『劇場版あしたのジョー2』4K UHDの圧倒的に素晴らしき映像体験!

『劇場版あしたのジョー2』4KULTRAHD
5月25日発売/¥7800+税
製作・著作:株式会社トムス・エンタテインメント/販売・発売元:20世紀フォックスホームエンターテイメント

20世紀のビデオやLDの時代から、21世紀に入ってDVDからBlu-rayへと、映像メディアは進化し続けていますが、それらをさらに上回る4K ULTRA HD Blu-ray(以後4K UHDと略称)の登場は映画ファンにとって見過ごすことのできないものがあります。

Blu-rayの4倍を誇る超高解像度! 漠然とはしておりますが、これは即ち35ミリ・フィルムとほぼ同等の情報量を持ち得ていることを意味しており(まあ、そもそもデジタルとフィルムは全くの別物なので、比較すること自体に無理があるのですが)、つまりはフィルムで撮られた映画を4Kリマスター化して製造された4K ULTRA HDとは、映画館で見る映画そのものといっても過言ではないほど(さらに申すと、国内の映画館は、未だに2K上映されているところも多いのです)。

そして5月25日、20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン株式会社から発売される長編アニメーション映画『劇場版あしたのジョー2』4KUHDですが……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.308》

これがもう画も音も、そして特典も、ファン感涙どころか発狂せんばかりの素晴らしさなのでした!

矢吹丈が真っ白に燃え尽きるまでを
TVと同時進行で製作した劇場版

まず『劇場版あしたのジョー2』という作品そのものをおさらいしていきますと、本作は1981年7月に公開された長編アニメーション映画です。

原作は高森朝雄&ちばてつやの同名コミック。孤独な青年・矢吹ジョーがボクシングに目覚め、数々の死闘を繰り広げながら、やがて真っ白な灰と化していく熱い青春像を描いた作品です。

監督は『エースをねらえ!』『家なき子』『宝島』『ベルサイユのばら』『おにいさまへ』などで知られ、アニメ&実写を問わず後進の映画人たちにも多大な影響を与えた名匠・出﨑統。

かつてTV版『あしたのジョー』(70~71/全79話)のチーフディレクターを務めた出﨑監督は、当時連載中だった原作にTVが追いついてしまったことからドラマ途中で終了せざるを得なくなり、以後ずっとジョーが真っ白な灰になるまでを自身の手で映像化したいと願い続けていました。

やがて1980年秋、ジョーのライバル力石徹の死からラストまでを描くTVシリーズ『あしたのジョー2』(80~81/全47話)がスタートしますが、同時並行しておよそ1時間50分の劇場版を制作することが決定。

その製作形態としては、まずTVシリーズを作りながら劇場版の前半部を総集編的にまとめていき、後半は劇場版先行で作業し、それに即してTVシリーズを膨らませて構築していくというもので、TVと映画を掛け持ちするスタッフは、その1年間、かなりの忙しさだったとのことです。

かくして翌81年7月、全国のスクリーンにお目見えした『劇場版あしたのジョー2』は、力石徹の死からドラマをスタートさせ、無冠の帝王カーロス・リベラとの友情と闘いを前半部に、そして後半はチャンピオン、ホセ・メンドーサとの死闘に焦点を絞るという潔い構成をもってジョーが燃えつきていくまでを熱く耽美に描出しています。

何せ原作が長尺ゆえ、「あのエピソードが入っていない!」といった不満の声も当時はありましたが、今見直すと逆によくぞここまで簡明にまとめたなと、あっぱれに思えるほどの作りです。

俗に“ハーモニー”と呼ばれる止め画効果や、三段重ねなどの繰り返しショット、画面分割、多重合成にパンニングなど出﨑監督作品は常に旺盛な実験精神をもって、フルアニメとは異なり、限られた枚数で描くことを強いられた日本独自のリミテッドアニメの歴史の中、その特質を最大限に生かした魅惑的演出を披露し続けていったのです。

それは作品全体に耽美的な情緒を漂わせる効果までもたらし、それもあってか出﨑作品は女性ファンの支持も圧倒的で、『あしたのジョー2』に関しては“あたしのジョー”と称されるほど!

男たちの熱く麗しき友情と闘いを耽美に映えさせることに長けた、出﨑監督ならではの賜物でしょう。

初公開時以上の興奮と感動をもたらす
4K UHDソフトの鑑賞体験!

さて、原作コミックの連載開始から50周年を迎えた2018年、劇場初公開からおよそ37年の月日を経て4K UHD化されて蘇った『劇場版あしたのジョー2』ですが、35ミリのオリジナル・ネガ・フィルムから1コマ1コマが丁寧に4Kスキャニング&徹底的にレストア(修復)を施したHDRマスターが作られ、結果として初公開時と同等、いやそれ以上の興奮と感動をもって見る者を圧倒する高画質が実現しています。

(HDRとはハイダイナミックレンジの略称で、従来のSDR=スタンダードダイナミックレンジよりも広く明るい映像表示の幅を成し得た、次世代の高画質技術です)

実はこの作品、4月に20世紀FOX試写室で上映会が催され、運よくそこで私もTVモニターではなく銀幕の大画面に投射されたものを見ることができたのですが(ちなみに場内にはソニーVPL-VW5000というプロジェクター、プレイヤーはパナソニックDMR-UBZ1と、どちらも最上級機種を特別に持ち込んでの上映)、そこで見た画も音も、今まで自分が劇場はもとよりビデオやLD、DVD、そしてBlu-rayで見てきた『あしたのジョー2』は何であったのかと発狂しかねないほどの高画質&高音質!

特にすごいのは光の効果で、出﨑作品といえば、画面内に透過光を差し込ませて七色の虹や、水面のキラキラ感、リングのまばゆいライトなど徹底して光にこだわった演出が魅力でもありますが、今回の4KUHDはその効果が最大限に引き出されているのです。

私自身、『劇場版あしたのジョー2』を銀幕で見るのは、それこそ初公開以来でしたが、これはもう試写室どころか、シネコンで一番大きなスクリーンにかけても十分映えうる優れもので、これなら時を越えて今の若い映画ファンにも十分支持してもらえるだろうと確信することができました。

ならば、こういったソフトを所有できるということは、もう完全に自宅を映画館にできる!(もちろんそれなりの設備は必要ですが)

映画ファンなら誰しも自宅を映画館みたいにしたいと夢見たことはあるかと思われますが、いよいよその夢が叶う時が来たかなとも個人的には思っています。

(プロジェクター設置は無理でも、4Kモニターは狭い部屋での大画面視聴も難なく可能としています。2020年の東京オリンピック開催に向けてまもなく始まる4K8K放送開始に伴い、モニターもどんどん安くなってきていますので、今が思い切りのときかも!)

ファン感涙!幻の4:3バージョンを
映像特典として収録

さて、『劇場版あしたのジョー2』4K UHDソフトでもうひとつ力説しておきたいのは、特典映像です。

実はこの作品、TV版と並行して作られていることから、もともと当時のTVサイズでもあった縦横比4:3に合わせた画面構図で作画がなされており、劇場版は上下をカットしたビスタサイズ(1:1.85)にトリミングして上映していたのです。

今回は現在のハイビジョンモニターの基準である16:9画角(ビスタサイズとほぼ同等の縦横比)の中にビスタサイズを取り込んだ4K/HDRマスターによるオリジナル劇場公開版に加えて、特典として上下のマスクを外した4:3スタンダードサイズ・バージョンを2K/SDRで収めています。

4:3スタンダードサイズ

16:9ビスタサイズ

この4:3バージョン、ファンの間では幻とされていたもので、はるか昔に1度だけレーザーディスクで出ていましたが、今LDを再生できる環境にある方も少ないでしょうし(そもそもソフトの入手も難しい)、また2K/SDRも通常のBlu-ray相当の画質は十分に保持していますので、全然ストレスなく楽しめることと思います。

その日その時の気分に合わせてビスタ版とスタンダード版、両方の『あしたのジョー2』をチョイスできるとは、何と素晴らしい時代になったことか!

また封入特典のブックレットには設定資料集や、本作をはじめ長年出﨑監督に就いていた竹内啓雄監督が今は亡き出﨑監督の思い出を語るインタビューなど掲載されています。

現在、出﨑監督が『あしたのジョー2』の後に手掛けた『劇場版SPACE ADVENTUREコブラ』も4K UHDソフトが同社から発売されていますが、こちらも当然ながらに圧倒的な高画質&高音質!

これを機に『劇場版エースをねらえ!』や『劇場版ゴルゴ13』さらには立体アニメーションとして放送された『家なき子』など、出﨑監督の名作群はもとより、実写&アニメを問わずフィルムで制作された過去の名作映画が続々と4K UHD化されることを祈ってやみません。

論より証拠、まずは『劇場版あしたのジョー2』4K UHDをご覧になってみてください!

(文:増當竜也)

(C)高森朝雄・ちばてつや/講談社・TMS (C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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