5月はトトロを探しに“さんぽ”しよう。『となりのトトロ』で描かれる魅力的な日本

■「映画音楽の世界」

みなさん、こんにちは。

いきなりですが、『となりのトトロ』の季節になりましたね。

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「え? トトロって夏の映画じゃないの?」とツッコミを受けそうですが、確かにテレビでは毎年、夏休み恒例企画としてジブリ作品が放映されるので、そうイメージしてしまうかもしれません。

実は、と書くほどのことでもないのですが、『となりのトトロ』は春から夏にかけての物語です。主人公である草壁一家が映画の舞台である塚森に引っ越し、草壁姉妹の妹、メイが森の中でトトロと初めて出会うのが春。姉のサツキが稲荷山バス停でトトロ、ねこバスと初めて遭遇したのが梅雨の日。サツキとメイが大ゲンカしてメイが迷子になってしまうのが梅雨の開けた夏の日。

このように、映画は物語の展開を通して日本の移ろいゆく季節も描いているのです(秋から冬にかけてはエンディングで描かれていましたね)。

そこで。サツキ(皐月)、メイ(May)=五月、ということで、今回の「映画音楽の世界」では『となりのトトロ』をご紹介したいと思います。

久石譲が「へんな生きもの」たちに捧げた音楽

ご存じ、スタジオジブリの看板キャラクターでもあるトトロが登場する『となりのトトロ』は、ジブリ作品としては『天空の城ラピュタ』に続いて、宮崎駿さんが監督した二本目の作品。そして、ラピュタから引き続き音楽を担当し宮崎駿監督と再タッグを組んだのが日本を代表する作曲家、久石譲さんです。
ひょっとしたら、映画音楽に詳しくなくても『となりのトトロ』の音楽は説明不要かもしれないですね。それくらいトトロの世界観を表現した音楽はキャッチーで、まるで「むかしからそこにあるように」耳になじむメロディーになっています。

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サツキとメイが引っ越しした「おばけやしき」で二人が冒険を繰り広げる場面では、はしゃぐ姉妹の足音をそのまま音楽にしたようなテンポで軽快に描き、まるで私たちも草壁家の新居におじゃまして、一緒に走りまわりたくなるような感覚になります(子供の頃、友達の家ってやたらワクワクしましたよね)。

サツキとメイが初めてまっくろくろすけと出会ったのち、まっくろくろすけたちが一斉にクスノキに移動をする際の音楽は、月夜の晩、幻想的であり、どこか神聖感もあるようなメロディーが電子楽器で丁寧につむがれています。これは塚森の神木でもあるクスノキを背景に、そこに主として暮らすトトロたちの存在を暗示していて、いっそう私たちの関心をトトロという「なぞのいきもの」に向けさせてくれます。

そして登場するのが、神獣とはほど遠いようなスタイルのトトロになるわけです。メイが初めて出会った際の大トトロの、なんとも愛くるしい寝顔。メイに鼻を触られてくしゃみをする動物っぽさ。そしてふよんふよんの大きな体。メイでなくてもあのお腹の上なら、気持ちよく寝入ってしまいそうです。

走るイケニャン! ねこバスのテーマ

『となりのトトロ』の音楽の中でも、すぐに頭にメロディーが浮かぶのがねこバスのテーマではないでしょうか。

ねこバスはトトロと同じく大人気のキャラクターで、映画の中の世界では、文字どおりトトロが利用するバスとして活躍しているようです。どうやら「稲荷山」バス停で待っているとやってくるようですが、その能力は多輪駆動で俊足、夜目、縦横無尽と、現代のバスもかなわないような高性能っぷり。

それだけでは飽き足らず、迷子のメイを探しに奔走し、さらにはサツキとメイに見せる優しさといい、イケメンならぬイケニャンとしての魅力(映画ではちゃんとオスとして描かれてます)を十分に披露してくれています。

そんなイケニャンのテーマ曲ですから、音楽も当然カッコイイ。深い木立が自らよけていく疾走感と、鉄塔だろうが電線だろうが難なく駆け抜ける軽妙感。まさにねこバスのキャラクターにピッタリのテーマ曲となっています。

まとめ

私自身いい歳の大人になって、もうトトロのような存在は見えなくなっているのかもしれません。でも、一陣の風が吹き抜けたとき、そこにはトトロの乗ったねこバスが駆け抜けて行ったのかな。そう思わせてくれるような童心をこの作品は与えてくれます。

月並みな表現になってしまいますが、『となりのトトロ』の魅力はトトロという存在とともに、「失われつつある日本の原風景」が描かれている部分も大きいと思います。昭和30年代を舞台に、緑豊かな景色にノスタルジーな設定の数々。それに優しく寄りそう音楽。どこを切り取っても素晴らしい映画だと思います。

歩こう。歩こう。私は元気。

メイがトトロたちと初めて出会ったのもちょうど今くらいの季節。

探検しよう。林の奥まで。

ここまで読んでいただき、ありがとう ございました。

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(文:葦見川和哉)

 

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