23歳の若さで逝った天才俳優・リヴァー・フェニックスの魅力が光る映画3選

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1987年に日本で公開された映画『スタンド・バイ・ミー』。少年4人が一夏の冒険を通して成長していくみずみずしい姿を描いたこの作品は、当時大ヒットしました。

4人の少年たちのリーダー格であるクリスを演じたのが、当時、実力派少年俳優として注目されたリヴァー・フェニックスです。

『スタンド・バイ・ミー』の成功で一気に知名度を上げ、その後もオスカー助演男優賞候補になるなど、若くして順調に俳優としてのキャリアを重ねていったリヴァー。しかし、1993年、23歳の若さでこの世を去りました。

シネマズ女子部」第13回では、『スタンド・バイ・ミー』とはまた違う彼の魅力が光る、出演作品をご紹介します。

『旅立ちの時』


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反戦活動でFBIの指名手配を受けている両親とともに名前を変え、髪や目の色を変えながら転々とする逃亡の人生を歩んできたダニー(リヴァー)。しかし、新たに転校したニュージャージーの高校で彼に転機が訪れる。

ピアノの才能を認められてジュリアードへの入学の話が持ち込まれ、そして、心から惹かれあう女性・ローナ(マーサ・プリンプトン)に出会ってしまったダニー。音楽の勉強がしたい、彼女とも一緒にいたいけれど、家族と離れることはできないと、両親に進学の話を打ち明けることができずにいるダニーだったが——

家族と生きるのか、自分の人生を生きるのか。人生の岐路に立たされた少年の心情をリヴァーが非常に繊細に演じ上げているこの作品。

多くを語らない(語れない?)静かな少年のダニーですが、言葉は少なくとも彼が人生で背負ってきた孤独や未来への苦悩が、リヴァーの表情からごく自然に伝わってきます。

この確かな演技が評価されたのか、本作でアカデミー賞助演男優賞にノミネート。『スタンド・バイ・ミー』と並ぶリヴァーの少年時代のもう一つの代表作です。

『恋のドッグファイト』


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ベトナム戦争出征前夜の海兵隊員たちは、誰が一番イケてない女の子をナンパできるかを競う“ドッグファイト”を開催。隊員の一人であるバードレース(リヴァー)は、カフェで働くローズ(リリー・テイラー)に目をつけてパーティに誘う。

一緒に過ごしていくうちにローズの愛らしさに本気で惹かれていくバードレース。しかし、彼女はドッグファイトのことを知り、怒ってパーティを去ってしまう。バードレースは謝ろうとローズの家を訪れて、仲直りをした二人はデートに出かけ、幸せなときを過ごしていく——

本作は、シンプルなラブストーリーですが、リヴァーと相手役のリリー・テイラーが作り出しているごく自然な距離感に好感が持てます。仲直りをしたあとの二人の恋はとても微笑ましい。それだけに、一夜を終えてローズと別れ、戦地へ向かうバードレースの姿に切なくなります。

その後、バードレースは戦争の中でいろいろなものを失いながらも帰ってきますが、戦地に赴く前と後で大きく変わっているリヴァーの顔が非常に印象的。未熟な部分もあった若者が戦争で傷を負い、悲しみを宿した表情で戻ってきており、この演じ分けもさすがというところです。

『マイ・プライベート・アイダホ』


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ポートランドで男娼をしながら日銭を稼いで暮らすマイク(リヴァー)。彼は緊張すると眠りこんで意識を失うナルコレプシー(発作性睡眠)の症状を抱えており、発作を起こした彼を介抱するのは親友のスコット(キアヌ・リーブス)の役目。

子供のときに母親に捨てられたマイクは、母を捜そうとスコットとともに兄が暮らすアイダホへ向かう。旅の途中、スコットに愛情を抱いていたマイクは想いを打ち明けるが、スコットがマイクに示したのは友情だった。マイクの母を捜して、アイダホからローマへと旅する二人だったが——

リヴァーが私生活でも親しかったというキアヌ・リーブスと共演した本作では、特に後半部でリヴァーの演技が秀逸です。

マイクがスコットに気持ちを打ち明ける場面では、愛する人と心を通わせたい切なさが痛いほどに伝わってきます。そして、マイクが自身の悲しい生い立ちと向き合い、やがてスコットとも離別して孤独へと向かっていく姿は、苦しくもどこかみずみずしく観ている人の心に響いていきます。

男娼を生業とし、病を抱えながら退廃的に生きる若者という難しい役どころを繊細に美しく演じ上げ、彼が深みのある青年俳優へと見事な進化を遂げた作品です。

いつでも凛とした輝きがあるリヴァー・フェニックス


10周忌追悼写真集 リヴァー・フェニックスの伝説



『スタンド・バイ・ミー』で、リヴァー・フェニックスが演じたクリスは、アル中の父と不良の兄を持ち、自身も不良というレッテルを張られながらも、タフさを失わず友達を守ろうとする勇気ある少年でした。当時、映画を観てクリスの強さに憧れた人も多かったことでしょう。

『スタンド・バイ・ミー』以降は、タフというより、むしろ苦悩する青年役を演じることもあったリヴァー・フェニックス。しかし、悩める青年を演じるようになったリヴァーが弱々しくなったのかというと、決してそのようなことはなく、彼の繊細な演技の奥にはいつでも凛とした輝きがあるように感じました。

経歴を見るかぎり、短い人生の中で苦しいこともあり、俳優としての苦悩などもおそらく抱えていたに違いないリヴァーですが、それでも、あのクリスのような強さを彼はきっと自身のどこかに宿し続けていたのではないかと思うのです。

少年から大人の俳優へ脱皮し、これからの活躍が期待というさなかに人生を終わらせてしまったリヴァー。彼の早すぎる旅立ちは今でも残念でなりませんが、その出演作の中で、彼の姿はいつでも眩しく輝いています。

今回、ご紹介した3作品は、Amazonビデオなどでも鑑賞可能ですので、リヴァー・フェニックスといえば『スタンド・バイ・ミー』しか知らない…という方なども、ぜひ観ていただいて、作品ごとにさまざまな顔を見せる彼の魅力を知っていただけたらと思います。

(文:田下愛)

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