「俳優・塚本晋也は、 監督から見て実に良い俳優!」、『野火』Blu-ray&DVD発売記念、塚本晋也監督インタビュー

俳優・塚本晋也は、
監督から見て実に良い俳優!

今回、この作品に取り組んだことによって、自身のテーマ性もさらに広がっていったようです。

「これまでの僕の映画は、どちらかというと都市のヴァーチャル的テクノロジーの中に埋没し、あがいていく人々が暴力的な表現で覚醒していく様子を描いていたように思うのですが、そこでの暴力は目の前にあるリアルなものではなく、むしろ無菌室みたいな状態のファンタジーとして捉えていました。でも『野火』は入り口からしてまったく違うというか、いかにも見ていて嫌だという、娯楽的ではない生々しい暴力を描かなくては駄目だと。ただ、そうすると都市=全世界の外側にある現実みたいなものに行き着き、そこからまた新たな現実を見始めていくという点で新たな一歩を踏み出せたような気もしています」

ちなみに『野火』は毎日映画コンクールで監督賞と男優主演賞も受賞されていますが、俳優・塚本晋也は塚本監督から見て、いかがなものでしょうか?

「本当に良い俳優ですよ(笑)。聞きわけがいいし、自分が監督としてこういう俳優さんがいいなという、そんな存在になって、よその現場にも行きます(笑)。絶対に監督の目線でモノなんか言いませんし、雑談もしないし、調子よくへらへらと無理にその場を和まそうともしない。ただ静かにそこにいて、やることをやって、気持ちよく帰る(笑)」

一時はアニメーション映画として製作しようと考えていたとも。

「かなり長いこと、計画も立てていました。要は自分が出演するというのが実写として現実的にできる道ではありましたが、あまりにもそれはやらないほうがいいのではないかと。それよりもアニメなら縦横無尽に表現できるし、主役の有名無名も関係ないし、声優さんだけ著名な人に数日お願いすればいいという、そんなリアルなことを半年くらい考えていました。まあ、最終的には実写の道を選択したわけですが、実は中学時代に映画を作りたいというのと同じくらいのモチベーションでアニメを作りたいという欲求がずっとありまして、でも人生の中でいまだに達成できてない4つの中のひとつなんですね。30秒くらいのB鉛筆で描いた短編『ベネチア大学の映画先付』(11)を試しで作ったことはありますが(塚本監督の公式ホームページの中で見られます)、いつかはきちんとした形で挑戦してみたいです」

『野火』が上映されている劇場へ行きますと、老若男女を問わず幅広い層に支持されていることがわかります。

「これまでの僕の作品の客層は、若い方が圧倒的に多かったのですが、今回は年齢の幅があって本当の嬉しいです。公開直後は『野火』という原作の知名度もあって年配の男性の方が多かったのですが、だんだん層が広がっていき、それこそ子どもを持つお母さんとか、また子供がお母さんを連れてこられたり、そうしていくうちに若い人がどんどん見に来てくれるようになりました。今は中高生にもっと見ていただけたらと思っています。先日も上映の際、お父さんが高校生の息子さんを連れて見に来られていて、ありがたかったですね」

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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