意外と知らない映画予告編で使用されている音楽のカラクリ

■「映画音楽の世界」

みなさんは映画をご覧になったとき、映画のどの部分に注目されますか。

監督の演出が良かった。脚本が良かった。俳優の演技が良かった。迫力ある映像が凄かった。

一本の作品を観終えたときに、様々な視点からその映画を振り返ると思いますが、今回の連載記事では映画を構成する様々な要素の中から、表面上に出ていながらなかなか注目されることの少ない「映画音楽」にスポットを当てて行きたいと思います。

一口に映画音楽と言っても、そこには色々な音楽のカタチがあることをご存知でしょうか。

予告編音楽のわくわく感と本編鑑賞時の落胆

第一回目の今回はまずは映画の入り口にあたる、映画好きであればチェックすることが多くまたそうでない方も目にする機会のある「予告編」で使用される音楽についてご紹介しましょう。

映画の予告編は短い尺の中で物語の魅力を可能な限り詰め込まなければならず、印象的なカットや見せ場となる映像を細かく繋ぎ合わせるため、極端に長い説明的な台詞はなかなか使うことが出来ません。

しかしそれでも予告編に一つの物語として統一感が出ているのは、編集の巧みさに加え、予告編に付けられた音楽自体による効果が大きいと思います。

時に壮大に。時に物悲しく。予告編で流れる音楽がその映画の雰囲気、イメージを私たちに植え付けすらもします。

──ところが。

「予告編を観たときに気になった音楽が映画本編で全く使われていなかった」、といった経験をされた方も多いのではないでしょうか。

実際、予告編においてまるで主題歌のように流れていたボーカル曲が本編で全く使用されていなかったり、例えばカットカットに見事に合致したかのようなオーケストラ曲が同じく本編に一切使われておらずサウンドトラック盤を購入しても収録されていなかった、ということはよくあることなのです。

実は予告編用の音楽は、映画本編とは全く関係のないところで制作されたり、あるいは既存曲が使用されることが多く(中には過去のほかの映画の音楽を拝借したり、というパターンも)、そのためにサウンドトラック盤に収録されることはおろか本編で使われていないのであればエンドロールにクレジットされることすら有りません。

『ブラック・スキャンダル』と『レヴェナント 蘇りし者』の例

最近の映画を例に挙げると、現在公開中の『ブラック・スキャンダル』があります。

この予告編ではYELAWOLFの[Till It’s Gone]が使用され予告編の雰囲気をコントロールしているようにも思えましたが、いざ公開が始まってみると本編のどこにも楽曲は使われておらず、当然サウンドトラック盤にも収録されていませんでした。
──ボーカル曲に限らず、劇伴、いわゆるスコア曲でも同じことが言えます。

こちらも例を挙げてみますと4月22日から公開が始まる『レヴェナント 蘇りし者』。

こちらは音楽担当に坂本龍一氏が決定し話題となりましたが、予告編で流れた緊張感溢れる音楽はつい先日発売となったサウンドトラック盤には収録されておらず、調べてみると全く別の作曲家による予告編用の音楽だということが解りました。

このように本編では使われることのない予告編用の音楽は意外なほど多く、予告編音楽を専門に作曲するプロダクションや作曲家が存在するくらいなのです。

なぜこんなことに?

ではなぜそういったことが起きるのかと言えば、答えの一つに予告編制作時に本編音楽自体が完成していなかったり、主題歌や挿入歌アーティストを公開直前まで伏せていることが多い、ということがあります。

予告編は観客に一刻も早く関心を持ってもらうために既に撮影されたカットや、視覚効果などが未完成の状態の映像を繋ぎ合せて制作されます。本編撮影中の段階で予告編は制作出来ても、音楽がレコーディングセッションを終えて完成するのは映画製作の佳境、ポストプロダクションと呼ばれる段階になることがほとんどになります。

まれに撮影が始まる前から楽曲制作を開始し予告編で使用される場合もありますが(最近の作品だとクリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』がありました)、まずは予告編で流れる音楽が本編で使用されていることは限りなく少ない、と判断していただいた方が良いと思います。

さて、連載第一回目の今回。まずは予告編音楽からアプローチしてみましたが、いかがでしたでしょうか。

次回からは映画本編の音楽について踏み込みたいと思います。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

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(文:葦見川和哉)

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