『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』と驚異的なストップモーション・アニメの世界

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■「〜幻影は映画に乗って旅をする〜」

第89回アカデミー賞で長編アニメーション賞と視覚効果賞にノミネートされたストップモーション・アニメ『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』が、11月17日からようやく日本公開を迎える。

手描きアニメでもCGアニメでもなく、一コマずつ被写体を動かして作り出される〝ストップモーション・アニメ〟。元々特撮などのいわゆる映像トリックに使われていた〝コマ撮り〟の技術をアニメ作品に応用することで、独特の世界観とリアルな描写を作り出すことができるようになった。

一本の作品を作り出すために、長い年月が費やされるだけあって、生み出された作品はどれも素晴らしいものばかり。本稿では、そんな〝ストップモーション・アニメ〟の傑作を、一気に10作品紹介し、この『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』の魅力を語りたい。

<〜幻影は映画に乗って旅をする〜vol.52:『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』と驚異的なストップモーション・アニメの世界>

『ファンタスティック・Mr.FOX』

ファンタスティック Mr.FOX(字幕版)

まずは、実写映画でもアッと驚く世界観を作り出し続けるウェス・アンダーソン監督が、ロアルド・ダールの児童文学を原作にして作り出し、世界中で激賞を巻き起こした一本。

とにかく主人公となるキツネ一家ら動物たちの造形もさることながら、実写映画ではとても作り出すことのできない圧倒的なスピード感が本作の魅力である。来年公開される次回作『犬ヶ島』で、ふたたびストップモーション・アニメに挑むウェス・アンダーソン。そちらにも大いに期待が持てる。

『アノマリサ』

アノマリサ (字幕版)

一転して、人間のキャラクターたちの心情表現を、人形を使って作り出した異色のアニメーション。こちらも実写映画で名を馳せたフィリップ・カウフマン監督が初めてアニメーションに挑戦した作品で、その緻密なキャラクターの表情や動きに、実写映画と見間違うほど。

アニメは子供のものだと思っている人がまだ存在しているのであれば、この映画を観て打ちのめされていただきたい。

『ピンチクリフ・グランプリ』

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70年代にノルウェーで大ヒットを記録した伝説の人形アニメ。アヒルとハリネズミと一緒に暮らす自動車修理工が、かつての弟子と対決するレースに出るという物語で、とくに目を引くのはキャラクターたちのアクションの大きさである。

ストップモーションという手法を最大限に生かすために、リアルを超えた動きを作り出す。70年代にこれだけの技術が確立されているのだから、40年経った現在に、とてつもない進化を遂げているのは納得である。

『くるみ割り人形』

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人形アニメも列記としたストップモーション・アニメであるのだから、日本の映画も忘れてはならない。誰もが知っているサンリオが、実に5年の歳月を費やして作り出した傑作。

幾度となく映画化されているチャイコフスキー作曲のバレエを原案にした本作は、30年以上経てデジタル・リマスター版&再レコーディングとして2014年に公開されている。まさに日本が誇るキャラクターの宝庫サンリオらしい、大人から子供まで楽しめる見事な出来栄えに脱帽してしまう。

『劇場版ムーミン谷の彗星 パペットアニメーション』

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世界中で親しまれている、トーベ・ヤンソンが作り出した人気キャラクター、ムーミン。日本でも「楽しいムーミン一家」の劇場版として作り出された「ムーミン谷の彗星」だが、こちらは70年代にポーランドでTV放送されていたパペットアニメを再編集して作り出した一本。

アレキサンダー・スカルスガルドとステラン・スカルスガルド親子を筆頭にした、北欧の名優たちが声を担当している点にも注目。

『ウォレスとグルミット、危機一髪!』

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ストップモーション・アニメを語る上で、ひとつのエポックメイキングとなったのはイギリスのアードマン・スタジオの登場といってもいいだろう。89年に発表した『チーズ・ホリデー』を皮切りに、〝クレイ・アニメ〟の限界に常に挑み続けている。

もっとも、アードマンの話をするとかなり長くなってしまうので留めておくが、その代表シリーズである「ウォレスとグルミット」は、シリーズのどの作品を観ても驚かずにはいられない。

あえて3作目の「危機一髪!」をチョイスしたのは、ベルトコンベアーのシーンの秀逸さと、のちのアードマン・スタジオを牽引する「ひつじのショーン」の初登場する作品だからということ。30分しかない作品なので、まだ観たことがない人は必見。

『ぼくの名前はズッキーニ』

©RITA PRODUCTIONS / BLUE SPIRIT PRODUCTIONS / GEBEKA FILMS / KNM / RTS SSR / FRANCE 3 CINEMA / RHONES-ALPES CINEMA / HELIUM FILMS / 2016

スイスを拠点に多彩な短編アニメを作り出してきたクロード・バラスが、2年以上の歳月をかけ、親を失った9歳の少年が初めて体験する友情と恋心を描き出した。

わずか66分に人生のあらゆる瞬間が詰め込まれた本作。第89回のアカデミー賞では長編アニメーション賞にノミネートされたほか、驚異の表現力が高く評価され、実写映画と同等の賞賛を浴びたことでも話題に。日本では来年2月10日から公開される。

『ティム・バートンのコープスブライド』

ティム・バートンのコープスブライド (字幕版)

さてここからは『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』を手がけたライカ作品を紹介していきたい。日本でも圧倒的な支持を集めているティム・バートンが作り出した、ダークでロマンティックなファンタジー映画。

取り立てて説明する必要もないほど、バートン色が全開の作品なのだ。不気味なキャラクター造形と、シンプルで、どこか美しい物語。のちにバートンが発表した『フランケンウィニー』と並んで、彼の原点を伺うことができる作品なのである。

『コララインとボタンの魔女』

コララインとボタンの魔女 (字幕版)

すっかりティム・バートンのイメージが付けられてしまった『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』を作り出した、真の立役者であるヘンリー・セリック。彼がライカに参加して初めて作り出した長編作品が本作。

まもなく公開される『パーティで女の子に話しかけるには』と同じニール・ゲイマンの、けれん味溢れる児童文学を元に、まるで『パンズ・ラビリンス』のような不気味で、なのに魅力的な世界が繰り広げられていく。劇場公開時には3Dのみの上映だったが、2Dで観ても充分にその世界に没入することができる。

『パラノーマン ブライス・ホローの謎』

パラノーマン ブライス・ホローの謎(字幕版)

発表した長編作品すべてがアカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートされているライカ。そのひとつの要因は、強豪ディズニーやドリームワークスとは一線を画したダークな世界観が、大人にも訴求するということに他ならない。

その真骨頂とも言えるのは、少年が死者と話すことができるという、ホラー的要素と、ジュブナイル要素を集約させた本作。ものすごく暗い、けれどその卓越したアイデアに唸らずにはいられない。

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』

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そして、例外なくアカデミー賞候補にあがり、台風の目としてその受賞も噂されるほどの絶賛を集めた最新作は、日本を舞台にしたダーク・アドベンチャー。闇の使者によって両親を殺された少年クボが、人間の言葉を喋るサルと、父に仕えていたクワガタとともに、三つの武具を集めて復讐に向かう物語。

〝ストップモーション・アニメ〟がここまで来たか、と思わずにはいられないほど進化した技術力に、瞬きひとつすることさえもったいなく思える。激しいアクション描写に、悪役キャラの造形、そして三味線の音色で折り紙を操るクボのディテールに至るまで、じつに完璧。

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これまでのライカ作品でプロデューサーを務めてきたトラヴィス・ナイトが初めて監督を務めたとはいえ、リードアニメーターとして全作品に関わってきた彼の作品に対するビジョンは、一貫してライカらしさを貫く。

ボイスキャストにはシャーリーズ・セロンやマシュー・マコノヒーといったアカデミー賞キャストが揃い、その豪華さがうかがえるとはいえ、作品の主役になるのはキャストではなく、徹底的に作り込まれた映像で間違いない。中でも船の上で闇の姉妹とサルが決闘するシーンは圧巻である。これは大スクリーンで観るにふさわしい、圧倒的な力を備えた作品だ。

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(文:久保田和馬)

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    ライタープロフィール

    久保田和馬

    久保田和馬

    久保田 和馬
    1989年生まれ。映画評論家/映画ライター/映像作家。フランス映画とアジア圏の映画をこよなく愛する。大学時代からの自主制作の延長で映像制作を行い、2013年から文筆業を開始。「図書新聞」へ映画評の寄稿、「リアルサウンド映画部」への寄稿など。

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