『イップ・マン外伝 マスターZ』押さえておきたい「5つ」のポイント!

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“マックス・チャン”。その名を聞いて、どれだけの映画ファンが香港アクション界のニュースターだと気づくだろうか。日本での知名度としてはもう一押しといったところだが、端正なルックスにキレッキレのアクション、シビアな演技もこなすマックス・チャンの名前は、今後広く知れ渡るものと予測できる。否、主演映画『イップ・マン外伝 マスターZ』で演じた“チョン・ティンチ”というキャラクターによって、その名は新世代アクションスターとして記憶にしっかり刻まれるはず。

現在44歳のマックス・チャンは、日本のみならず本国でも“遅咲き”の部類に入るだろう。映画界でのキャリアは長くも俳優として名を上げたのは、ウォン・カーウァイ監督の『グランド・マスター』での悪役・馬三での演技が認められてのものだった。それから約5年を経て、マックス・チャンのキャリアにとってひとつの到達点となった『イップ・マン外伝 マスターZ』の魅力について今回は全力で紹介していきたい。

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1:そもそも『イップ・マン』シリーズとは?

まず本作は「イップ・マン“外伝”」ということで、正シリーズの『イップ・マン』からさかのぼってみたい。イップ・マン=葉問とは「詠春拳」の達人として実在した武術家であり、かのアクション俳優ブルース・リーの師匠として知られている人物(ブルース・リーは体得した詠春拳を基にして「ジークンドー」を生み出した)。そんな偉人を、香港のアクションスターであるドニー・イェンが演じたのが『イップ・マン』シリーズだ。

イップ・マン 序章 (字幕版)

ドニーによる正シリーズは『イップ・マン 序章』にはじまり、『イップ・マン 葉問』、『イップ・マン 継承』と続き、本国では今年第4作の公開が控えている。そして第3作『イップ・マン 継承』において、イップ・マンと同門である詠春拳の使い手として初登場を飾ったのが、マックス・チャン演じるチョン・ティンチ=張天志だった。チョン・ティンチは貧しい生活のなかで一人息子のフォンを育てつつ、武館の開館を目指して野心を抱いた武術家の男。資金を稼ぐためには闇試合への出場どころか汚れ仕事を請け負うことも厭わず、さらに自らの実力を示すために次々と各流派のマスターを叩き伏せていった。

チョン・ティンチが詠春拳の“正統派”をめぐってイップ・マンに挑戦し、そんな2人の同門対決が『イップ・マン 継承』のクライマックスとなっている。そのクライマックスバトルは無観客ながら棍術戦・八斬刀戦・拳法戦を展開し、映画としてはカンフー作品史上最高レベルと言っても過言ではない組手が繰り広げられた。そのあまりにも高速かつ美しいバトルはドニーのカンフースタイルもさることながら、対するマックス・チャンが互角に渡り合ったことで完成されたものであることは間違いない。そんな強さと本来の“正義”からは少し逸れつつも、信念を持つチョン・ティンチのキャラクター性が高く評価され、『イップ・マン』シリーズ初のスピンオフ作品『イップ・マン外伝 マスターZ』へとつながったのだ。

2:名匠ユエン・ウーピン監督は映画界における凄い人物!

そんなチョン・ティンチの魅力にいち早く気づいたのが、『イップ・マン 継承』のアクション監督を務めたユエン・ウーピン(袁和平)だ。実はマックス・チャンはユエン率いるアクションチーム「袁家班」出身のアクションマンであり、いわばユエンにとってマックス・チャンは門下生ということになる。ちなみにドニーもユエンに見出された俳優であり、そういった意味においても『イップ・マン 継承』は、ユエンの元から巣立った2人の俳優がひとつの作品のなかで頂上決戦を繰り広げたことになる。それはユエンからすれば限りなく幸せな瞬間であったろうし、ユエンに認められて初のスピンオフ作品で主演に抜擢されたマックス・チャンにとっても栄誉だったに違いない。

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そんな師弟愛によって『イップ・マン外伝 マスターZ』は成り立っているわけだが、同時にユエン自らがメガホンを握っている点にも注目したい。そもそもユエンは『スネーキーモンキー/蛇拳』や『ドランクモンキー/酔拳』を大ヒットさせ、ジャッキー・チェンを有名にした監督でもある。一方でアクション監督や武術指導者としても名を馳せ、香港作品だけでなく『マトリックス』シリーズを皮切りに『キル・ビル』シリーズや『ドラゴン・キングダム』などハリウッド作品にも招かれるほどの実力者でもある。ユエンが確立したケレン味たっぷりのワイヤーアクションは、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱』や『グリーン・デスティニー』で武侠映画を復権させたほど。彼の存在なくして現在のワイヤーアクションの系譜は存在していなかったはずであり、『イップ・マン外伝 マスターZ』においてもユエンの血脈はワイヤースタントとしてしっかり息づいている。

3:マックス・チャンの魅力がフルコンボ!

ユエンに見出された主演のマックス・チャンはなんといっても端正なルックスが目を引くところだが、どこか翳りを帯びた雰囲気が醸し出されているのも特徴だといえる。例えばジャッキー・チェンの表情がキャラクターよろしくどこか陽気な空気を放っているとすれば、マックス・チャンはそれとは逆に位置しているのではないだろうか。その魅力に目をつけ『グランド・マスター』で悪役に起用したウォン・カーウァイ監督の慧眼は流石と呼べるものだし、その後の『ドラゴン×マッハ!』や『イップ・マン 継承』にもつながった意味でもその功績は大きい。また主演を務めた『狂獣 欲望の海域』でもその悪にも似た正義感が前面に打ち出された結果、暴力で訴える金髪刑事というキャラクターを創造させることになった。

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話を『イップ・マン外伝 マスターZ』に戻すと、主演としてもちろんマックス・チャンの華麗すぎる美技の数々が楽しめるのは言わずもがな。強い、とにかく強いし速い。その体幹はいったいどうなっているのか思わずツッコミたくなるレベルだが、そのアクションスタイルが場面によって様々な形を見せる点にも注目してほしい。さらに言うなれば、もうひとつの見どころとしてチョン・ティンチの生活感にも本作は重きを置いている。彼はフォンという一人息子をこの上なく大切に思っており、フォンのために誕生日プレゼントを選んだり食事へと連れていく様はれっきとした父親の表情になっている。振り返ってみると『イップ・マン 継承』においてほとんどチョン・ティンチの普段の生活はほとんど描かれていないし、さらに視点を広げてみてもマックス・チャンが演じたキャラクターでここまで生活感を出したシーンはなかったのではないだろうか。“アクションマスター”であると同時に、何気ない生活感を醸し出すマックス・チャンというのも、新たな魅力となっているはずだ。

4:サブキャストが豪華すぎ!

『イップ・マン 継承』での結末をチョン・ティンチは本作でも引きずってはいるが、彼が最高レベルの武術家であることは間違いない。そんな彼と戦うにも生半可な俳優では不可能なところであり、その相手にも本作ではベストどころか良い意味で盛りすぎではないかと思える共演陣を揃えた。まずは『ドラゴン×マッハ!』で至高のバトルを見せつけたムエタイの名手トニー・ジャーが再びマックス・チャンと拳を交わしている。『ドラゴン~』では白血病の娘を救うべく奮闘したトニーだが、本作は少しばかり面白い起用法となっているので、その点も含めてチョン・ティンチとのバトルを楽しんでほしい。

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『グリーン・デスティニー』シリーズなどでユエンアクションを経験しているミシェル・ヨーも、本作で存分にその魅力を発している。ハリウッド作品にも進出している彼女だが、やはり香港アクションにおける存在感は圧倒的。『クレイジー・リッチ!』のような母親役も魅力だが、青龍刀を手にダイナミックな武術を見せるミシェル・ヨーの姿には惚れ惚れとしてしまう。マックス・チャンとのバトルでは見事に息の合ったアクションを見せてくれるが、同時にユエン作品でのアクションの相性の良さも感じさせてくれる。

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そして本作におけるビッグゲストとしては、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズの愛されキャラ、ドラックス役を演じているデイヴ・バウティスタの出演が挙げられる。本作ではドラックスのようなコミカルさは封印し、紳士的でありながら異様なほど不気味な佇まいを醸し出している。もともとWWEのスーパースターであるバウティスタだが、本作における狂気的なアクションは他者を圧倒するほどのものであり、本来のバウティスタに近いファイティングスタイルを目の当たりにするはずだ。

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ほかにも本作では『イップ・マン 序章』に別役で登場していたシン・ユーにファンも喜ぶカンフーファイトが用意されていたり、『イップ・マン 継承』から引き続きサン役でパトリック・タムが登場。本作でそれぞれがどのような動きを見せるかも楽しみにしてほしい。

5:90年代香港アクションの隆盛期を堪能する!

ドニー・イェンによる正シリーズではカンフーアクションと同時にドラマ面も前面に押し出されていて、『イップ・マン 序章』では日本軍を相手に中国の威信を懸け、『イップ・マン 葉問』では中国拳法の誇りを懸け異種格闘戦に挑んだ。そして『イップ・マン 継承』でイップ師父ははじめて妻や子のために拳を奮った。こうした側面は香港ノワールに総合格闘技を持ち込んだドニーが、カンフーを主体にしつつストーリーにも比重を置いた結果によるものだろう。そんな遺伝子を取り入れつつも『イップ・マン外伝 マスターZ』では意図的に香港アクションの原点に立ち返り、スタイリッシュなカンフーバトルの積み重ねによってストーリーを牽引しているように思える。

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本作は高度経済成長を遂げる1960年代の香港を舞台にしており、ネオンがあちこちで光り輝くどこか懐かしさを覚える情景が画面を覆い尽くす。同時にイギリスの植民地である負の成長面も作品では描かれており、時代背景が色濃く反映されていることが伺える。チョン・ティンチはアヘン窟を取り仕切るキットに目をつけられ、キットの姉でヨー演じる女ボスのクワンをも巻き込んだ抗争へと発展してしまう。正シリーズに比べれば本作は勧善懲悪としての色が濃くなっており、アヘンをめぐる抗争やイギリスに敵対感情を抱かせる様子もある意味“香港映画らしい”モチーフになっている。さらに劇中で繰り広げられるカンフーファイトもドラマ性を抑え、アクションの美学を追求しながら“エンターテインメント”として見せようとする制作陣の気概のようなものが伝わってくる。そういった意味でも、正シリーズ以上にワイヤースタントを取り入れたアクションが目立っているのではないだろうか。

裏を返せば、古き良き香港カンフー活劇としての色合いも出ている本作。ユエン・ウーピン監督の持ち味と、その門下生であるマックス・チャンのアクションが見事な融合を果たした結果、本作がチョン・ティンチの“本当の”はじまりの物語として形作られているようにすら思わせる。

まとめ

映画界で不遇の時代を過ごしたマックス・チャンと、卓越したセンスを持ちながら周囲に認められてこなかったチョン・ティンチという男の生き様がどこか被る本作。その背景には正シリーズのスピンオフというだけでなく、監督と主演の師弟関係や香港映画界の変遷をなぞる上でも大きな意味を持っていることを感じさせてくれる。久しぶりの“純度100%の香港カンフー映画”であり、公開よりも早く流行りの「応援上映」がメイン館の新宿武蔵野館にて決定していることからも、本作がいかに血沸き肉躍る作品になっているか窺い知れるのではないか。遅咲きの雄マックス・チャンの魅力とともに、ぜひ香港カンフー映画の神髄を楽しんでほしい。

(文:葦見川和哉)

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