2016年のトリかつ2017年新春を飾る快作アニメ『甲鉄城のカバネリ』2部作!

■「キネマニア共和国」

(C)カバネリ製作委員会

『君の名は。』や『聲の形』『この世界の片隅に』など、2016年はアニメーション映画が大躍進した一年でしたが、2017年もその勢いに乗って、ますますの飛躍が期待できそうです。

その中で2016年12月31日に前編『集う光』が公開、そして2017年1月7日に後編『燃える命』が公開となるアニメーション映画『甲鉄城のカバネリ 総集編』2部作は……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.190》

まさに17年のトリと、17年新春を飾るに足る快作なのでした!

地獄を進む装甲蒸気機関車に
乗り込んだ人々の壮絶な運命!

『甲鉄城のカバネリ』は、もともと2016年4月から6月にかけてTV放映されていた全12話の深夜アニメーション・シリーズです。

その内容は、あたかも日本の江戸から明治にかけての時代文化を模した和風スチームパンクともいうべき世界観「日ノ本」の中、いわば吸血ゾンビのような怪物「カバネ」が突如出現して、人々は次々とカバネ化し、世界は地獄と化していきます。人々は「駅」と呼ばれる砦を築いてカバネの侵入を防ぎ、それぞれの駅を幕府が運営する装甲蒸気機関車「駿城(はやじろ)」が行き交いながら、ネットワークが繋がれています。

主人公の青年・生駒は、駅の中に侵入してきたカバネに噛まれてしまいますが、ウィルスが脳内まで侵入する直前でそれを食い止めることに成功し、人とカバネの狭間の存在「カバネリ」となり、同じカバネリの少女・無名らとともに駿城「甲鉄城」に乗り込み、幕府将軍家を抱く「金剛郭」へ向かう……といったもの。

監督はTVアニメ『進撃の巨人』(13)で実写もひれ伏するダイナミズムを発露させた荒木哲郎。本作はオリジナル・ストーリーですが、まさに『進撃の巨人』の巨人をゾンビに変えたかのようなカバネの脅威を構築しています。

末法の地獄を進み続ける汽車という設定は『スノーピアサー』(13)を彷彿させるものもあります。また監督のこれまでのコメントを読むと、本作の設定の中には『タクシー・ドライバー』(76)や『キック・アス』(10)『桐島、部活やめるってよ』(12)などの要素もまぶされているとのことです。

(C)カバネリ製作委員会

勢いを重視しながら疾走するストーリー
温故知新的なキャラ構築の妙

シリーズ構成および脚本は『コードギアス 叛逆のルルーシュ』(06)や映画版『ベルセルク』3部作(12~13)などの大河内一楼が担当。ひとりひとりのキャラが引き立たせながら、列車の疾走さながら勢いと躍動感を重視した内容。特に後半部の盛り上がりは意外性も伴い、かなりのカタルシスがもたらされていきます。

キャラクター原案を『超時空要塞マクロス』(82)など数々の美形キャラを構築してきた先駆者でもあるベテラン美樹本晴彦が担当しているのも話題で、これをアニメーションキャラクターデザイン江原康之が巧みに命を吹き込み、さらに本作はアップショットで美樹本イラストを完全再現させるためのメイクアップアニメーターまで設けられています。

一方で主人公・生駒の性格は、いまどきのアニメには珍しい熱血青年で、しかしながら挫折もよくする1970~80年代的なキャラクター像が具現化されており、そんな設定と80年代を象徴する美樹本キャラとの融合が、今の時代、温故知新という言葉を思い起こさせるほど、実に新鮮に映えわたっていきます。

声のキャストは生駒=畠中祐、無名=千本木彩花をはじめ、内田真礼、増田俊樹、梶裕貴などの若手実力派声優が多数出演。また後編に登場する美馬役の宮野真守の存在感も圧倒的です。

(C)カバネリ製作委員会

イチゲンさんにこそ見ていただきたい
ハリウッド映画を凌駕する面白さ!

その映画版となる本2部作は「総集編」と銘打たれてはいますが、もともと1話30分もののTVアニメの本編の正味はおよそ20分。今回は全12話を前後篇に分けているのでそれぞれ6話分、即ち20分×6話=120分のものを、およそ105分(本編の正味は100分ほどか)の上映時間内にまとめあげているので、さほどカットされているわけでもなく、むしろ回ごとのストーリーの繋がりをスムーズにした、その意味でも初めて本作に触れるイチゲンさんにも実に優しく、それゆえに見ていただきたい逸品となっています。

また、バトル・シーンも含む本作の映像のダイナミズムはTVモニターよりも銀幕の大画面のほうが、つまり画面が大きくなればなるほど映えわたる優れものであり(これは同じ荒木監督の『進撃の巨人』劇場版2部作も同様でした)、ジャンル・ムービー的な意味合いでも断然オススメできます。

TVアニメの総集編とあなどるなかれ(というか、いっそ「総集編」という副題は不要だったと思うくらいです)。
『甲鉄城のカバネリ』2部作は、もはやハリウッドを凌駕したといっても過言ではないほどのクオリティを湛えているのです。

TV版もめでたく第2期の製作が決定。甲鉄城のこの後の地獄の疾走も、ぜひ見届けていただけたらと思います。

■「キネマニア共和国」の連載をもっと読みたい方は、こちら

(文:増當竜也)

関連記事

いよいよスタート!2017年最初の週末映画情報!


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

    ピックアップ

    関連記事

    新着記事