでも楽しくしよう!)をする、というのもダメなリーダーっぽさを感じてしまいます。

そんなわけで、ライリーの頭の中のヨロコビは、“自分の目標ばかり優先して空回りしたあげく、仲間を信頼していない”という、反面教師的にリーダーの有り方を学べるキャラクターなのです。そんなヨロコビが、カナシミという大切な仲間の“役割”を知り、ライリーが本当に幸せになるための行動をする……本作は、そんなリーダーの成長物語と言ってもいいでしょう。

ちょっとヨロコビのことをフォローすると、彼女はライリーの登校の直前、ムカムカが「ママとパパと人前を歩くなんて!」と言いながらレバーを引くのを止めさせて、ライリーに笑顔で「大丈夫だよ!」と言わせて家族の関係を良好に保つことに成功しています。やはり、ヨロコビもまた必要な感情なのですね(その後、猿のモノマネをした後のライリーの笑顔は、ひきつったようにも見えましたが…‥)。



(C)2015 Disney/Pixar. All Rights Reserved.



2:それぞれの頭の中のリーダーが違う!


ライリーの感情たちのリーダーはヨロコビでしたが、他の人間もそうだとは限りません。例えば、ママの感情たちのリーダーはカナシミに、パパはイカリになっていました(しかも、ママの感情たちは全員女性になっています)。



これは、“どのような性格の者がリーダーになってもいい”という提言なのではないでしょうか。ママのリーダーのカナシミは落ち着いた様子で仲間に指示を出していますし、パパのイカリは“ここぞ”という大事な時だけ怒りの感情を見せ、成果を出した仲間をしっかり褒めています。
どちらもライリーのヨロコビとはまったく違うリーダー像ですが、なかなか良い職場環境に見えますよね。ただ、パパの感情たちは話を聞いていなかったり、ママの感情たちに呆れられていたので、生産効率はあまりよくないのかもしれません(笑)。

また、エンドロールのおまけでたくさんの人間たちの頭の中を覗くことができるのですが……おしゃれにアイシャドーも入れてツンツンしていた女の子の感情のリーダーがビビリで「見え張ってカッコつけているのがバレたらどうしよう!」と言っているのが、なんだか気の毒でした。こんな風にビクビクして素直になれないくらいなら、思い切ってリーダーを交代したほうがいいのかもしれませんね。

また、ラストにちょっとだけ登場した、ライリーとぶつかってドギマギしていた男の子の頭の中も面白いことになっていました。彼の感情たちのさらなる活躍は、ソフト版に収録されている短編「ライリーの初デート?」で観ることができますよ。


3:字幕版ではこんな違いがあった!


ピクサー作品は作中に出てくる看板も含めて、その国の言葉に翻訳するローカライズに力を入れています。本作では、イカリが読んでいる新聞の見出しも日本語になり、それが“ライリーのその時の状況”を示しているのが面白いですね。

実は、本作では言葉どころか映像がまるごと置き換わっているシーンがあります。吹替版ではライリーの嫌いな食べ物はピーマンなのですが、字幕版ではなんとブロッコリーに変わっていているのです。



確かに日本では、子どもの嫌いな野菜はブロッコリーよりもピーマンのほうが一般的な気がしますね。その国の食文化まで考慮したローカライズには感服するしかありません。ソフト版で字幕版(音声を英語にする)と吹替版を切り換えて見てみると、それぞれの違いがわかって楽しいですよ。

また、ライリーのパパが脳内で見ていたスポーツも、サッカーとアイスホッケーの2パターンが用意されていたようです(ソフト版ではサッカーのバージョンだけが収録されていました)。

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