スマホの危なさを痛烈に描く『おとなの事情』、共感性羞恥の人は観ていられない

©Medusa Film 2015

3月18日から日本全国の映画館では新たなイタリアンコメディーが観賞できます。それはパオロ・ジェノヴェーゼ監督の『おとなの事情』です。

ある月食の夜に7人の友達が食卓を囲って集まった物語を描く『おとなの事情』は、イタリアのアカデミー賞と呼ばれるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で脚本賞と作品賞を受賞したほか、毎年ニューヨークで開催されるトライベッカ映画祭でも脚本賞を受賞し世界中で注目を浴びた傑作作品です。

しかし、コメディとはいえ、暗い部分も大きい上に、人物たちが次々に恥をかくなかで物語が進行します。そのように考えると、自分が失敗したかのような恥ずかしさを覚えるほど他人の失敗に共感してしまう共感性羞恥の人は、『おとなの事情』を最後まで観られないかもしれません。

一体7人の人物のあいだに何が起こるのでしょうか?

親友が赤の他人となってしまうとき

ある夜、幼なじみたちが月食を眺めるために食事会に集まります。新婚カップルのコジモとビアンカ、倦怠期を迎える夫婦レレとカルロッタ、そして新しい彼女を連れていくと約束したのにひとりで現れるバツイチのペッペが、危機中のエヴァとロッコの家にやってきます。

7人の友達が楽しく食べながらちょっと危険なゲームを始め、食事のあいだにそれぞれのスマートフォンをテーブルの上に置き、届いたメールをみんなの前で開いて読み上げ、電話が鳴ったらスピーカーフォンに切り替えて、みんなの前で話さないといけないのです。

携帯が次々に鳴り続けるにつれて、秘密なんてないと思っていた7人は、それぞれの秘密が暴露されていきます。不倫している人、義理の母を老人ホームに入れたい人、豊胸手術を受けたい人、心理カウンセリングを受けている人、人物の誰もが秘密を持っていたのです。

何から何まで知っていると思っていた人が赤の他人(原題「Perfetti sconosciuti」はまさにその意味です)のような存在になってしまう。7人の登場人物たちがその新たな真実はどこまで受け入れることができるのでしょうか?

©Medusa Film 2015

演劇のような世界に観客も飲み込まれる

映画の最初と最後以外、全てのシーンはエヴァとロッコの家が舞台となっています。このような設定のおかげで映画を観賞しているよりも演劇を観ているような感覚を味わえることができます。しかも、ペッペが一人でやってきたゆえに8人員が囲うはずだったテーブルには7人だけが座り、空いている席がまさに観客の席になるのです。実際多くのシーンがその席から撮影されたそうです。
このように観客が外から映画を観ているのではなく、テーブルに座っているかのように映画の中に入り、食事会に参加することになるのです。

©Medusa Film 2015

人ごとではないストリー

多かれ少なかれ誰もが秘密を持っているでしょう。原作のサブタイトルで使われているガブリエル・ガルシア・マルケスの言葉「人には3つの人生がある。公的な人生、私的な人生、そして秘密の人生」が、それを如実に語っています。

映画を観終わって家に帰ったら自分のスマホに潜んでいる真実、またパートナーのスマホに潜んでいる秘密を気になって仕方ない。そして、ついに考えてしまう。今まで大事にしてきた関係を守るために真実を知らないほういいのでしょうか、と。

(文:グアリーニ・ レティツィア)

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    ライタープロフィール

    グアリーニ・ レティツィア

    グアリーニ・ レティツィア

    南イタリアのバジリカータ州出身。大学院で日本現代文学を研究しながらライターとして活躍しています。中学生の時から小説を読むことと映画(特にインディーズ・ムービー)を見ることが好きで、誰もがそうではないことを知った時のショックは一生忘れません。最近ドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』や『ダウントン・アビー』にはまっています。

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