シェークスピア没後400年記念!ダークファンタジーとしての映画『マクベス』

■「キネマニア共和国」

シェークスピアといえば、いわゆる演劇やドラマのスタンダードともいえる古典的存在で、これまでも数多くの作品が舞台や映像化されてきましたが……

キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~vol.133

マクベス

(C)STUDIOCANAL S.A / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2015

マイケル・ファスベンダー主演の『マクベス』は、21世紀の今ならではのセンスで迫る一大エンタテインメント映画です!

『マクベス』ストーリーと
これまでの映画化や翻案化

『ハムレット』『オセロ』『リア王』と並ぶシェークスピア4大悲劇のひとつと謳われている『マクベス』のストーリーは……スコットランドのダンカン王への忠誠を誓うグラミス領主マクベスと占有バンクォーは戦に勝利した後、3人の魔女と出会います。

魔女たちはマクベスがコーダーの城主になり、スコットランド王になるであろうこと、さらにバンクォーの子孫が未来の王になると言い残し、忽然と霧の中に消えていきます。

まもなくして、マクベスがコーダー領主に任じられました。

マクベス夫人は夫の出世を願い、ダンカン王暗殺をマクベスにそそのかします。

罪悪感にさいなまれながらも、マクベスはついに敬愛する王の胸に探検を突き刺しました。

まもなくしてスコットランド王に指名されたマクベスは、予言がさらに当たることを恐れて、バンクォーとその息子の殺害を企て……。

実在のスコットランド王マクベス(在位1040~1057年/実際のマクベス王は、17年の長期にわたる統治を成し、劇で描かれるような暴君ではなかったようです)をモデルにしたシェークスピアの戯曲『マクベス』、その映画化は、古くは1908年のサイレント映画をはじめ、オーソン・ウェルズ監督が自己解釈と極端なアングルで挑み、23日の撮影日数で完成させた48年版、71年のロマン・ポランスキー監督が演劇的ではないリアルかつ暴力的な志向で挑んだ71年版(この撮影直前、彼は当時の愛妻シャロン・テートを惨殺されており、その衝撃が本作に多分な影響を及ぼしているとも言われています)などが存在します。

その他、舞台公演を映したジョージ・シェイファー監督の『マクベス』(61)や、舞台を現代のマフィア社会に移した『ジョー・マクベス』(56)『コールド・ブラッド/殺しの紋章』(90)『マクベス・ザ・ギャングスター』(06・未)や、舞台を料理店に据えたテレビ映画『マクベス』(05)もあります。

日本ではなんといっても、舞台を戦国時代に翻案した黒澤明監督の傑作『蜘蛛巣城』(57)が有名ですね。

舞台でも蜷川幸雄の『マクベス』や、劇団☆新感線の『メタルマクベス』などは広く知られるところです。

手塚治虫の名作漫画『バンパイア』も、実は『マクベス』の設定を基にしていることを、著者本人が認めています。

大自然の風景を活かしながら
欲望を描くダークファンタジー

さて、こういった中でオーストラリア出身のジャスティン・カーゼル監督が2015年に手掛けた『マクベス』は、戯曲通りのストーリーと台詞廻しを駆使しつつ、広大な曇天の原野など大自然の風景を巧みに活かした映像美をもって、マクベスとその夫人の欲望をダーク・ファンタジー的なテイストで包み込んだ、実に映画的躍動感を伴った作品に仕上がっています。

そのテイストは、どことなく『ハリー・ポッター』シリーズ以降のファンタジーともいえる21世紀型のもの。

またカーゼル監督は今回の映画化に際し、ウェルズ版やポランスキー版ではなく、黒澤の『蜘蛛巣城』を参考にしているのではないかと勝手に想像してしまったのですが、これはいずれ監督自身に尋ねてみたいものです。

スタッフは『英国王のスピーチ』の面々が結集し、映画的な躍動感を引き立たせているのと同時に、マクベスに扮するマイケル・ファスビンダーと、夫人に扮するマリオン・コティヤールの狂おしき演技合戦は壮絶かつ魅惑的で、人間の持つ虚栄ともろさの両面を見事に体現しています。

今年はシェークスピア没後400年のメモリアル・イヤー。少しばかりゴージャスな気分で、この醜くも美しい人間ならではの欲望の世界に身を委ねてみるというのはいかがでしょう?

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(文:増當竜也


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou

    鹿児島県出身。映画文筆。

    朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。

    取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。

    編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊)

    その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。

    ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊)
    現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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