映画コラム

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2017年02月05日

闘う男たちの到達点『マグニフィセント・セブン』が熱い!

闘う男たちの到達点『マグニフィセント・セブン』が熱い!

■「映画音楽の世界」




みなさん、こんにちは。1月27日より『マグニフィセント・セブン』が公開されました。黒澤明監督の『七人の侍』を原案とした1960年製作のユル・ブリンナー主演の傑作西部劇『荒野の七人』を、『イコライザー』『サウスポー』などのアントワン・フークア監督がリメイク。主演はフークア監督の『トレーニングデイ』でアカデミー主演男優賞に輝いたデンゼル・ワシントン。共演にはクリス・プラット、イーサン・ホーク、イ・ビョンホンら主演級の俳優が並んでいます。

今回の「映画音楽の世界」では、そんな『マグニフィセント・セブン』を紹介します。


闘う男たちの姿に酔いしれる! アントワン・フークア監督と言えば、とにかく“闘う男”を描かせたらやたらと様になる骨太系作品の印象がありますよね。ブルーズ・ウイリス主演の『ティアーズ・オブ・ザ・サン』、円卓の騎士を描いた『キング・アーサー』、最強の大統領護衛官『エンド・オブ・ホワイトハウス』、そして『イコライザー』、『サウスポー』。そんな監督があの『荒野の七人』をリメイクするとなったら単純に闘う男密度7倍、相乗効果で7乗ぐらいに燃えるに決まっています。

当然のごとく、デンゼル・ワシントン演じるサム単体だけでもその華麗な銃さばきに熱くなるというのに、同じくらい魅力的なキャラクターがしっかりとそれぞれの持ち味を活かした場面が用意されているのだから、さすがフークア監督。カードマジックを得意とするジョシュの小手先はラストで大きな役割を果たし、スナイパー・グッドナイトとアサシン・ビリーの渾然一体の連帯感。

熊のような図体のジャックにニヒルなガンマン・バスケス、そしてインディアンの誇りのために戦うレッドハーベスト。それぞれのアイデンティティーが要所要所で描かれ、なおかつ今だ映画界でも根強い人種差別や同性カップリングへの偏見があるなかで、敢えてこのキャラクター設定、相関図で突っ切ったフークア監督ならびに制作陣の気概は大きなものと言えるでしょう。

しかしそれを下手に複雑にストーリーに絡ませることはせず、至ってシンプルな「復讐劇」としてまとめているので深く考えることはなく、それぞれのキャラクターの活躍に釘付けにさせる安心設計。放たれる弾丸の数は近年の西部劇映画と比べても群を抜くというより比較にならないほどで、よりエンターテイメントに仕上げた感があります。

現にSNSを見ていると、作品の考察よりもどのキャラに「惚れた」のかを挙げる感想が多いような気もします。ストーリーももちろん大切ですが、そういった盛り上がり方ができるのも、それぞれのキャラが人間的にも映画的にも上手く描かれた、何よりの証拠なのではないでしょうか。



名作曲家が遺していた音楽


音楽を担当したのは『タイタニック』や『アバター』などで知られる故ジェームズ・ホーナーと、長年彼のアシスタントを務めていたサイモン・フラングレン。ホーナーとフークア監督は『サウスポー』でも組んでいますが、同映画完成直後の2015年6月に不慮の事故でホーナーが他界。今は亡きホーナーがクレジットされた経緯をフークア監督自身がインタビューで応えたところによると、フークア監督が『荒野の七人』のリメイクを希望していることを知ったホーナーが、監督するようフークアを後押し。

まだ主演のワシントンすら出演契約をしていなかった段階で自身も脚本だけを頼りに作曲を開始していました。しかしフークアはそのことを知らず、ホーナーの死後、譜面が遺されていたことをサプライズで知らされたそう。ホーナーの遺志を継ぎ、フラングレンが全体を整え『マグニフィセント・セブン』の音楽は完成しました。

『サウスポー』で初めてタッグを組んだ際も、予算面よりも作品の質に感銘を受けたホーナーが作曲を快諾したことから、短いながらもフークア監督とホーナーの信頼関係は強固なものだったことが窺えます。そうして実際にできあがった音楽はというと、明朗なメロディで荒野を駆ける七人のヒーロー性をしっかりと表現。

リズムを刻むドラムや手拍子が刻々とスクリーンの中で映像とともに生きていました。戦闘場面ではボルテージを上げつつ、繊細なピアノのメロディとその響きはホーナーの面影をしっかりと感じさせ、それを再現してみせたフラングレンの手腕はさすが長年のパートナーと呼べるもの。ところどころで巨匠エルマー・バーンスタイン作曲のオリジナル『荒野の七人』を感じさせるな、と思わせてからの“あの名曲”が高らかに鳴り響いた瞬間は思わず胸を高鳴らせてくれます。

そんなジェームズ・ホーナーが遺した本作のサウンドトラックは輸入盤、国内盤ともに発売中なので、チェックしてみては。

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まとめ


多くの才能が結集して蘇った、渾身の西部劇。もちろんクエンティン・タランティーノ監督らによって西部劇は一ジャンルとしてハリウッドなどで描かれ続けていますが、ここまで胸を熱くさせるド派手なドンパチを展開してくれた西部劇映画は久しいのではないでしょうか。華麗な銃裁き、早撃ち、連射、爆発……。今の時代だからこそ観たいと思える勧善緒悪の純粋なガンマンたちの活劇。ジェームズ・ホーナーが最期に遺した音楽とともにぜひ劇場で堪能してください。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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(文:葦見川和哉)

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