『地獄の黙示録 ファイナル・カット』レビュー:「戦争ほど美しいものはない」ことの怖さを描いた名作の最終版!

初公開版と特別完全版の
良いとこ取りの『ファイナル・カット』

まあ、なんだかんだあってようやく1979年に完成し、日本では80年の2月にお目見えとなった『地獄の黙示録』ですが、初公開時はスタッフ&キャストのクレジットもタイトルも一切入ってないオリジナル70ミリ版(147分)と、70ミリ版のその後のラストを見せながらクレジットを入れこんだ35ミリ版(153分)が作られました。
(日本では都市部で双方が、地方は主に35ミリ版が公開されています)

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その後、初公開版に50分ほどの未公開シーンを足して再編集した『地獄の黙示録 特別完全版』(202分)が2001年に公開。

こちらはジャングルの奥地で植民農園を営むフランス人家族とウィラードが出会うといったエピソードなどを通して、より観念的かつアメリカのヴェトナム参戦を批判した内容になっています。

そして今回の『地獄の黙示録 ファイナル・カット』は182分。つまり初公開版よりも約30分ほど長く、『特別完全版』より20分ほど短いヴァージョンとなっております。

私自身の鑑賞体験から申すと、初公開版(35ミリ版を先に、数年後に70ミリ版を見ました)に衝撃を受けつつ、実はカットされたエピソードが多数あることを後で知り、それらを見たいとずっとやきもきしていたものですが、いざ『特別完全版』を目の当たりにして、見たいものをようやく見せてもらえたカタルシスこそあったものの、やはり長くなった分ちょっと冗長な感も正直受けたので、その分『ファイナル・カット』は双方の良いとこどりといった印象で、『地獄の黙示録』の決定版にはなったのかなとは思っています。

もっとも個人的に一番好きなのは、今も70ミリ版です。やはりクレジットが一切ない唐突さが見る側にもたらす困惑は、そのままカーツとウィラードの“HORROR”な心情とも最もシンクロしているように思えてなりません。

ただし、これもまた見る方々の映画体験や人生経験、またどのヴァージョンをいつ見たかといったタイミングなどでも印象は大きく変わってくることでしょう。

初公開から40年経っても映画ファンの心を掻きむしってやまない作品、それが『地獄の黙示録』です。

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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