いまドニー・イェンが熱い! 香港アクションスターの映画で燃えろ!

■「映画音楽の世界」

みなさん、こんにちは。『ローグ・ワン スターウォーズ・ストーリー』が公開され、その中に登場したあるキャラクターに多くの注目が集まっています。そのキャラクターの名はチアルート・イムウェ。演じるのは「宇宙最強の男」こと、ドニー・イェン!

ローグ・ワン本編では、イェンは盲目の僧侶でありながら華麗すぎる棒術を披露。杖一本だけでストームトルーパーを次々と薙ぎ払いブラスターすら(盲目なのに)避けたのは、おそらくフォースを使えない人類としては、初のはず! 確かに宇宙最強だ!
そして、『ローグ・ワン スターウォーズ・ストーリー』でドニー・イェンのアクションを初めて見たという映画ファンも多い様子。

はっきり言いましょう。ローグ・ワンでのイェンは、スター・ウォーズの世界観を壊さないようアクションを(あれでも)かなりセーブしていた、と!

そんな訳で。今回の「映画音楽の世界」では、宇宙最強の男ドニー・イェンの「燃える映画」を過去作品からピックアップ。「イップ・マン」シリーズと『かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート』、『セブンソード』をご紹介しましょう。

実は今回選んだ作品の音楽を担当しているのは、『攻殻機動隊』や『機動警察パトレイバー』など、日本を代表する作曲家、川井憲次。海を渡りドニーアクションと融合した音楽も、凄まじく熱い!

「イップ・マン」シリーズ

イップ・マン 序章 [DVD]

ドニー・イェンの代表作ともいえるのが、「イップ・マン」シリーズ。イップ・マンとは詠春拳の使い手である実在の人物、葉問のことで、ブルース・リーの師匠としても有名です。その葉問を演じたのがドニー・イェンになります。

現在シリーズは『イップ・マン 序章』、『イップ・マン 葉問』、『イップ・マン 継承』の三本が製作されています(ちなみに、『イップ・マン 誕生』『イップ・マン 最終章』という作品もありますがこれらはイェンのシリーズとは関連がないのでご注意を)。

『イップ・マン 序章』では日本軍を相手にドニー・イェンが大立ち回りを展開。生まれ故郷である佛山(フッサン)で武術館を開いた葉問にまずは他道場の師範が挑む序盤からイェンの美麗なカンフーが炸裂。息も乱さず返り討ちにする様に、いきなり魅了されます。しかし、佛山が日本軍に占領され、その卑劣な行為に怒りを露わにした葉問はまずは訓練のための手合わせで日本兵10人を同時に相手にし組み伏せ、ラストでは池内博之演じる空手の使い手、三浦将軍との試合に挑みます。

『イップ・マン 葉問』では、葉問一家が香港に移住。ここで武術館を開くもサモ・ハン演じる洪拳の師範であるハンらと対立。そして円卓という限られたスペースでの葉問対ハンの手合わせは、まさに新旧カンフースターのぶつかり合いが濃縮された極上のバトル。攻守を同時に繰り出す詠春拳と洪拳の高速打ち合いを捉えるカメラワークも見事で圧巻のシーンになっています。以降、互いを武術家として認め合いながらも英国人ボクサー、ツイスターを招いての興行試合のさなかに悲劇が起き、なおも中国武術を愚弄するツイスターに怒りを爆発させた葉問がいよいよリングに立ちます。

前作以上に圧倒的なカンフーファイトが見所の本作。葉問対ハン、ハン対ツイスター、葉問対ツイスターはもはや感動すら覚える領域で、カンフー映画を愛してきたファンに対する熱いご褒美、そしてこれがカンフーの誇りだ、とも言える作品に仕上がっています。

そしていよいよ2017年4月22日からの全国順次ロードショーが決まったのが『イップ・マン 継承』。過去二作では葉問の原動力に「日本軍に対する怒り」「中国武術を愚弄された怒り」と、怒りの感情が軸だったのに対し、本作では「家族を守る」という感情面が加わります。敵役の一人には、葉問の息子が通う小学校の土地を狙う悪徳地上げ屋として、あのマイク・タイソンが参戦。全盛期時代と何ら変わらない動きと拳で葉問を追い詰めます。

制作陣、これはさすがに、本気を出しすぎではないでしょうか。いきなり胸熱の展開です。しかも本作ではもう一人の敵がマックス・チャン演じる、葉問と同じく詠春拳の使い手ときたのだから生半可なカンフー対決を見せる筈がない。
妻を護りながら戦う葉問。群衆を相手に戦う葉問。最強の敵二人と合いまみえる葉問。そんな盛りだくさんのバトルを繰り広げる葉問を一人で演じ切るドニー・イェンのタフネスぶりに酔いしれましょう。

「イップ・マン」シリーズの音楽は、中国の伝統武術がテーマだけあって二胡や太鼓をふんだんに取り入れた、様式美が聴き応えのあるサウンドに仕上がっています。ドニー演じる葉問の人間的な美しさを謳い上げる二胡の旋律。葉問の華麗なる格闘術に酔いしれる、ボルテージを刻み上げる太鼓の連打。音に厚みを持たせるだけでなく、心象的な場面での川井憲次のサウンドコントロールは流石の一言。

『かちこみ! タイガー・ドラゴン・ゲート』

かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート (字幕版)

バトル漫画が原作とあって、破天荒とも思える漫画のような演出が随所に見られる本作。出演当時40代前半だったドニー・イェンが、原作通りであれば顔が半分隠れるほどに前髪を伸ばした(それが風に揺れる)二十歳の役を演じているだけでも熱いじゃないですか! 「さすがに無理がないか?」という指摘も跳ね除けるほどに画面に映えるドニー・イェンの肉体美、繰り出すアクションのスピーディーにして華麗な動き、イェンだからこそ有り得てしまいそうなハタチのファイターだ!

ワイヤー・アクションも取り入れた本作の肉弾戦はもちろん本物ですが、それに瓦礫や破片など激しく砕かれる背景がCG合成で付け足されているので(それこそ『ドラゴン・ボール』のような)、エネルギッシュなバトルシーンが幾度となく楽しめます。

本作の音楽では、「イップ・マン」シリーズの様式美とは対称的に、電子サウンドも取り入れた現代的なアクションスタイルミュージックになっています。それでも聴いていれば随所に「川井憲次だ」と解るフレーズや音色が盛り込まれているので、音楽にも注目してほしいところ。残念ながらサウンドトラック盤の発売はありませんでしたが、川井憲次のベスト盤『K-PLEASURES』に本作で使用された楽曲の一部が収録されています。

『セブン・ソード』

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“香港のスピルバーグ”の異名を持つツイ・ハークが監督したワーナーブラザーズ配給の映画。こちらは小説『七剣下天山』を基に独自の解釈で映画化したもので、武術者を皆殺しにしようとする悪政に七人の剣士が立ち上がるというもの(どこかで聞いたことのあるような設定ですが)。レオン・ライが主人公ではありますが、大半の美味しいシーンはドニー・イェンが活躍するような展開に。

そもそも、香港映画ファンならば「ツイ・ハークが監督」というフレーズだけでも燃え上ってしまいそうな中毒性が、ツイ・ハークが描くアクションにはあります。既にツイ・ハークとドニー・イェンは1992年の香港映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱』でもタッグを組んでいます。しかしこの時はあくまでリー・リンチェイ(ジェット・リー)が主演であり、ドニーは敵役。それでもリーとの最高のカンフーバトルを見せてくれてはいますが、ようやくドニーを主演に迎えて演出したのが本作になります。

さすがツイ・ハーク監督。ファンタジー要素のない戦国史の映画でありながら重力を無視するようなアクションの連続。これを生半可な俳優にさせてはいろんな意味で浮いてしまいそうなところを、どんな役にも全力でぶつかり惜しげなくアクションを披露するイェンが演じることで、「全然有りだ!」と興奮を覚えてしまうから不思議なものです。

本作の音楽は、「イップ・マン」をさらに超える音の厚みと燃えるテーマが聴きどころ。様式美よりも、ヒロイックなメロディを重視。七剣をヒーロー集団と捉えて、よりエポックな主題を用意しています。冒険感、激しい戦闘、そして勝利への賛歌を見事にミックスした[Seven Swords Victory]は川井憲次作品の中でも群を抜いて熱い一曲になっているのではないでしょうか。

まとめ

目下のところ、ドニー・イェンの熱いアクションと川井憲次の熱い音楽を同時に楽しめる2017年最初の作品は『イップ・マン 継承』。今後、二人が名を連ねる作品に巡り会えるかは未知数ですが(イップ・マン第四弾の製作が決まったというニュースも流れているので、果たして実現するかどうか)、まずは過去作を観&聴き比べてみるのも良いかもしれません。ちなみに。ドニー・イェンの新作自体は2月公開予定の『トリプルX 再起動』が控えていますので、そちらもお楽しみに。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。本年も「映画音楽の世界」を宜しくお願いします。

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(文:葦見川和哉)

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